2014年

1月

28日

経営者:編集長インタビュー 林高生 エイチーム社長 2014年1月28日特大号

 ◇スマホ向け大型ゲームで世界を目指す

 名古屋に本社を置くエイチームは、スマートフォン向けゲームの開発大手である一方、引っ越し業者や結婚式場探し、中古車査定などの情報サイトも手掛ける。2013年7月期は、ゲーム「ダークサマナー」が700万以上のダウンロードを記録し、売上高が前期比72%増の約109億円、営業利益が同60%増の約17億円だった。

── ここ数年の急成長をどう分析していますか。
林 ケータイ(従来型携帯電話)向けのゲームで成長してきましたが、スマホが普及し始めた頃に、ケータイの時代が今後も続くという淡い期待を捨てました。いち早く環境の変化を受け入れたことが大きいと思います。自分や他人の失敗例を検討すると、自分のできること、得意なことをやっている。そうではなくて、まず市場で何が求められているかを見極め、次に誰と組めばそれが実現できるかを考える。そういうふうに頭を切り替えてから、ビジネスが非常にうまくいくようになりました。
── 無料のスマホゲームでどう収益を確保しているのですか。
林 基本は利用者への課金です。広告はユーザーが嫌がるし、ゲームの世界観が崩れるので入れません。100人中およそ3人は有料アイテムを購入して遊んでくれます。ゲームは基本的に1日に進める量が決まっているので、100円から数千円のアイテムを買うことで、より先に進めるようにするという課金方法もあります。また、ゲーム内で定期的にイベントをして、集中的に課金する機会をつくることもあります。
 以前、「脱出ゲーム」というゲームを提供していました。基本は無料ですが、85円払うと脱出するためのヒントが得られる。しかし、インターネットにその答えを載せられて運営を続けられなくなりました。誰かがおカネを負担してくれないと、ゲームを提供し続けることができないことを身をもって体験しました。
── ゲーム作りの基本方針は?
林 年に4~6本、1本当たり約1億~3億円の開発費で大型作品を製作しています。10年頃までは小さなゲームをたくさん出していましたが失敗作も多かった。その頃iモードなどの公式サイトからグリーなどのプラットフォームへ、ゲームを出す場所が変わったこともあり、ユーザーを多く集められるゲーム作りが必要になりました。そこで事業部管理からゲームごとのプロジェクト制に変えて品質や収支の管理を徹底しました。それでヒットしたのが「AKB48ステージファイター」です。

 ◇LINE、グリーと提携

 11年8月にグリーと業務提携。「AKB48~」と「NARUTO忍マスターズ」の2作を提供。昨年12月には韓国最大のネットサービス会社ネイバー(旧NHN)から分割したNHNエンターテインメントと提携。ネイバーの日本法人で3億人の利用者がいる「LINE」向けにゲームを製作する。

── LINE向けのゲームは何本作りますか。
林 数本の予定です。自社製作では、麻雀や競馬、ダークファンタジーなど、特定のゲームが好きな層を狙うことが多いですが、LINE向けでは初心者も楽しめるカジュアルゲームを開発する予定です。また、NHNの協力で、韓国など海外市場にも積極的に進出していきます。
── 韓国以外の海外戦略は。
林 一つは、これまで通りアップルやグーグルの配信サイトを通じて、北米を中心に作品を出していきます。あと一つはいずれ中国にも進出したい。現在の国別売上比率は「国内1:海外1」ですが、早い段階で「国内1:北米1:アジア1」にしたいと思っています。
── 「引越し侍」や「すぐ婚navi」など情報サイトを運営するライフスタイルサポート事業は?
林 これらは「市場の横展開」という発想で広げています。他社が手掛けるホテル予約サイトの「空いていれば安くなる」という法則にヒントを得て、引っ越し業者の見積もりサイトをつくりました。結婚式場の比較サイトも同じです。ゲーム事業は負けもあるけれどヒット作が出れば大きな利益を狙える。情報サイトは比較的安定した事業なので、二つの分野があることは、会社の継続のうえではいいことです。

 ◇中卒から東証1部社長

 9歳で父親を亡くし中学卒業後さまざまなアルバイトで家計を助けた。その後プログラミングのスキルを生かしてソフト開発会社を起こす。

── 過去には社員が重要なプログラムを盗んだこともあったとか。
林 苦労したのは、資金繰りより人です。その経験から、才能があっても自己中心的な人は採用しないようにしています。「みんなで幸せになる」や「100年続く会社」という経営理念も経験からくるものです。
 コネやおカネ、学歴がなくても、努力をすれば誰にでもチャンスが平等にあることを見せたいと思って、これまでやってきました。
── 本社を名古屋に置く理由は?
林 メリットはたくさんあります。例えばベンチャー企業の出身者で上場までの業務を経験したような人がUターンし名古屋圏で仕事しないといけない時、当社を高確率で選んでくれます。また、定着率も高いです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=谷口健・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 下請けで苦しんでいる時代から自社開発への転換期でした。本をたくさん読み、猛烈に働きました。「みんなで幸せになれる会社」という経営理念を決め、経営者になった時でした。
Q 最近買ったもの
A レクサス(トヨタ自動車の高級車)。日本の最高技術の結晶ですので、私には買う義務があると思いました。
Q 休日の過ごし方
A 家族サービスとゴルフです。子供が3人いて、最近は公園で野球をするのが定番です。
………………………………………………………………………………………………………
 ■人物略歴
 ◇はやし・たかお
 1971年岐阜県生まれ。岐阜県の中学校を卒業後、学習塾経営やプログラミングのアルバイトを経て、97年にソフトウエア受託開発の「エイチーム」創業。04年に株式会社に組織変更。12年4月東証マザーズに上場。12年11月に東証1部。42歳。