2014年

1月

14日

経営者:編集長インタビュー 仙田貞雄 三井金属鉱業社長 2014年1月14日号

 ◇コア技術を生かし、時代のニーズをつかむ

 

 三井金属は、非鉄金属関連のコア技術を生かし、時代のニーズに合った商品を次々と世に生み出し続けている。ここ数年は、スマートフォンやタブレット端末に使用される極薄銅箔などで大きな存在感を示してきた。足元では、二輪車向け排ガス浄化用触媒、電池材料などが好調。今年早々には、チリのカセロネス銅鉱山が本格稼働する予定であり、上流事業でも転機を迎えつつある。

── 中期経営計画で、資源、触媒、電池材料、リサイクルを注力事業に選んでいます。その理由は。

仙田 三井金属鉱業という社名が示すように、非鉄鉱山開発、製錬(鉱石から金属を取り出す工程)、精錬(不純物の多い金属から純度の高い金属にする工程)が当社のルーツであり、その後、電子材料など下流の分野にも進出してきました。四つの注力分野を定めたのは、当社が持つ上流、中流、下流の技術の強みを発揮したいという意味が込められています。資源事業は上流、触媒事業は精錬から派生した技術であり、下流に当たります。電池材料も下流となります。リサイクルは中流または下流の事業と言えましょう。

── チリのカセロネス銅鉱山がいよいよ本格稼働します。

仙田 海外の銅鉱山を日本勢(同社の権益比率は25・5%。JX日鉱日石金属49・5%、三井物産25%)だけで開発するのは初めてであり、日の丸鉱山と言えます。銅は銅線などインフラ整備に欠かせず、非鉄の中でも需給が逼迫(ひっぱく)してくる金属です。

 このプロジェクトによって、銅精鉱、電気銅合計で年間18万トンが産出され、当社とJX日鉱日石金属の合弁会社パンパシフィック・カッパーの銅の自己調達率は20%超から50%まで高まります。日本の製錬事業者全体としては、自己調達比率が20%超から30%超まで上昇することになります。

── 触媒事業はどうですか。

仙田 排ガス浄化用触媒を二輪車向けを中心に供給しています。規制強化によって16~17年をメドにASEANや新興国などで浄化用触媒の装着が義務化されていきます。そこで中国、タイ、インド、インドネシア、ベトナムに拠点を築いてきました。

 二輪車向けだけではなく、米国では四輪車向け触媒の工場建設を決めました。今までは軽自動車向けをメインに供給していましたが、今後は日系メーカーを中心に、普通自動車向けにもグローバルに供給していきます。

── 電池材料も将来有望です。

仙田 大きく二つの材料があります。ハイブリッドカー向けのMH(水素吸蔵)合金は、プリウス(トヨタ自動車)の好調もあり、高レベルな販売実績が続いています。車種も増えており、今後も期待できそうです。

 電気自動車(EV)用もリチウムイオン電池の正極材料となるLMO(リチウムマンガンスピネル酸化物)の販売量が増えてきました。LMOは電池材料としては第一世代であり、次世代となりうる新規高容量材料を14年に発売する予定です。燃料電池車も含め次世代自動車がどの程度普及するかについてはさまざまな議論がされています。当社はどんな次世代自動車にも対応できるように柔軟に研究開発を進めています。

── リサイクルはどうですか。

仙田 さまざまな事業をしてますが、メインは亜鉛と鉛のリサイクルです。当社の精錬事業でのリサイクル使用比率は、亜鉛30%、鉛100%であり、鉛は安定的にほぼ全ての材料をリサイクルで賄っています。亜鉛も年々リサイクル使用比率を高めてきています。その他では廃電子基板のスクラップを集荷し、金、銀、銅などを採取、資源の循環利用の一翼を担っています。

 

 ◇競争力高い極薄銅箔

 

── 注力事業には入っていない銅箔や自動車用部品のドアロックも存在感があります。

仙田 これらは当社の中核事業であり、すでに戦略が決まっているのであえて注力分野とはしませんでした。

 銅箔事業はここ数年当社の業績を牽引(けんいん)してきました。スマートフォン、タブレット端末に代表されるように、銅箔は求められる材料が極薄化しています。極薄銅箔でシェア90%を維持しており、技術的優位性を発揮しています。時計や洋服などにコンピューターを内蔵させたウエアラブルデバイスや眼鏡にディスプレーを装着させたグラスタイプディスプレーなどがポスト「スマートフォン」の候補として挙げられているようですが、どのような商品がブレークしたとしても、小さな容器の中にどれだけ小さな部品を取り込めるかという傾向は変わらないでしょう。

 ドアロックはシェア15%と世界トップです。日本、中国、タイ、インド、英国に生産拠点があり、自動車需要が旺盛なインドネシア、メキシコでも今期生産を開始させました。

── 今後の開発方針は。

仙田 電子材料は商品の寿命がどんどん短くなり、競争も激しくなっていますから、得意の事業領域の周辺で次のヒット商品を開発していきたいと考えています。新商品の開発では、当社が持っている技術をどのように生かすべきなのかをお客様からご指摘いただくことが多々あります。当社の技術力を高めつつ、お客様との情報交換を密にすることで時代のニーズを捉えていきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 三池製錬所(福岡県大牟田市)で研究や現場管理の仕事をしていました。技術者としても社会人としても充実した時間を過ごしていました。

Q 最近買ったもの

A ゴルフクラブ一式です。飛距離を稼ぐために新しいクラブが必要でした。

Q 休日の過ごし方

A 週末は、2週に1回はゴルフに行きます。半分くらいはプライベートです。

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 ■人物略歴

 ◇せんだ・さだお

 兵庫県出身。1978年神戸大学大学院工業化学専攻修了後、三井金属鉱業入社。2007年執行役員銅箔事業本部特殊銅箔事業部長。09年取締役兼常務執行役員を経て10年社長兼COO。11年6月から社長兼CEO兼COO。60歳。