2013年

12月

24日

特集:2014年マーケット総予測 2013年12月24日特大号

 ◇第1部 短期楽観 強気相場が続く限り投資家は踊り続ける

 

濱條元保

(編集部)

 

「外国人投資家の日本株への買い意欲は、想像以上に強い。この相場はしばらく続く」。大手証券の首脳は、強気の姿勢を隠さない。

 円安と株高、低金利という絶好の相場環境が、投資家心理に火をつけた。「強気相場」という音楽が鳴っている以上、投資家は踊るしかない。

 しかし、潜在成長率(経済の実力)が低下する中で、少子高齢化が急速に進み、国内総生産(GDP)の2倍に達する政府債務を抱える最悪の財政状況に目を向けると、長期展望は描けない。この状況は、欧米主要国でも似たり寄ったりだ。

 短期楽観、長期悲観──2014年のマーケットを総括すると、こうなる。

 

 ◇日本株を持たざるリスク

 

 内外の日本株への関心は高い。

 13年12月3~6日に野村証券が開催した「野村インベストメントフォーラム2013」には、内外の投資家2000人が集結した。中でも外国人投資家は、12年の300人から500人へと急増。「長期投資を行うソブリン・ウェルネス・ファンド(SWF)の増加が顕著で、輸出関連企業に加えて内需と海外M&A(企業の合併・買収)を積極的に展開する企業への関心が高い」(野村証券)。

 米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのラカイエ最高投資責任者は、「アベノミクスによる第一と第二の2本の矢の効果が大きかった。続く第三の矢に強い関心を持っている」と、成長戦略の実現を前提に日本重視の姿勢を示す。

 内外の機関投資家と頻繁に接触しているメガバンク首脳は、「年金など内外の機関投資家が、日本株を持たざるリスクを強く意識し始めた。消費増税前の3月までに日経平均株価は1万6000円から1万8000円まで上昇を見込むヘッジファンドがかなりある」と明かす。

 米国では実体経済の改善が、株価を押し上げるという循環に戻った。

 13年11月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数は前月比20・3万人増となり、失業率は前月比0・3ポイント下がり7・0%と5年ぶりの低水準となった。13年7~9月期の米実質国内総生産(GDP)改定値は3・6%増と、速報値の2・8%から大幅に上方修正した。

 相次ぐ好調な経済指標を受けて、12月6日のニューヨークダウ平均は前日比198ドル高の1万6020ドルに上昇。それまで「緩和マネーが株価を押し上げる」との期待から、「景気回復を裏付ける良好な経済指標が出れば緩和マネー縮小で株は売り、逆に悪ければ緩和継続で株は買い」という「ねじれ現象」が解消された。

 米株高の流れを受けて12月9日、1ドル=103円と円安が進み、日経平均株価は前週末比350円高の1万5650円に上昇した。QE3縮小への警戒感は緩み、円安・株高、低金利継続の期待が強まった。

 民間シンクタンク41機関の予想を集計した日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」によれば、14年1~3月期の実質GDP成長率は前期比年率4・39%増となり、消費増税が始まる4~6月期には同4・62%減と大幅に落ち込むという。

 政府は消費増税の悪影響を回避しようと、12月6日に投資促進などの競争力強化や復興・防災の加速などに5・5兆円の景気対策を決めた。日銀による追加緩和期待も高く、7~9月期にはプラス成長に復帰するとの予想が大勢だ。

 そして、金融・財政政策に下支えされ、成長戦略の効果から14年末に向けて日経平均株価が2万円を目指す──。こうした強気なシナリオが描かれる限り、投資家は日本株を持たざるリスクにさらされる。音楽が鳴っている限り、踊り続けるしかないのだ。

 

 ◇いつ音楽が鳴りやむか

 

 問題は、いつ音楽が鳴りやむか。「短期的に強気な外国人投資家だが、日本はすでに人口減少が始まっており、財政状態が厳しいことには注意を払っている。4月以降の景気の落ち込みの衝撃が大きく、夏以降の回復がもたつき、15年10月からの2度目の消費増税が見送られるような事態になれば、外国人投資は日本株売りに転じるだろう」(大手証券チーフストラテジスト)。

 4四半期連続のプラス成長とはいうものの、それを支えているのは財政政策にほかならない。消費増税や税収上振れ分は本来、政府債務削減のための原資にすべきだが、すでに5・5兆円の13年度補正が閣議決定されている。つまり、安倍政権がやっていることは、将来の需要を先食いして目先の景気を刺激しているに過ぎない。問題先送りだ。

 さらに成長戦略の柱である規制改革にも疑問符が付いた。産業競争力会議の民間議員を務める楽天の三木谷浩史会長兼社長が全面解禁を求めていた一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売をめぐり、一部対面販売を残す決定に三木谷氏が猛反発。民間議員の辞任を表明する事態に発展した。

 結局、安倍晋三首相の慰留によって三木谷氏の辞任は回避されたが、こうしたやりとりは外国人投資家に「安倍政権は規制改革に本気ではない」との印象を与えてしまう。現に、激しい世論の反発を顧みず特定秘密保護法を強引に可決させた安倍政権に対して、ある外国人投資家は「安倍首相は経済への関心を失ったのではないか」と、疑心を強めている。「日本が変わる」という期待が疑念に転じたとたん、外国人投資家のマネーは引き揚げられるだろう。

 14年のマーケットは、いつ音楽が鳴りやむかに神経をとがらせながらの束の間の相場になりそうだ。