2014年

1月

21日

経営者:編集長インタビュー 渡辺秀一 メディパルホールディングス社長 2014年1月21日特大号

 ◇顧客サービス強化で差別化図る

 

 医薬品卸業界の再編の口火を切り、合併を繰り返して、業界首位級の売上高2兆8000億円に規模拡大した。

 

── 業界再編が続きました。

渡辺 13年前に三星堂、クラヤ薬品、東京医薬品が合併してクラヤ三星堂が発足し、売上高1兆円規模になりました。ここがターニングポイントでした。規模拡大で経営効率を上げようと合併したのですが、他社も合併し、どの企業もすべての商品を取り扱うようになって、取り扱いメーカーの違いといった企業の個性がなくなった。すると顧客はより価格が安い方を選択する。利益率が下がって苦しいから、また合併するということが繰り返されてきました。

 日本医薬品卸売業連合会加盟社数は20年前の4分の1に減り、メディパルを含む4大グループに集約された。

 

 ◇規模拡大からの転換

 

── 規模拡大から方向転換したのはいつ?

渡辺 顧客から見たときの企業価値を考え直したのは、2009年4月に予定していたアルフレッサHD(4大グループの一つ)との合併が公正取引委員会の審査の長期化で白紙になったときです。これを期に、規模の拡大が顧客にとっても当社にとってもよいことなのかと考えました。白紙になったことをポジティブに受け止めて、今までのビジネスモデルを見直しました。経営の効率化が合併の目的だったので、自助努力で無駄削減を図り、会社の個性を作り直すことにしました。

── 具体的には。

渡辺 医薬分業の進行で調剤薬局が増えました。つまり、売り先が増えたにもかかわらず、営業マンが訪問して注文を受け、配達するという従来の仕組みを変えず、少量で多頻度の発注にそのつど応じてきました。この仕組みを維持するために全国に約300カ所の支店を配置。医薬品の種類も増えるなか、支店単位での在庫管理も大変になっていました。

 そこで、都市部に大型の物流センターを置き、医療機関や薬局への配達を定時発送に切り替えています。注文も顧客にご理解いただき、オンラインで発注してもらう仕組みを拡大しました。これらによってコスト削減を実現しました。併せて、届いた薬を病院や薬局が整理しやすいように、それぞれの棚別に薬をまとめて納入する仕組みも整えました。この物流センターを全国13カ所に設置し、全国均質の物流サービスを提供できるよう、今後5年をめどに数百億円を投資する予定です。

── 他社で同じ仕組みを導入している例は。

渡辺 ありません。新しい仕組みに従業員は抵抗を感じるものです。私は「雇用は守る。リストラはしない。企業を存続させるために、知恵を出して新しい仕組みを導入する」と説明しました。配達はパート職に担当してもらい、社員は新しい価値を生み出す仕事に専念する、と役割分担も進めました。

 社員には、薬のより専門的な情報提供をする医薬情報担当者(MR)認定資格の取得を促しています。資格取得者は5年前は16人でしたが、今年度中には1000人規模に増える見込みです。会社が貸与するスマートフォンに練習問題を送るなどして学習を支援していますが、この方法だと1カ所に大人数を集めて研修会を開くよりもコストが安く、社員も空き時間に勉強できると好評です。タブレット端末の動画で商品の勉強をできるようにしたところ、これを営業活動にも使おうと新たな工夫が始まっています。また、売り上げ増加に伴って物量が増えると、物流を担当する従業員の負担が増えます。物流にITを導入し、より正確に効率よく作業ができるよう工夫しました。従業員の働き方には常に目を配っています。

── 企業の個性が出てきた。

渡辺 合併は時間や知識をお金で買うようなものです。私は、知識は買うものではなく自分たちで作るのだと考えていますが、そのことを従業員も理解したからこそ、自らの意志で勉強を始めたのだと思います。従業員と経営陣が考えを共有することが大事です。営業利益率は1%でまだ低いのですが、今年度の計画は達成できる見込みですし、会社の次なる価値を探そうと従業員も一緒に努力しています。

 

 ◇新薬開発に投資

 

 オーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品)を開発する製薬会社に投資している。患者数は少ないが、治療法の確立が待たれている難病のための薬で、一定の基準を満たし、国の指定が受けられれば、他の薬に優先して承認審査が行われる。

 

── なぜオーファン・ドラッグを対象に?

渡辺 単価は高いが利益率が低いため、製薬会社は開発しにくいのですが、患者さんは薬を待たれています。当社の流通インフラに乗せれば、流通コストは抑えられます。新薬が開発・承認されたら取り扱いは当社を優先してもらうという契約を結び製薬会社に出資しました。現在7品目ですが、16年までに17品目に増やします。1品目の売り上げは小さいものの薬を待つ患者さんのためにオーファン・ドラッグを世に出していきたい。これも医薬品卸の務めです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 寝ずに働く猛烈社員。当時、部下に「2年間一緒に頑張りましたが、3年は無理です」と言われたことが忘れられません。今、その反省から従業員の負担を減らそうと努力しています。

Q 最近買ったもの

A 時計。毎日、気分で取り替えます。おしゃれは自己研さんの一つの方法。あと、森山良子さんのCD。

Q 休日の過ごし方

A 本を読みながら入浴、写経をしてジムへ。孫と遊んで家族で食事。会社では責任ある立場で常に緊張しているので、疲れを癒やしてくれる家族とゆっくりします。

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 ■人物略歴

 ◇わたなべ・しゅういち

 兵庫県出身。1975年法政大学法学部卒業後、三菱重工業勤務を経てクラヤ薬品(現メディパルホールディングスの子会社メディセオ)入社。持ち株会社副社長などを経て2012年4月より現職。メディセオ会長兼務。61歳。