2014年

1月

07日

特集:経済大予測2014 2013年12月31日・2014年1月7日合併号

 

 ◇第1部 世界の潮流 米緩和縮小で逆流するマネー 世界経済は回復への正念場

 

秋本裕子

(編集部)

 

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は2013年12月17~18日の定例会合で、量的金融緩和第3弾(QE3)縮小開始を決めた。米国債などの債券購入額を毎月850億ドルから750億ドルへ縮小する。この決定を受けて、米ダウ平均株価は一時200ドル以上急上昇し、18日に1万6000ドル台を回復。19日の日経平均株価も年初来高値を更新した。

 実は11月まで、緩和縮小の時期は「14年3月。早くて1月」との見方が市場の大勢を占めていた。だが、12月に入り潮目が変わった。09年10月に10%だった米国の失業率は13年11月に7%に低下するなど、雇用関係を中心に主要な経済指標が次々と改善。懸念されていた政府の債務上限問題は米議会で妥協が成立した。こうして、「景気回復が予想以上に早く進み、腰折れの心配も払拭(ふっしょく)できたことが、大方の予想より早い決断につながった」(市場関係者)と見られる。

 

 ◇新興国経済にリスク

 

 13年春以降、雇用情勢の改善を背景に米国経済は回復に向かってきた。国際通貨基金(IMF)が公表している14年の米国成長率は2・6%と、13年(1・6%見通し)から大幅に持ち直し、15年も成長が持続する見通しだ。

 世界経済が回復軌道をたどるうえで、今後の米国の金融政策が大きな鍵を握る。米連邦準備制度理事会(FRB)は14年1月から緩和縮小を始め、1年程度で終了すると見られる。米国はこれまで量的緩和策で国債の買い取りを通じて長期金利を抑えてきたが、14年はいよいよ緩和縮小から引き締め(政策金利の引き上げ)へと向かう過渡期に移る。

 だが、その過程では大きなハードルがたちはだかる。「緩和縮小でそれまで新興国に流入していた投資マネーが米国に回帰し、新興国の通貨安やインフレを引き起こし、経済を混乱させるリスクがある」(りそな銀行の黒瀬浩一チーフ・マーケット・ストラテジスト)からだ。

 13年5月には、量的緩和の早期縮小の可能性を示唆したバーナンキ議長の発言をきっかけに米金利が大幅に上昇、これに伴い新興国通貨は大幅に下落した。そしてインドやブラジルなど経常赤字国を中心に、「通貨安→インフレ→金融引き締め」の悪循環が生じ、株価も大幅に下落、新興国景気は大幅に下振れした。

 市場では、「既に緩和縮小を織り込み済みだったため、大きな混乱は起きない」との見方も多いが、決して楽観視できる状況にはない。実際、過去には米QE1(08年11月~10年3月)終了後にギリシャ・ショックが顕在化し、QE2(10年11月~11年6月)終了後に欧州銀行危機が表面化。米S&P株価指数をはじめ、世界の株価も下落した。流動性がなくなれば、経済が脆弱(ぜいじゃく)な国で資金繰りに行き詰まる可能性が高まる。黒瀬氏は「特に警戒されるのは、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカなど。国内経済が悪化し、小さなショックにも脆弱で、影響を受けやすいだろう」と分析する。

 実は、これらすべての国で14年に大統領選挙や議会選挙が予定されている。選挙前に景気悪化は避けたいところ。急激な通貨安やインフレを避けるため、各国政府は更なる利上げという選択肢をとる可能性が高いが、利上げには国内景気悪化へのリスクが伴う。大和総研の近藤智也シニアエコノミストは、「景気が冷え込んでいる中での利上げは、更なる景気減速リスクにつながる。結果的に世界経済に悪影響を与えかねない」と指摘する。

 

 ◇日本は追加緩和へ

 

 米国がいち早く緩和縮小に向かう一方、日本の金融緩和は長期化する見通しで、出口はまだ見えない。

 日本経済は12年末の安倍晋三政権誕生以来、アベノミクスの金融政策、財政政策、成長戦略という「三本の矢」で回復軌道をたどってきたが、その足取りは弱く、2年目に入る14年に正念場を迎える。

 14年4月に予定される消費増税で景気への悪影響も懸念され、米国の緩和縮小で新興国経済が悪化すれば、日本企業も打撃を受ける。市場では「2年で2%の物価上昇」という目標達成は難しいとの見方が広がっており、追加緩和への期待が高まっている。

 日本銀行の黒田東彦総裁は13年11月21日の金融政策決定会合後の記者会見で、「現時点では日本経済は予想された経路をたどっている」としながらも、必要に応じて追加の金融緩和に踏み切る準備があることを示した。市場では「日銀が14~16年度の経済・物価見通しを示す14年4月ごろに追加緩和を行う」との見方が多く、そうなれば13年4月の異次元緩和から約1年での追加緩和となる。

 

 ◇世界経済は米国が牽引

 

 IMFの14年の世界経済成長率は3・6%と、13年に比べて0・7ポイント上昇する見通しだ。日本の成長率は1・2%と予想。ユーロ圏は政府債務や銀行問題などで依然弱さが残っているが、13年後半は景気に持ち直しの兆しも出ており、14年の成長率は1・0%(13年マイナス0・4%見通し)とプラスに転じると見ている。

 一方、新興国経済は08年のリーマン・ショック以来、いち早く回復に向かい、世界経済を牽引(けんいん)してきたが、ここへきて減速感が漂い始めている。中国は過剰投資是正の影響などで14年は7・3%(13年7・6%)と停滞し、今後は大きな成長は見込めそうにない。新興国全体でも成長率は5・1%程度にとどまる見通しだ。

 こうした状況下で、米国が14年末にかけて量的緩和を終了させる。市場では「米国をはじめ先進国が牽引する形で、14年の世界経済は緩やかに回復する」との見方が広がっているが、このシナリオが果たして現実になるのか。世界経済は14年に試練の時を迎える。