2014年

2月

04日

特集:誰も書かない日韓関係 2014年2月4日号

 ◇借金漬け家計で始まる「不動産神話」の崩壊

濱條元保
(編集部)

 家計債務の増大が最大のリスク──。韓国経済を分析する専門家が口を揃(そろ)える。

 ◇「ハウスプア」の急増

 韓国の家計債務は、2000年代に入り右肩上がりで上昇を続けている。03年に472兆ウォン(47兆円)だった家計債務は、13年9月には992兆ウォンへと2倍に膨れ上がった。対可処分所得比率でみても、03年時点での106・7%から12年には136・3%に上昇した。

 増加の要因は、①実需に加えて投資目的の住宅ローン増加、②自営業者の借り入れ増、③低中所得層による教育資金や生活資金補填(ほてん)のための借金──という韓国経済が抱える構造問題に起因する。
 日本総合研究所の向山英彦上席主任研究員は「中産階級以上は、マンション価格の上昇に伴い投資用マンションの購入のための住宅ローンが急増した。また、韓国では、大企業を退職した場合、中小企業への再就職が難しく、やむなく自営業を始め、その開業資金の借り入れが増える傾向にある。低所得層が、生活資金を補うための借金も家計債務増大をもたらした」と分析する。
 家計債務が増大する中で、最も警戒されているのが不動産価格の下落である。家計債務に占める住宅ローンは約4割の400兆ウォンだが、その他ローンに含まれる530兆ウォンには、住宅担保ローンがかなり含まれている。つまり、広義では家計債務の大半は住宅ローンとみなせるわけだ。
 韓国の住宅ローンの特徴として短期一括返済が多いことが挙げられる。返済資金捻出のための売却を想定していた場合、市況悪化で売れなかったり、売却損が発生してしまう。
 こうした返済負担の増大が、家計を圧迫して消費を冷やす悪循環となりかねない。現にリストラで失業してやむなく自営業に転身、収入減と住宅ローン返済の負担が重なり、生活資金確保のために消費者ローンを借りるという世帯が増えている。不動産を取得したことによる「ハウスプア」だ。
 教育熱心な韓国では、教育資金も借金頼み。しかし、大学を卒業しても就職できず、親のすねをかじることで家計は苦しくなるという「借金漬け経済」が韓国を覆っている。
 韓国政府は、不動産市況悪化の悪影響を認識している。韓国では政府が住宅供給計画を策定し、低所得者層向け住宅の建設など供給面で介入するだけでなく、売却価格の上限規制を設けるなど価格形成面でも深く関与している。

 ◇円キャリーの巻き戻し

 00年代前半の不動産価格高騰時には、ニュータウン造成による供給強化やマンション分譲権の転売禁止などで沈静化に乗り出した。00年代半ばの高騰時にも不動産の譲渡所得税の引き上げなどで対応すると同時に住宅供給の強化を図ったところに、08年のリーマン・ショックが襲った。ソウル特別市の住宅価格は前年比でマイナス圏に落ち込んだ。
 12年7月に不動産取得税の引き下げ、昨年4月には、初めての住宅購入者には所得税を免除するなど政府は対策に乗り出した。ところが、従来のように不動産市況をコントロールできていない。昨年3月を底に下げ幅を縮小させているものの、まだ前年比マイナスのままだ。「ついに韓国の不動産神話も終わったか」。関係者はこの事実に衝撃を受けている。
 韓国では金利がゼロの円を借りて、ウォンに替えるという円キャリートレードがかなり行われている。不動産下落を契機に韓国経済が混乱すれば、円キャリートレードの巻き戻し(ウォン売り・円買い)が急激に進み、ウォン安・円高が進む。韓国の危機は対岸の火事ではない。