2014年

1月

07日

経営者:編集長インタビュー 中島正博 モリタホールディングス社長 2013年12月31日・2014年1月7日合併号

 

 ◇飽和市場の消防車でシェアアップ

 

 国内消防車メーカー14社中、シェア5割超を超えるトップメーカー。国内で唯一、はしご車を製造し、2014年3月期は3期連続の過去最高益更新を見込む。

 

── 業績好調の原動力は。

 

中島 主力の消防車事業の戦略がしっかり根付いたこと。もう一つは、2本目の柱として育成してきた防災事業で、09年8月の宮田工業との経営統合の成果が出てきたことです。

── 消防車事業の戦略とは。

 

中島 小泉内閣の三位一体改革で消防自動車購入の補助金が削除され、自治体は100%自己財源で購入することになりました。財政難で更新需要を絞る自治体も多く、現在の需要は15年前に比べて40%減です。そこで、自治体が予算化しやすい新しい製品の提案を目指して研究開発を強化するとともに、価格競争力を付けるための設備投資にも力を入れてきました。その成果が上がり、市場が縮小するなか、受注台数を減らさずにシェアを上げることができました。

 現在のシェアは50%強。15年前に比べて約15ポイント上昇した。この間に、2位メーカーとの差を2倍に広げた。

 

 ◇新車両で需要掘り起こす

 

── 自治体が予算化しやすい「新しい製品」とは。

 

中島 コンビナートなどの油の火災は、特殊な薬剤を混ぜた泡で消火していますが、木造の火災にはこれまで水を使い、泡で消すという考えはありませんでした。消防法上も、油の火災用の泡の薬剤の規定しかなかったのです。そこで、木造火災をより早く消すための泡を開発しました。水の代わりですから、自然に優しい天然薬剤を使用しています。

 この泡で消す消防車を07年に発売し、更新需要を喚起することができました。消火効力が高いうえに、泡の発生も電子制御でフルオートマチックなため、現場の消防隊員から「使いやすい」と高い評価を得ることができたためです。

 

── 生産面での改革とは。

 

中島 大阪市内の3カ所に点在していた工場を、08年に兵庫県三田市に集約するとともに、生産工程もモジュール化(部品の規格化)を図りました。受注生産で要望が異なる仕様を極力標準化したのです。それまでは自治体の入札時期が上期に集中するため、製造時期は下期偏重となり、工場の繁忙期と閑散期の差が激しかったのですが、モジュール化によって受注前にある程度の製造が可能になり、工場の稼働率の平準化による、コスト競争力も付けることができました。

 これらの改革の結果、09年3月期には79%だった売上高原価率は13年3月期には74%に低下。営業利益率も2倍の約9%に改善した。

 

── さらなる新型車の提案は。

 

中島 まだまだたくさんできることがあると考えています。たとえば、はしご車ではない一般的な消防車の場合、現場で積載はしごを取り出して立てかけ、ホースを抱えた消防士がはしごを上がって放水します。そこで、人が乗るバスケットを伸ばして放水できる新型車を14年に発売します。消火作業が安全かつ簡単になり、はしごを下で押さえる人手も削減できるため、人件費を抑制したい自治体の意向にかなうのではと期待しています。この新型車両は年間40台の販売を見込んでいます。

 

── 好調な防災事業は。

 

中島 消火器は、傘下の宮田工業の宮城県栗原市の工場に生産を集中させて効率化を図り、価格競争力を付けました。また消火器の容器をこれまでの鉄製から、劣化しにくくより安全性が高いアルミ製に切り替えました。これによって、上位2社のシェアに迫り、三つどもえの状況になっています。

 高齢者施設での火災が相次いだことで、消火設備の設置対象が広がったため需要が増大しました。なかでも当社の消火設備は、既存の建物に後付けできて、しかも消火効率が高いため、高齢者施設のほか寺院などでも導入が進み、さらなるシェア拡大を期待しています。

 

── 産業機械、環境車両も手掛けています。

 

中島 産業機械は、正直に言って苦戦しています。メインのユーザーは鉄のリサイクル業者。リーマン・ショック後の鉄鋼産業の景気回復の遅れが影響しています。環境車両は市場規模は変わらないのですが、昼の渋滞対策のため、ゴミの夜間収集のニーズが高まってくるでしょうから、静音なハイブリッド車の開発などでシェア拡大を目指します。

 

 ◇海外事業拡大に挑戦

 

── 海外事業は。

 

中島 主にはしご車を輸出していますが、長く続いた円高で競争力が失われ、競合していたドイツメーカーにシェアを奪われました。しかし、最近の円安効果で、受注がようやく増えてきました。中国の2拠点での製造と日本からの輸出で、海外売上比率5%を20%に引き上げたいと考えています。はしご車だけでなく、国内市場でシェアを伸ばした木造火災の泡消防車を含め、新しい消防車を世界市場に提案していきたいと考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 海外部門を担当していました。主に中近東で、出張日数は年間100日に及びました。消防担当の官庁のほかに王族関係者にも面会して営業活動をしました。

Q 最近買ったもの

A セダン型のハイブリッド車。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフと1泊旅行。行き先で多いのは軽井沢(長野県)。月1回程度出かけています。ぶらっと行って食事して帰ってきます。

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 ■人物略歴

 ◇なかじま・まさひろ

 大阪府出身。1972年大阪経済大経営学部卒、森田ポンプ(現モリタホールディングス)入社。環境事業部長、海外事業本部長を経て2006年6月より現職。63歳。