2014年

2月

04日

経営者:編集長インタビュー 中井加明三 野村不動産ホールディングス社長 2014年2月4日号

 

 ◇財務体質強化し大規模開発に挑む

 

 

── 2014年3月期(今期)はリーマン・ショック前の最高益に迫る勢いです。業績好調の要因は。

 

中井 金利の先高感、景気回復に伴う販売価格の上昇、そして消費増税という三つの要素によって住宅を買いたいという潜在需要が顕在化しました。

 

 消費増税については住宅ローン減税などの政策効果が効いているので、税率を5%に引き上げた1997年のような激しい駆け込み需要と反動減はありません。お客様もよく勉強されています。昨年9月に売り出した「富久クロス」(東京都新宿区)は6000万~7000万円が中心価格帯ですが、今年4月から住宅ローン減税の減税額が年間20万円から最大40万円に拡充されることを見越して、8%の消費税が適用される昨年10月以降に買われたお客様もいました。

 

── ということは、年度後半も好調を維持できそうですか。

 

中井 今期は6200戸の売り上げ計上を計画していますが、昨年12月までに95%以上が契約済みなので通期の目標に大きなブレはありません。来期は6500~7000戸の売り上げ計上を目指そうと動いています。

 ただ、建築費はかなり上昇してきています。当社の発注ベースの試算では、大震災直後に比べて20%以上上昇しています。人件費の高騰が要因です。

 

── 対策は。

 

中井 昨年4月に建設企画室を新設しました。ここが当社の開発案件の価格交渉を行う窓口になることでコストを抑えています。以前はプロジェクト単位で資材調達や価格交渉をしていましたが、これを建設企画室に集約しました。当社が発注するビルやマンションの向こう数年間の供給戸数をあらかじめゼネコンに伝えて価格交渉をします。その他、住宅設備メーカーから直接購入したり、規格品にしたりと建築費を安くするためにさまざまな工夫をしています。

 

 ◇マンション供給首位

 

 13年3月、野村ホールディングス(HD)は野村不動産HDの一部株式を売却。野村不動産HDは連結子会社から持ち分法適用会社となった。これに伴い経営の自由度は上がった。

 

── 12年に発表した中長期経営計画は財務体質の強化への強いこだわりを感じる内容です。

 

中井 「16年3月期までに自己資本比率30%」を目標にしたのは、将来の大規模開発に備えるためです。今は思い切った投資のための準備をしているわけです。

 中長期経営計画を策定した12年10月は、日本経済の先行きに悲観的な見通しが強まっていた陰の極。したがって計画自体は堅めの内容です。しかし、その後に状況が大きく変わりました。16年3月期までに営業利益650億円という目標は2期前倒しで今期達成できる見込みです。思い切った投資に挑戦する時期も、当初の想定より前倒しする可能性が出てきました。

 とはいえ、他の大手デベロッパーに比べると財務体質で劣るという弱みはあります。しかし、それが「プラウド」というマンションブランドを育てた面もあります。

 

── 弱みを強みに変えたとは。

 

中井 当社の財務体質では、とにかく資金を回転させなければ次の投資ができません。例えば、「即日完売」は、大手デベロッパーでは価格設定が甘い、もっと高く売れるだろうと怒られることもありますが、当社ではベストエフォート(最善の努力)。資産を寝かせておくわけにはいかないので、社内で決めた利益水準をクリアしていれば早く売った方がいい。

 良いものをつくって、早く売るにはどうすればいいのか。必死になって知恵を出しあって品質を磨いたからこそ、12年度に全国のマンション供給戸数で首位に立てました。

 

── 人口減少が進行する中、住宅市場も頭打ちとの見方あります。

 

中井 首都圏の世帯数は向こう10年間は減少せず、年間5万戸前後のマンション供給が続くと見ています。そこで10%くらいのシェアを取っていきたい。大阪、名古屋、仙台でも一定規模で供給していきます。

 約100万戸あるといわれている旧耐震のマンションの建て替えも課題です。資金の問題や居住者の議決権の問題をクリアするのには時間がかかります。今年販売する「桜上水ガーデンズ」(東京都世田谷区)は10年以上かかりました。規制緩和を進める必要があります。

 

── 今後の見通しは。

 

中井 当社は住宅のウエートが高いと思われていますが、今期の営業利益の構成は住宅が4割強、賃貸が3割、不動産仲介・管理や資産運用などのノンアセットビジネスが2・5割くらいあります。これを将来的には3分の1ずつにしたい。

 資産運用では13年に新しいREIT(不動産投資信託)を上場して3銘柄になり、オフィスビル、住宅、商業・物流と既存の分野は全て網羅できる体制ができました。しっかり運用をしていけばまだまだ伸びる余地があります。

 海外は中国と東南アジアを中心にチャンスがあれば出ていきたい。不動産は情報力が勝負の典型的なリージョナル(地域的)ビジネス。現地のパートナーをしっかり選んで、プロジェクト単位で吟味していきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 前半は池袋支店の支店長、後半は人事課長をやりました。人の大切さ、マネジメントの重要性など、今につながるベースを学びました。

Q 最近買ったもの

A アイアンセット。スランプになるとクラブを買う癖がありまして(笑)。ソール(底部)の太い、振りぬきやすいものを選びました。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフがない時はウオーキングをしています。自宅の周辺を1時間で6キロくらい歩きます。

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 ■人物略歴

 ◇なかい・かめぞう

 兵庫県出身。1974年関西学院大学商学部卒業後、野村証券入社。95年同社取締役、2011年6月野村不動産ホールディングス代表取締役社長。12年5月から社長執行役員を兼任。63歳。