2014年

1月

14日

特集:英語と経済 歴史に見る 多様なアクセントを受容する「衰退しない大英帝国」の神髄 2014年1月14日号

川北稔

(大阪大学名誉教授)

 

 かつて、世界の共通語はフランス語だと言われた。外交の世界では、特にそのように見られていた。ヨーロッパこそが文明世界の中心であり、そのヨーロッパの中心はフランスだという見方の反映であった。

 しかし、今や英語が世界唯一の共通語となりつつあることは、よく知られている通りである。英語圏に生を受けたというだけで、母語で世界を渡ることができる。日本はもとより、非英語圏の全ての国が、国民の英語教育にかけているエネルギーは、気が遠くなるようなものである。

 戦後、積年の対立を乗り越えて、ドイツとフランスが始めたヨーロッパ統合の動きに、散々逡巡したイギリスが参加したのは、ようやく1973年の年初のことで、40年を過ぎた今も、ユーロは採用していない。にもかかわらず、公式にはともかく、ヨーロッパの共通語は実態として、この「逡巡するヨーロッパ人」にすぎないイギリス人の言葉になってしまっているのは、極めて皮肉な現象というほかない。………