2013年

12月

17日

経営者:編集長インタビュー 澁谷省吾 千代田化工建設社長 2013年12月17日特大号

 ◇海洋開発・上流開発事業を加速

 千代田化工建設は液化天然ガス(LNG)のプラント工事で世界シェア4割をキープするエンジニアリング会社。石油精製・石油化学プラントの建設などでも独自の技術で存在感を示してきた。

── シェールガス革命で北米ビジネスはどのように変わりましたか。
澁谷 もともと米国は、天然ガスのパイプラインや送電網などのインフラが充実していることもあり、北米のシェールガスは非常に価格競争力があります。シェール革命がLNG市場に与える影響は大きく、高値でガスを販売できるまで開発を控えていたロシア、豪州、アフリカなどの天然ガス田も開発が活発化すると思います。
 北米のLNG案件は、米エネルギー省から建設許可が出ているキャメロン(ルイジアナ州)、フリーポート(テキサス州)や、カナダのキティマット(ブリティッシュコロンビア州)の輸出基地プラントの受注を今期後半に目指します。事業は地元大手業者のシカゴ・ブリッジ・アイアンと提携して進める予定です。
 当社の関わるキティマット案件は、工事でかかった経費をベースに報酬が支払われる実費受注方式が採用されそうですが、当社は最初に一括して報酬が支払われ、その範囲内で工事を行う一括受注方式を得意としています。ですから、サイペム(伊)、ウォリーパーソンズ(豪)など実費受注方式が得意な3社と連携して受注を目指します。
── 海洋開発(海洋における石油ガス開発)や上流開発(石油ガス開発)への進出を加速させています。
澁谷 7月に海底資源探査の英エクソダス社に100億円出資し、資本提携を結びました。陸上での石油ガス開発は少なくなり、今後は海洋案件が増えてきます。
 今回の資本提携に当たっては20社程度の候補がありましたが、海洋関連の技術力ではエクソダスが際立っていました。これまで欧米勢の寡占状態であった海洋資源開発に日本勢として初めて参画したことになります。
 また、10月にはガボン共和国で海洋の油田権益を獲得しました。石油ガス開発事業に関与し、関連設備の設計やメンテナンスに関わることでお客様のニーズを直接確かめることができます。この油田は当社にとっては演習問題のような役割を果たしてくれるはずです。当社の強みであるプラントの設計・調達・建設(EPC)に加えて、海上開発・上流開発における基本設計から建設工事(EPCI)までを行う事業者になりたいと考えています。
 こうした技術を生かして、日本近海に眠る国産資源として注目を集めているメタンハイドレートの開発についても、貢献していきたいと考えています。
── 世界のビッグプロジェクトでは採算割れが増加しています。
澁谷 確かに豪州などでは人件費や資材の高騰するケースも珍しくありません。そこで当社は、LNGプラントの建設に当たって、フィリピンなど東南アジアである程度つくって現地で組み立てるモジュール化を進めてコストを抑えています。
 石油精製や石油化学プラントの汎用プロセスでは韓国など海外勢が採算度外視の受注合戦を繰り広げています。我々にも安値受注で結果業績が悪化した歴史があり、それを繰り返すことはありません。当社は得意としている重質油分解装置など、技術力と経験を生かせる案件を選別していくつもりです。

 ◇水素社会のキープレー

── 再生エネルギー分野や空港建設案件等にも力を入れています。
澁谷 社会インフラが今後大きな成長分野となることが予想されています。なかでもエネルギーインフラは当社の得意分野ですので、太陽熱、太陽光、水素エネルギーなどはマスタープランづくりから建設、メンテナンスまで手掛けていきます。
 メガソーラー建設では既に100メガワットの実績を積み上げてきました。太陽熱発電でも、アルキメデソーラーエナジー社(伊)に出資し、ローマ郊外でテストプラントを立ち上げており、その後サルジニア島で商業用プラント第1号を建設する計画です。
── 水素事業が二酸化炭素を出さないエネルギーとして有望視されています。
澁谷 当社は水素を有機溶剤のトルエンに溶かして常温の液体にし、再び取り出す唯一の技術を持っています。この技術によって貯蔵輸送が難しかった水素の低コストでの大量貯蔵が可能になりました。すでに神奈川県の守屋町で実証プラントを稼働させました。今後は、次世代自動車として本命視されている燃料電池車などへの水素供給事業者として、水素社会実現のキープレーヤーを目指します。
── どのような事業ポートフォリオを描いていますか。
澁谷 収益の基盤がLNG事業であり続けることは間違いありません。それに石油・石油化学コンビナートを含めて収益の半分を稼ぎ出し、新エネルギーやインフラ事業で残りの半分を稼ぐイメージです。現在は、LNG事業だけで完工工事高(売上高に相当)の4割を占めていて、まだまだLNGの割合が多いのが現状です。しかし、30年後にはLNGもどのような事業環境になっているかわかりません。そのときのためにも、社会インフラや水素事業などで事業領域を広げていかなければなりません。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)

 

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 国内では鹿島コンビナートや東京電力の火力発電所、国外ではイラク、インドなどで制御システムのエンジニアをやっていました。非常に好奇心旺盛でした。
Q 最近買ったもの
A 山歩きに使うゴアテックスの雨具を買いました。
Q 休日の過ごし方
A テニスや山歩きをして過ごします。あとは読書ですね。
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 ■人物略歴
 ◇しぶや・しょうご
 山口県出身。1976年大阪大学大学院修士課程修了後、千代田化工建設入社。2009年執行役員エンジニアリング本部長兼パワープラント室長。11年取締役常務執行役員技術部門長。13年4月から現職。62歳。