2013年

12月

24日

ワシントンDC 2013年12月24日特大号

 ◇言葉だけが先行気味 「アジア重視」の外交戦略

 

須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 オバマ政権は、外交政策においてアジア太平洋地域を重視し、軍事、外交、経済の重心をアジアに振り向ける「アジア・リバランス政策」を1期目より標榜している。11月20日には、外交・安全保障問題の司令塔の役割を担うスーザン・ライス大統領補佐官が、ジョージタウン大学で演説を行い、アジア重視の外交戦略をあらためて表明した。

「アジアにおける米国の未来」と題するこの演説で、ライス補佐官は、「アジア・リバランシングがオバマ政権の外交政策の基軸であり続ける」と強調。「他の地域でどれだけ紛争が発生しようとも、この重要な地域への永続的な関与を深め続ける」と訴え、2014年4月のオバマ大統領のアジア訪問を発表した。

 ライス補佐官の演説に先立つ11月12日には、ルー財務長官が自らのアジア5カ国歴訪にあたり『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のアジア版に寄稿し、「米国は世界でいま最もダイナミックな地域であるアジアとの連携を深める必要がある」と強調している。12月2日からは、バイデン副大統領が日中韓の3カ国を訪問、さらにケリー国務長官も近々、アジアを再訪する予定だ。

 こうした最近の動きの背景を『ワシントンポスト』紙は「アジアの同盟国からの疑念払拭を狙ったもの」と評した。実際、財政問題を巡る国内の政治的対立と政府機関閉鎖への対応から、オバマ大統領が10月に予定していたアジア諸国歴訪を取りやめた影響は大きかった。

 さらに、外交面では、エジプト、シリア、イラン等の情勢から、当面、中東地域に注力せざるをえない状況もある。9月に行われた国連総会でのオバマ大統領の演説は中東問題に終始し、アジアへの言及は見られなかった。また、ケリー国務長官は上院議員時代から中東への関与が深く、政権1期目でクリントン前国務長官やキャンベル前国務次官補がアジア重視を推進した姿勢と比べると、アジアへの取り組みは弱いと見る向きは多い。

 

 ◇TPP妥結にも暗雲

 

 ホワイトハウスとしては、大統領の14年4月のアジア歴訪に向けて、アジア重視を裏付ける「成果」を上げたいところであろう。その成果の最大の眼目となるのが環太平洋パートナーシップ協定(TPP)だ。演説の中でライス補佐官も、TPPの妥結をアジア太平洋地域における経済面での最優先課題と位置づける。

 しかしながら、ここでも暗雲が立ち込めつつある。TPP妥結に向けては、議会から大統領に貿易促進権限(TPA)を付与されることが不可欠とされる。TPAが付与されれば、通商交渉の際、政権は交渉内容の限定などの義務を負う半面、議会に個々の細かい内容についての修正を求められることなく、一括して承認・不承認の採決に持ち込める。このTPA付与を巡って議会議員から慎重論が相次いでいるのだ。

 11月12日には下院共和党議員22人が、その翌日には下院民主党議員151人が、それぞれ大統領への権限移譲への懸念を表する書簡をオバマ大統領に送っている。今や米政権は、TPP参加国や2国間の交渉に加え、国内議会との交渉を行わねばならない。しかも議会との交渉が最も困難と見られる状況だ。

『ワシントンポスト』紙には、オバマ政権の「アジア・リバランス」について、アジアを重視するとの「言葉」のみ先行して、具体的な「行動」が少ないとの批評が見られる。来春のアジア歴訪に向けて、実質的な成果を上げることができるかどうか。今まさに、オバマ大統領のリーダーシップと行動が問われていると言えよう。