2014年

2月

04日

ワシントンDC 2014年2月4日号

 

 ◇有力議員が見直しを提言 議論高まる原油輸出解禁

 

須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 年明け間もない1月7日、リサ・マカウスキ上院議員が米国のエネルギー輸出に関する自身の提言をまとめたリポートを発表した。これがいま話題を呼んでいる。マカウスキ議員はアラスカ州から選出された初の共和党所属女性上院議員。現在、上院のエネルギー天然資源委員会の共和党の筆頭委員を務める有力者だ。

 リポートで同議員は、米国の石炭、天然ガス、原油、石油製品等のエネルギー生産量と輸出量はかつてない水準に達しており、その現状に合わせて、エネルギー輸出にかかる規制体系を「21世紀型」に見直し、輸出を促進するよう主張した。なかでも注目されるのは、米国産の原油輸出を原則禁止している現行制度の見直しを強く求めている点だ。現在、米国では、1975年のエネルギー政策及び保存法が大統領に国内産原油の輸出を制限するよう規定しており、原油輸出は実質的に禁止されている状況にある。

 これに対しマカウスキ議員は、米国の原油生産量が過去20年来で最高水準に達し、2019年まで増加し続ける見込みの中で、原油の禁輸措置を継続すれば、市場をゆがめ、国内の原油生産を阻害しかねないと主張。オバマ政権に「時代遅れ」の現行規制を改め、米国内で精製しきれない原油の輸出を許可するよう求め、政権側の同意が得られないようであれば、上院で原油輸出解禁の法案を提出する意向を示している。

 

 ◇視野に入る中間選挙

 

 主張の背景にあるのは、シェール革命によるシェールオイル(非在来型原油)の生産増加だ。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は、昨年12月に発表した14年版の米国年次エネルギー見通し速報版で、米国の原油生産量は19年まで増え続け日量960万バレルに達すると予想している。

 これは、13年版のEIA予想値から22%も上振れしており、70年に記録した米国の過去最高の原油生産量に匹敵する水準だ。生産量増加の主要因は、シェールオイルの生産の増加であるとEIAは分析している。

 マカウスキ議員は、リポートの発表に合わせて、米国の有力シンクタンクであるブルッキングス研究所で講演、自身の提言を国内外に発信した。現職上院議員の表立った輸出解禁の主張は、議会や政府、関連業界に影響を与えそうだ。

 同議員がリポートを発表した同日には、米国石油協会(API)のジェラルド会長がワシントンDCで講演。原油禁輸措置を見直すべきとの見解を示し、今秋の中間選挙に向けて、石油・ガスの増産でエネルギー自給が進んでいる現状に見合ったエネルギー政策の実現を求めていく考えを表明した。同協会は米国最大の石油団体で、政府への要望など幅広い活動を行っている。ジェラルド会長の講演は、マカウスキ議員のリポート公表に呼応した動きに見える。

 米国産原油の輸出政策を巡る議論は、ワシントンで静かな高まりを見せていたとはいえ、これまでは議会関係者に対する水面下での働きかけなどにとどまっている。これが中間選挙を視野に入れた表立った議論へと発展しつつある。

 エネルギー省のモニツ長官も昨年12月に行われた講演で、今日の米国のエネルギー事情は70年代とは異なっているとして、現状に照らして輸出政策の見直しを検討することに理解を示しており、今後、原油輸出解禁の議論が加速する可能性がある。米国内では依然として反対論も根強く、議論の方向性は定まっていないが、14年が米国産原油輸出政策の転換の年となってもおかしくはない。