2014年

1月

21日

特集:どうなる日本株 2014年1月21日特大号

 ◇6年ぶりの波乱に見舞われた日経平均2万円に向けた船出

 

緒方欽一

(編集部)

 

 日本株相場は波乱の幕開けとなった。今年最初の取引となる大発会を迎えた1月6日の東京株式市場は、売りが先行し日経平均株価は昨年末終値より下落。大発会での株価下落はリーマン・ショックが起きた2008年以来6年ぶりとなった。その後も昨年12月に回復した07年12月以来の水準となる1万6000円を挟んで一進一退が続く。

 大発会の翌7日。野村証券が都内で機関投資家向けのセミナーを開いた。冒頭、田村浩道チーフ・ストラテジストが会場の参加者に日経平均の14年末予想を尋ねた。提示された六つの選択肢から260人が回答した結果は次のとおりだ。

 ①1万5000円未満=5・1%、②1万5000~1万7000円=21・3%、③1万7000~1万8000円=32・0%、④1万8000~1万9000円=18・8%、⑤1万9000~2万1000円=13・2%、⑥2万1000円以上=9・6%。1万7000円以上が回答者の7割超、1万8000円以上も4割で、「予想以上に強気な答えとなった」(田村氏)。

 野村証券の見通しは年末1万8000円。値を付ける時期は違えども市場関係者の多くが予想する高値はこの水準である。

 

 ◇1万8000円まで妥当

 

 1万8000円予想の根拠は大きく二つ。一つ目は企業業績のさらなる改善だ。TOPIX(東証株価指数)採用銘柄の1株当たり利益(EPS)は今13年度が56%の大幅増益の見込み。野村証券では1ドル=100円の前提で14年度も16%増益を予想している。円安がさらに進めば株価は上振れ余地があるという。「対ドルで1円円安になると日経平均は377円上昇する」(田村氏)そうだ。

 二つ目は世界的な「カネ余り」の継続。米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の縮小を開始するとはいえ、市場に供給された大量の資金は滞留している。BNPパリバ証券の丸山俊日本株チーフストラテジストは、この資金が先進国の金融緩和と低金利政策で利回りが下がった債券から、リスクはあるが利益が期待できる株式に動く流れが継続すると指摘する。ただ、年末にかけてはFRBの緩和縮小終了が視野に入り、その先の利上げが意識されるので、株価は調整するとの考えだ。

 日経平均1万8000円という水準は、株価を評価する指標の一つ、株価収益率(PER)からも裏付けられる。PERは「株価が何年分の利益に相当するか」を意味し、値が大きいほど割高と解釈される。昨年ノーベル経済学賞を受賞した米エール大学のロバート・シラー教授が発案したPERでみてみよう。シラー教授のPERは「株価÷過去10年の実績利益」で算出する。10年間の平均利益を用いることで景気循環の影響が調整され、株価水準を客観的に判定できるそうだ。 

 ニッセイ基礎研究所の井出真吾主任研究員によると、同PERは25倍が一つの目安。近年では25倍を上回ると、日経平均の急落が見られるという。井出氏の解説では、足元の1万6000円は同PERで26・1倍。やや高いが、13年度の企業の大幅増益を加味すると23・5倍で、デフレ脱却などが期待される中ではむしろ妥当な水準とのことだ。

 13年度増益予想を加味したPER25倍の株価は1万7014円。13年度業績の着地点と14年度予想が見えてくる5月頃まではこれが目先の上限と話す。ただ、年末にかけて14年度業績を織り込んでいくと1万8000円でも同PERは24・7倍で、十分正当化できる水準だという。

 

 ◇2万2000円到達も

 

 一方、日経平均高値2万円を唱える市場関係者は少なくない。「11月に2万2000円」と予想する第一生命経済研究所の嶌峰義清首席エコノミストが重視するのは米国景気だ。

 金融危機以降、米国の家計は住宅ローンなどの借金返済を優先してきた。しかし、昨年からはより多くの所得を消費に振り向けられる構造に戻りつつある。景気が自律的な回復軌道に入ったというわけだ。米国の個人消費が増えれば、製品を輸出する中国などの新興国や欧州の景気も持ち上げる。また、世界的に金利には上昇圧力がかかると見込む。だが日本は日銀が緩和政策を継続しているため、内外金利差が徐々に拡大し円安が進むと予測する。

 SMBC日興証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは「5月に2万円」派。阪上氏が注目するのは賃金上昇と日銀の追加緩和実施だ。

 企業経営者からは賃金を底上げするベースアップ(ベア)の環境が整ってきたとの声が一部出てきた。賃金上昇が実現すれば、デフレの大きな原因が大きく改善すると市場は好感する。また、日銀が予想より早く4月の消費増税前の追加緩和に踏み切れば、市場の期待を維持。さらに緩和縮小に転じた米FRBとは逆に緩和強化の姿勢が鮮明となる点が、日本株にプラスと考える。

 

 ◇「150ドル」の天井

 

 再びシラー教授のPERを用いると、日経平均2万円は14年度の企業利益が前期比で2割増なら正当化されるという。ただ、この条件は満たせないと指摘するのが、ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役だ。菊池氏は年末9000円を予想する。なぜか。

 理由は二つある。一つは消費増税だ。増税前の駆け込みによる消費反動減の懸念や、消費者が家計倹約の度合いを強める可能性がある。企業側にすれば売り上げ減少要因だ。

 二つ目は円安効果の剥落だ。円安による収益かさ上げ効果は、記録的な円安進行となった昨年に比べると小さくなる。一方でアジア新興国の景気動向はまだ不安定で、現地での売り上げもそう強気な見方はできない。現地に拠点があれば、人件費などの販管費も円換算で上昇している。菊池氏は、これらの利益圧迫要因が時間を経るに連れて表面化し、増益期待が後退すると見ている。

 また、外国人投資家が引き続き日本株買いを継続するかという問題もある。13年の日経平均が戦後4番目となる56%の上昇となった原動力は外国人投資家による買いだった。

 外国人投資家からみた日本株の魅力度を測る手がかりの一つがドル建ての日経平均株価。これをみると足元で153ドルと、ここ10年の高値圏にある。みずほ銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミストは、「これまで150ドル前後のラインに何度も跳ね返されてきた」と指摘する。日経平均2万円に向けた航路は順風満帆とはいかなそうだ。