2013年

12月

03日

ワシントンDC 2013年12月3日号

 ◇次期大統領の呼び声高いが、好感度急落のヒラリー氏

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 米国のニュースサイクルはほんとうに早い。「財政の崖」に始まった今年だが、夏以降に起きたオバマ政権のシリア攻撃決断や米政府機関の一部閉鎖も、次々と起きるニュースの荒波の中で、遠い昔のことのようだ。

 4年に1度の祭典・大統領選も同じ。昨年終わったばかりなのに、支持率低迷でオバマ政権の「レームダック(死に体)化」が早くもささやかれ、世の中の関心は2016年へとすでに動き始めた。注目は、なんといっても女性初の大統領の呼び声が高いヒラリー・クリントン前国務長官(66)だ。

「ヒラリーにぜひ大統領選に出てほしいと思っている。出馬すれば圧勝するだろう」。クリントン氏と親交が深いチャック・シューマー上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は11月2日、大統領選で最初の党員集会が開かれる中西部アイオワ州デモインでの民主党資金集めパーティーでこう演説し、出馬を促した。

「ヒラリー支持」を打ち出したのは、シューマー議員だけではない。世界的投資家のジョージ・ソロス氏(83)は10月下旬、クリントン氏の資金集めに協力する意向を表明。同じく10月末には、上院民主党会派の女性議員16人全員が連名でクリントン氏に出馬を促す「シークレット・レター」を今年初めに出していたことが発覚し、人気ぶりを裏付けた。

 上院議員同士で民主党大統領候補の座をオバマ現大統領と争った08年当時は、女性層の支持すらオバマ氏に拮抗(きっこう)を許した。彼女の「復活」の背景には、選挙での恩讐(おんしゅう)を乗り越え、オバマ政権の中で安定した仕事ぶりを発揮し、過去4年間に国務長官として獲得した国際的な知名度が信頼感へとつながっていることが大きい。

 オバマ大統領を支えた功績から、「オバマ政権高官らが12年大統領選では副大統領候補を現職のバイデン氏からクリントン氏に代える案を一時検討した」とも伝えられたほどだ。

 

 ◇「過去の人」との声も

 

「一つのアメリカ」を標榜したオバマ氏は「超党派」をキーワードに大統領に就任したが、野党・共和党相手に効果的な議会対策を打ち出せず、2期目に入ってからはむしろ「対決路線」に突き進んでいる。「オバマならできる」と国民が期待した融和路線も「結局だめか」と失望に変わった。「女性初の大統領」というアピールは閉塞感が募る米政治にもう一度新風を吹き込み、今度こそ大きな変革につなげてほしい、という期待も当然ながら込められている。

 だが、不思議なことに、「いよいよヒラリーか」というムードが高まるにつれ、今度は反発も広がり始めた。民主党候補にクリントン氏を推す声は依然高いものの、10月下旬のNBCテレビと『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の調査では、好感度が半年前の56%から46%に急落するという結果が出た。

 リベラル紙の『ニューヨーク・タイムズ』もコラムで「(大統領候補であらねばならないという)彼女の必然が終わろうとしている」と指摘。米政府機関閉鎖という異常事態を踏まえ、有権者が求めているのは米政界の総入れ替えで、「ワシントンに染まった政治家に幻滅している」と、人気急落の原因を分析している。

 強力な対抗馬が見当たらない中、クリントン氏は出馬について「急がずじっくり検討する」と米メディアに話し、本心を明かさない。仮に出馬して当選すれば、共和党で2期務めたレーガン大統領と同じ69歳での就任となる。すでに役割を終えた過去の人か、米政治の変革を託す未来の政治家か──。品定めにはなお1年余ある。