2014年

1月

28日

特集:不動産・節税と投資 2014年1月28日特大号

 ◇個人の“1棟買い”増える 相続増税も富裕層を後押し

桐山友一
(編集部)

 「投資用としてマンション1棟を購入したいが、いい物件がないか探してもらえないか」──。不動産仲介の東急リバブル(東京)には今、個人の資産家からの問い合わせが絶えない。同社コンサルティング営業部は富裕層向けに、ワンルームや1DKの1棟マンションを中心として仲介するが、昨年の春先に比べ2億~3億円の物件への問い合わせ件数が5割以上増加した。

 転機となったのはアベノミクスによる景気の好転だ。ただ、多額の資産を株式に投資するのはリスクが高すぎ、債券は利回りが低水準。同営業部の清水哲夫部長は「ミドルリスク・ミドルリターンの投資先として不動産が着目されている」と話す。また、2015年からの相続増税も富裕層の不動産投資の背中を押す。賃貸住宅に投資すれば、借り主の借地権・借家権が発生する分などで相続税の評価額を下げられるからだ。
 より少額な1部屋単位で投資できるマンションの人気も高まっている。投資用不動産の情報サイト「楽(らく)待(まち)」では、ワンルームなど中古の区分所有マンションへの問い合わせ件数が昨年12月、1604件と前年同月比9割増。08年のリーマン・ショック直後に比べて価格が2~3割上昇している物件もあるといい、楽待を運営するファーストロジック(東京)の坂口直大社長は「投資家の間に値上がり期待が強い」と話す。

 ◇REITの小口化続々

 賃料収入の増加などを見込み、J-REIT(日本版不動産投資信託)など大口の投資家の不動産売買も活発化している。不動産専門のシンクタンク、都市未来総合研究所(東京)によると、13年度上期(4~9月)のJ-REITや上場企業の国内不動産取引額は、1兆9540億円と前年同期に比べ2・3倍に増加した。
 なかでも、J-REITは昨年、全体で過去最高となる約2・2兆円もの不動産を取得。いまや国内最大の不動産の買い手だ。今年1月から始まった個人向けの「少額投資非課税制度」(NISA)を意識し、「投資口を少額に分割する動きが相次いでいる」(みずほ証券の石澤卓志チーフ不動産アナリスト)。今年に入ってすでに「日本ビルファンド投資法人」など4銘柄が投資口を分割。3月までにさらに5銘柄が分割を予定する。
 今後の日本の不動産市況を展望するうえで、都市未来総合研究所の予想が興味深い。03年以降の東京都区部について地価と物価の関係を分析すると、相関係数(1に近いほど相関が高い)は0・84と高い数値を示した。一方、異次元緩和によってデフレ脱却を目指す日銀は、消費者物価指数(生鮮食品を除く)の見通しとして、14年度に3・3%、15年度は2・6%の上昇率を予想する。
 この物価上昇率が実現すると仮定して地価の上昇率を試算したところ、14年度に23%、15年度は19%上昇するとの結果が出た。同研究所の平山重雄主席研究員は「好況のもとで物価が上昇するなどさまざまな前提を置いたうえではあるが、日銀の目指すインフレが実現すれば、リーマン・ショック前の地価上昇率を上回る可能性もある」と指摘する。
 不動産投資は短期的な値上がりではなく、あくまで安定した高水準の運用利回りを目指すものだが、投資のタイミングや投資対象の選択などを考えるよい時期に入っているようだ。