2013年

12月

10日

ワシントンDC 2013年12月10日号

 ◇州知事選で茶会派敗北 共和穏健派に復権の兆し

 

堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 

 米国では来年秋の中間選挙の前哨戦となるニュージャージー、バージニア両州の知事選挙が11月5日に行われた。その結果は茶会派(ティーパーティー)に代表される共和党内の保守強硬路線に対する世論の反発が想像以上に厳しいことを物語っている。

 ニュージャージー州は伝統的に民主党が優勢だが、共和党穏健派の現職クリス・クリスティー氏が大差で勝利した。一方、バージニア州では共和党保守派で茶会派の支持を受けたケン・クチネリ州司法長官が、僅差とはいえ民主党候補のテリー・マコーリフ氏に敗れる結果となった。

 注目すべきはクリスティー氏の圧勝ぶりだ。同氏は共和党の中でも茶会派が支持する保守強硬路線とは一線を画した中道的な政策路線を推進しており、2016年の次期大統領選挙における有力候補の一人と目されている。それだけに、同氏の圧勝は、共和党内の穏健派が多少なりとも息を吹き返し主導権を取り戻すきっかけを与えたと評する向きもある。

 オバマ政権の打ち出す富裕層への増税や社会保障の充実といったリベラル色の強い政策は、国民生活や経済活動における政府の過大な介入を排して、「小さな政府」のもとで減税と歳出削減を図り財政規律を取り戻すべきとする共和党にとっては、非難の対象となる。

 しかし、茶会派の唱える政策は、連邦準備銀行の廃止や不法移民の無条件国外退去といった過分に急進的なものが多い。そのため、純粋かつ、やみくもに「保守の哲学・理想」を追求するあまり「現実的な統治・政策」とかけ離れてしまっているとの意見も聞かれる。

 加えて先の財政協議を巡る対応で、自らの主張を通すために政府機関の一部閉鎖や米国経済を危機にまで持ち込んだ彼らの姿勢に対しては、将来実際に政権を担おうという意思がみてとれないとする批判の声が、党内穏健派からも出始めていたところだ。

 

 ◇現実重視のクリスティー氏

 

 クリスティー氏は共和党員ながら政治イデオロギーに過度にとらわれず、現実的に問題を解決する能力を有する指導者と言われる。

 実際に彼は妊娠中絶に反対し福祉政策を巡って公務員組合と対立するといった保守的な立場をとりつつも、一方では同性愛者の婚姻を禁じる法案に反対の立場をとり、オバマ政権による医療保険制度改革に基づくメディケイド(低所得層向け医療扶助)拡大を受け入れる姿勢をみせた。是々非々で民主党の政策とも折り合いを付ける度量がある。

 このような姿勢がピュアな理想主義を掲げる茶会派から反目されるゆえんだが、本人は意に介さず、現実的な統治・政策を重視する姿勢を鮮明にしている。昨年の大統領選挙の終盤戦では、ハリケーン「サンディ」の被害を被ったニュージャージー州に対しオバマ政権がとった被害対策を称賛し、共和党の大統領候補であったミット・ロムニー氏の最後の追い上げ運動に水を差して党内保守派からの非難を受けたほどだ。

 しかし、実際に彼は今回の選挙で共和党候補として60%以上の得票率を得て圧勝という結果を呼び込んでいる。これが意味するところを、共和党指導部や党内保守派はどのように受け止め、今後の政策運営や選挙活動に反映させていくのか。バージニア州で僅差とはいえ茶会派の推す候補が負けただけに、党内穏健派が主導権を取り戻す機会が到来しつつあると期待する向きは多い。今後の同党の行方が注目されるきっかけとなる選挙結果だったことは間違いないようだ。