2013年

12月

24日

経営者:編集長インタビュー 浦上博史 ハウス食品グループ本社社長 2013年12月24日特大号

 ◇カレーとともに健康食品伸ばす

 

── 「バーモントカレー」発売50周年に当たりますが、カレーの売上高は微減の傾向とか。

浦上 震災でコンビニの出来合いの食品を利用した高齢者が「案外便利」と引き続き利用したり、節電で冷房を控えた夏に「カレーを煮込むのは……」と敬遠したりといった生活の変化が影響していると思います。長いスパンでは、子どもよりカレーを食べない高齢者が増える少子高齢化の影響もあるようです。そのため消費者の反応を定期的に調査し、3年に1度くらいの頻度で中身を変えています。「味が変わった」と感じさせないほどの微妙な変更です。

── バーモントのほか、ジャワカレー、ザ・カリーなど複数のブランドを出しています。

浦上 お客様のニーズは細分化していて、低価格志向のお客様、プレミアム感を求めるお客様などさまざまです。我々はこの幅広いニーズに応えようと「フルライン戦略」をとっています。当社で値ごろ感のあるブランドといえば「こくまろカレー」ですが、他社やPB(プライベートブランド)も多数参入する激戦区。ここでしっかり戦えるようにと、核家族化に合わせ、13年1月に刷新しました。容量を10皿分から8皿分に減らして価格を下げるとともに、2種類のルーで仕上げ、おいしくしました。一方でバーモントやジャワはシェアアップを図ります。

 

 2013年3月期の売上高構成は、カレーやスパイスなどの香辛・調味加工食品事業59・0%、健康食品事業20・4%、海外事業7・0%、その他13・6%だった。

 

── スナック菓子などさまざまな食品を手がけています。

浦上 高度経済成長期にラインアップを広げました。家庭用ミネラルウオーター事業を立ち上げたのは我々だと自負しています。でも市場の成熟で参入が増えて価格争いになり、非常に厳しい時期を迎えました。転機は01年に起きた牛海綿状脳症(BSE)問題。カレーは牛脂・豚脂を使うので、柱であるルーカレーの収益がガクッと落ち、03年4月に初めて中期計画を作りました。キーワードは選択と集中。全国展開していたラーメン事業は西日本の「好きやねん」と九州主体の「うまかっちゃん」に絞り、ミネラルウオーター事業は10年にアサヒ飲料へ譲渡しました。一方、育成事業として健康食品事業に注力することにしました。

── 「ウコンの力」ですね。

浦上 ウコン飲料市場でのシェアは以前はほぼ100%でしたが、参入が増え現在は約70%です。繰り返しご利用いただくには手ごろな値段で飲みやすく効き目感があることが必要。やるべきことはまだあります。

── パンにかける調味料「パパン」が好調とか。

浦上 「パパン」は、12年2月に発売したシーズニングの名前を13年2月に変えたものです。4~9月の売上高は4億8000万円で前年同期比24%の増加。年間売上高は約10億円の見通しです。ヒントになったのはシナモンシュガーの売り方。定番の売り場に加えパン売り場の隣にも置くと売り上げが従来の15倍に伸びました。そこでパンに合うスパイスとして「パパン」を開発しました。

── 海外事業はどうですか。

浦上 米国では1983年に豆腐事業を始めました。市場は拡大し、当社のシェアは1位です。最近は、豆腐をこんにゃくに練り込んだ「豆腐しらたき」に力を入れていますが、中国系の会社が同様の製品を出すなどでシェアは低下。臭いを消すなど改善に努めています。

 一方、中国は正面突破です。「日本のカレーを中国の国民食にしよう」と05年に進出。中国人にはルーの色が明るい方がおいしく見えるそうなので、日本向けと色を変えています。同国でのルーカレー事業は12年12月期に13億円を売り上げて黒字化。毎年前年比2ケタ増の勢いで伸びています。「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋と共同で、レストラン事業も33店舗(9月末現在)

展開しています。

 

 10月、ハウス食品グループ本社を持ち株会社とする持ち株会社制に移行した。

 

 ◇20年に海外比率20%へ

 

── 持ち株会社制移行の狙いは。

浦上 例えば健康食品なら、ハウス食品が扱っていた「ウコンの力」を、「C1000」を扱うハウスウェルネスフーズに移管。事業ごとに責任を持って担当することと、流通への提案力向上を目指しています。各商品の営業マンが別々に提案するより、1社でまとめた方が提案力が高まります。あとは海外事業の強化です。

 生産面では、栃木、静岡、福岡にあるカレーなどのルー工場を11月から再編しています。栃木の小箱用1ラインを減らす一方で、福岡の大箱用2ラインを削減し、うち1ラインを栃木に移設。需要の大きい首都圏に生産能力をシフトするとともに、生産効率を高める狙いです。

 国内は人口減少という環境下で、どう商品のレベルを上げるかが大事です。海外事業は20年に売上高600億円(構成比20%)、営業利益90億円(同30%)に引き上げます。全体の売上高目標は3000億円。達成のために人材育成や資源投下をどうするか議論を進めています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=中川美帆・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 「カレークイック」という、濃縮ペーストを水で溶かしてフライパンで作るカレーを企画開発し、在庫の山を築いてしまいました。

Q 最近買ったもの

A ベートーベンの弦楽四重奏曲全集のCDです。クラシック好きは父(85年の日航ジャンボ機墜落事故で死亡した2代目社長の故浦上郁夫氏)の影響です。

Q 休日の過ごし方

A 以前は高3と中3の娘がやっていたバレーボールの試合の応援に行っていましたが、引退したので、最近は音楽鑑賞、読書、ワインの家飲み、散歩です。

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 ■人物略歴

 ◇うらかみ・ひろし

 兵庫県出身。1965年生まれ。88年慶応義塾大学理工学部卒業、91年ボストン大学経営修士課程修了。91年住友銀行(現三井住友銀行)入行。97年ハウス食品入社、2009年社長就任。13年10月から現職。48歳。