2013年

12月

17日

ワシントンDC 2013年12月17日特大号

 ◇保険サイト接続障害修正も公約達成宣言に残る違和感

今村卓
(丸紅米国会社ワシントン事務所長)

 オバマ大統領にとって就任以来の最大の危機となった医療保険制度改革(オバマケア)を巡る混乱は、状況が少し改善したようだ。その先に改革の成功と政権の支持率回復はあるのだろうか。

 国民に民間医療保険加入を原則的に義務付ける同改革は、その主要施策である保険市場の運営が10月1日に始まった途端、二つの深刻な問題が発生した。一つは保険市場の登録サイトでの接続障害の多発である。もう一つはオバマ大統領が「加入済みの保険契約は継続できる」と説明してきたのに、医療保険改革法の基準を満たさない既存契約について、保険会社が契約者へ解約を通知する事例が続出したことだった。
 主要施策の導入でつまずき、公約違反との批判の声も上がったことで、最新のオバマ大統領の支持率は40%前後と就任以来最低に落ち込んだ。しかも不支持率が55%前後と過去最高に上昇。支持率が落ちても高水準を保ってきた有権者の大統領に対する信頼も最新調査では49%に落ちた。当初はこの問題を深刻に受け止めていなかったオバマ政権も危機感を抱き、11月末までに登録サイトを安定させる方針を打ち出した。
 そして12月1日、オバマ政権は改善が劇的に進み、利用者の大多数はスムーズに登録できるようになったとし、「公約達成」を宣言した。当局によれば、登録サイトは数百に及ぶソフトや設備の更新がなされ、1日80万人の利用に対応可能となり、サイトの読み込み速度も従来の1ページ当たり平均8秒から1秒未満へ、情報処理の失敗確率は従来の6%から1%未満に低下したという。

 ◇身内重視を修正できるか

 この1カ月半の修正作業は綱渡りの連続だったようだ。政権からサイト修正を託された専門家チーム内では、一時、サイトの一からの作り直しが必要との意見も出たが、綿密な検討の末に修正可能と判断。かろうじて期限内の復旧に漕ぎ着けた。
 ただ、この「公約達成」は医療保険制度改革が抱える問題の一部が解決されたという意味でしかない。オバマ政権が最近、小規模事業者向けのネット上での医療保険登録開始時期を今年11月から1年延期すると発表したことをみても、登録サイトの運営にはまだ不安が残ると推測できる。
 しかも既存契約の解約問題については、根本的な解決にほど遠い状態で放置されている。同契約について、保険会社に1年の延期を認める措置を発表しただけだ。
 むしろ、本質的な問題としては、原因究明の過程で指摘された現在のホワイトハウスの「習性」に注目すべきかもしれない。それは、信頼できる身内で側近を固める傾向が強いあまりに視野が狭くなり、外部からの有能な人材の登用を敬遠してしまった可能性である。一因としてホワイトハウス、保健福祉省、請負業者間の連携の弱さも指摘されており、最初から外部の専門家の登用を検討すべきだったと言える。
 この心情が今回の「公約達成」で変わるのだろうか。事後となったが、思い切って外部の有能な人材を登用したことで難しかった公約を達成できたという経験から、ホワイトハウスの身内重視の見直しが始まるのか。あるいは、今回は例外的な窮余の措置であり、信頼する身内にこそ大事な問題を託そうというオバマ大統領の習性はそう簡単には変わらないのか。
 過度な身内重視の見直しに進めば、今後の医療保険制度改革はもちろん、沈んだ大統領の支持率が再浮上する可能性も出てくる転機になり得る。その意味では、オバマ大統領が問題解決に向けて次の一手をどう打つのか、要注目である。