2013年

12月

03日

経営者:編集長インタビュー 熊切直美 大東建託社長 2013年12月3日号

 ◇相続税対策で賃貸住宅経営に高いニーズ

 

── 2013年3月期まで5期連続の増収増益が続いています。

熊切 今期(14年3月期)も好調で、6期連続となりそうです。ただ、リーマン・ショック(08年)の翌年度は新規受注が大きく落ち込みました。金融危機の影響で、顧客の不動産オーナーさんが賃貸マンションやアパートの建設資金を借りられず、受注のキャンセルが大量に発生しました。苦しみながらコストダウンをして、何とか利益を捻出しました。

 ただ、相続税対策としての土地活用ニーズは非常に強く、15年1月からは相続増税も控えます。また、来年4月の消費増税を前に駆け込み需要も発生し、今年9月の受注高は約940億円と、月次では過去最高となりました。今後も当面、相続税対策として賃貸住宅経営の需要は底堅さが継続するだろうと見ています。

 1974年創業と、間もなく40周年を迎える大東建託。不動産オーナーから請け負う賃貸住宅の建設事業と、その賃貸住宅を30年間一括で借り上げて管理する不動産事業が2本柱だ。土地活用を手がける企業としては後発だが、アパートやマンションの管理戸数は78万戸と日本一の規模へ成長した。

── 他社と比べての強みは。

熊切 他の大手は、ネットワークを築いた金融機関からの紹介や、住宅展示場の来場者から受注を獲得していますが、後発の我々はより潜在的な顧客を開拓する必要がありました。そのため、いまだに我々の顧客開拓方法は飛び込み営業です。しかし、現在の受注のうち約半分は、過去に取引のあったリピート顧客です。2代、3代にわたって取引を続けていただくケースもあります。単に賃貸住宅を建てるのではなく、高い入居率の維持といった管理を含め、我々の仕事が全体で評価された結果だと思っています。

── どうやって入居率を高めているのですか。

熊切 毎年約24%の物件で退去が発生しますが、我々は管理の部門だけでなく入居者を斡旋(あっせん)する部門も持っています。管理部門に退去の通告があればすぐに入居者斡旋の活動を始められるため、空室の日数を短くすることが可能です。地域の不動産業者に協力もいただき、ここ数年の入居率は96%をキープしています。

 

 ◇世帯数は今後も増加

 

── 人口減少が進んでいるので、特に地方では賃貸住宅経営は厳しくなっていませんか。

熊切 多くの人が地方は空室率が高くて大都市圏は大丈夫だと思っていますが、実は逆なんです。大都市圏ではREIT(不動産投資信託)が投資用のワンルームマンションを大量に供給しているので、入居率は決して高いわけではないのです。

 むしろ、日本の人口は減っても、賃貸住宅の借り手は今後も増えていくでしょう。少子高齢化、晩婚化の影響で、一人暮らし世帯が増加しているからです。国立社会保障・人口問題研究所が今年1月に発表した日本の将来の世帯数予測でも、5年前の予測よりもさらに世帯数は増えていく見込みとなっていました。そうした需要をしっかりと取り込んでいければ、高い入居率をキープすることは十分に可能だと考えています。

── オーナーが持つ土地は、立地条件がいいとは限りません。

熊切 立地条件が悪ければ、30年間の一括借り上げも保証できないので、お断りします。土地を10カ所持っていても、すべて賃貸住宅を建てればいいという話ではなく、オーナーの家族構成や資産を見て、①そのまま残す土地、②賃貸物件に向く土地、③相続発生時に納税用に売却する土地──の三つに整理して活用を提案するのが基本スタンスです。

── 今年7月から、一部を間貸しも可能な分譲マンション事業を始めました。

熊切 普通の分譲マンションでは、我々の特徴を出せません。そこで、ライフサイクルに応じて使用する部屋の広さを変え、使わない部屋を賃貸に出すことができる分譲マンションを試験的に始めました。賃貸の場合は当社グループで部屋を借り上げ、賃料をオーナーに支払うことで、ローン返済の軽減にも活用していただけます。東京、神奈川、千葉で計82戸の供給を予定しています。

── 介護事業の子会社「ケアパートナー」は、今年4月、保育園にも参入しました。

熊切 デイサービスセンターは現在60カ所以上ありますが、賃貸マンションの建設の際にオーナーに協力をいただき、1階部分にテナントとして入居しています。子育てをしながら働く女性も増えているので、同じ発想で横浜市に第1号の保育園をオープンしました。ケアパートナーの利益率は高くはありませんが、社会貢献の意義が大きいうえに、賃貸住宅との相乗効果が非常にあります。

── 中期経営計画では、18年3月期に売上高1兆6460億円と、13年3月期比で42・8%増の高い目標を掲げています。

熊切 M&A(企業の合併・買収)は考えていません。現在の事業を人員を増強しながら、着実に拡大していこうと考えています。現在の売り上げ構成のうち3大都市圏が約4割、それ以外の地方が約6割ですが、3大都市圏の営業に力を入れ、18年3月期にはそれぞれ5割を目指しています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 東京証券取引所への新規上場を手がけたほか、経営企画室の室長を務めたり、中国・上海で駐在員向けの賃貸住宅開発を手探りでやっていました。

Q 最近買ったもの

A 自宅の駐車場を改修し、車を2台止められるようにしました。

Q 休日の過ごし方

A 無趣味で家にいることも多いですが、近所の公園をよく散歩します。ゴルフはなぜか性に合わず、接待などのゴルフは他の役員に任せています。

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 ■人物略歴

 ◇くまきり・なおみ

 岐阜県出身。1981年岐阜大学農学部卒業、84年大東興産(現・大東建託)入社。2001年執行役員、04年取締役、06年常務、11年専務などを経て、13年4月に社長就任。55歳。