2014年

1月

21日

ワシントンDC 2014年1月21日特大号

 ◇一変した米エネルギー事情 バイオ燃料普及も曲がり角

 

堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 

 米国のガソリン販売事業者は、米国環境保護庁(EPA)が定めた再生可能燃料基準によって、植物を原料とする燃料であるバイオエタノールの使用義務が課せられている。EPAは昨年11月、今年適用される義務量の見直しを発表し、政策導入以来初めて数値の下方修正案を提示した。

 米国では、1977年に大気浄化法の改正に伴い、ガソリンへのバイオエタノールの混合が認可。実施業者には連邦税が減免されるなど政治的に後押しされてきた。使用義務量は2007年の再生可能燃料基準(RFS)と呼ばれる環境政策の導入から取り入れられた。

 米国は世界最大のトウモロコシ生産国だが、近年では、その生産量の4割以上が本来の主要用途である家畜飼料ではなく、バイオエタノールの製造用原料に供される状態だ。畜産業界や食品業界からは、この供給面での制約が世界的な穀物相場の高騰を招いているとの批判の声が上がっている。

 また、年々増加する使用義務量が必ずしも需要の実態に合致しないと指摘されてきた。確かに、低燃費車の普及や長引く景気低迷により、当初予想ほどガソリンの消費量が伸びなかったことで、混合されるエタノールに余剰が発生しかねない状況となっていたのは事実である。

 環境政策を強く推し進めるオバマ政権と、その実行機関として諸々の規制を設定・監視するEPAとしては、今回、使用義務量の下方修正という半ば逆行する判断を強いられたことになる。取り巻く状況には逆らえなかったということであろう。

 

 ◇「環境」以外に特長薄い

 

 EPAのジーナ・マッカーシー長官は「オバマ政権として引き続きバイオ燃料の普及拡大の努力を継続していく方針に、変わりはない」とコメントしている。だが、もはや同機関の注目対象は燃料から石炭火力発電の規制に移っているとの指摘も多く聞かれる。加えて、政策における位置づけにも変化が見られる。

 米国におけるバイオ燃料は、70年代のオイルショックを機に、中東依存型のエネルギー政策からの脱却、温暖化ガスの排出に伴う環境問題への対応、国内における余剰作物と生産農家の所得補償問題の解決といった目的で、国の財政負担の下にその普及が図られてきた経緯がある。

 ところが、近年のシェール革命により米国のエネルギー事情は著しく変貌しており、その恩恵によって近い将来には石油も含めたエネルギー自給体制の確立すら視野にある。余剰作物問題についても、その後の中国の経済発展などに伴い世界の需要は伸び続け、今やむしろ食料不足問題が話題となって相場の高騰を招く時代となった。

 そのようななかにあって、かつて石油資源の代替として注目を集めていたバイオ燃料の重要性やこれに対する注目度は、「環境」というキーワードを除いてしまえば相対的に低下を余儀なくされそうな状況にある。少なくとも大々的な国の財政支援の下に、バイオ燃料普及政策をさらに推し進めようといった声は、現在のワシントンではほとんど聞こえず、少数派になりつつあるようだ。

 今回のEPAの提案を受け連邦議会では、早くもこれを歓迎する声がある。その一方で、農業従事者やエタノール業界のロビイングを受けて反対の声も多く上がっており、提案に関する公聴会には多くの意見が出されている。このようなバイオ燃料を巡る動きを踏まえて、オバマ大統領は今年の一般教書でこの話題に言及するのか。またエネルギー問題や環境政策について、どのような方針を打ち出すのかが注目される。