2014年

1月

14日

ワシントンDC 2014年1月14日号

 ◇内部抗争の火種になり得る共和党指導部の茶会切り

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

2014年11月4日投開票の米中間選挙は、総仕上げに入るオバマ政権にとって命運を懸けた「最後の戦い」だ。一方、共和党にとっては8年ぶりの政権奪還を目指す試金石となる。13年10月の政府機関一部閉鎖を巡る戦術の失敗を踏まえ、共和党指導部はここにきて徹底抗戦の保守強硬路線から、成果主義を重視する現実路線へとかじを切った。背景には何があったのか──。

「彼らはすべての信頼を失った」。共和党のベイナー下院議長が12月12日の記者会見で批判したのは、保守強硬派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」系団体。医療保険制度改革(オバマケア)への予算停止などを主張した「ヘリテージ・アクション・フォー・アメリカ」などだ。17年ぶりの政府機関一部閉鎖に陥る過程で、ベイナー氏は「彼ら」と歩調を合わせた結果、党内の混乱と支持率低下を招いた苦い思いがある。

 政府機関再開時の与野党合意に基づく財政協議の結果、向こう2年の歳出規模を当初より引き上げ、各年約1兆ドルとすることで合意した。茶会系は反発したが、政府機関の再閉鎖を回避するためベイナー氏は合意案を支持。この日、下院は共和党の多くの賛同を得て修正予算案を可決し、3年超も膠着(こうちゃく)した財政協議に風穴を開けた。

 ベイナー氏の「態度豹変」は中間選挙をにらんでのことだ。中間選挙は4年に1度の大統領選の中間年に行われる国政・地方選の総称。任期2年の下院(定数435)は全議員が改選され、任期6年の上院(定数100)は3分の1が2年ごとに改選される(今回は補選含め35議席)。

 

 ◇中間選挙は優位とされるが

 

 中間選挙は、政権に対する信任投票の側面が強い。最近ではイラク戦争が混迷した06年選挙でブッシュ政権(共和党)への激しい批判から民主党が12年ぶりに上下両院を奪取。08年大統領選勝利への布石となった。一方、医療保険制度改革などへの反発からオバマ政権(民主党)批判が広がった10年選挙では茶会運動を背景に共和党が下院で歴史的勝利をあげ、これを境にオバマ政権は議会運営に難渋し、政権基盤を弱めていった。

 連邦議会選には再選率が9割を超える「現職有利」の構造がある。小選挙区の下院は地元利益と密着し、各州2人が選出される上院は有力者が多い。今の下院の区割りは多数派の共和党の意向が反映され、民主党に不利とされる。ただ、議席の「固定化」という傾向にありながら、時として「大転換」が起こるところが中間選挙の怖いところだ。

 ベイナー氏が一度は茶会系に同調したのは、運動量が豊富で集票力がある茶会系を敵に回すのは得策ではないとの判断があったからだ。しかし、一連の騒動で批判の矛先は茶会系に向かった。しかも、支持率低下は共和党のそれよりひどく、党支持層の離反も招いた。党指導部からも「茶会系はやり過ぎた」との声が漏れ、「世論の批判が強い茶会系は恐るるに足らず」とみて「茶会切り」へと方向転換したとみられている。

 選挙分析機関のクック・ポリティカル・リポートによると、11月の中間選挙において、共和党は下院で200議席が当選確実で、優勢を含めると過半数を上回る230議席に達する見通し。上院でも善戦しており、上下両院を支配する可能性もある。

 ただ、共和党現職には春からの党内の予備選が最大の難関だ。茶会系が対抗馬を出せば、激しい党内抗争が勃発し、11月の本選前に党内分裂が深刻化する恐れもある。そうなれば「本選での番狂わせもあり得る」との指摘も出ている。