2014年

2月

11日

経営者:編集長インタビュー 信木明 東洋ゴム工業社長 2014年2月11日特大号

 ◇大型タイヤで種目別優勝狙う

 

 タイヤ業界国内4位の東洋ゴム工業。グローバル展開で上位3社に後れを取っていたが、この3~4年、海外展開を積極化。SUV(多目的スポーツ車)やライトトラックに装着する大型タイヤで巻き返しを図っている。

 

── タイヤ業界のトレンドは。

信木 自動車販売が好調なのは米国だけで日本はほぼ横ばい、欧州は底は打ったとはいえ底をはったまま。中国をはじめ新興市場も全体的に弱い状況です。

 そういうなかで、新興国のタイヤメーカーが米国に進出したり輸出を増やしたりして、好調な米国でも一般自動車用タイヤは価格競争が厳しくなっています。一方で、我々が得意とするSUVやライトトラック向け大型タイヤは、プレーヤー(メーカー)が少なく、それほど値崩れもしていません。

 米国の富裕層には、欧州や日本の高級車とSUVに人気があり、米国市場と大型タイヤに強い当社にはフォローの風が吹いています。

 

 2015年12月期を最終年度とする中期経営計画(5カ年)では海外生産比率を現状の2割から4割にする方針。そのために普通自動車用タイヤ換算で日本で2600万本、アジアで1250万本、北米で650万本の供給体制を目指すが、すでに北米市場では650万本体制を整え、900万本へ計画を上方修正した。

 

── 北米でどう戦いますか。

 

信木 「TOYO TIRES」と「NITTO」(ニットー)の二つのブランドを展開していて、北米ではともにブランド力があります。なかでも北米のNITTOは、グローバルで見ても利益頭(がしら)です。

 当社の企業規模だと総合優勝は狙えない。SUV向けなどの種目別で頑張るつもりです。

 

── NITTOはそんなに強い?

 

信木 一般的な乗用車市場や新興国では、新車についていたタイヤをそのまま使い、交換時にも同じブランドを選ぶ傾向がありますが、米国の富裕層やクルマ好きは、クルマを買うと好みのタイヤに交換する人も多い。そういう層から選ばれるのがNITTOです。

 シェール革命によって米国ではエネルギーコストが格段に下がると予想され、化学業界をはじめ製造業の本国回帰が始まっています。景気もいい。中期計画をつくった当初より、北米シフトを強めています。

 

 ◇グローバル体制確立

 

── 一方、マレーシアでも昨年5月に新工場が稼働し、アジアでの生産体制も整ってきました。

 

信木 10年にマレーシアのタイヤメーカー、シルバーストーンを買収し、そこで年間400万本生産しています。その近接地に当社の最新鋭の技術を導入した新工場をつくりました。ここで当面は250万本をつくり、来年までには500万本体制にする予定です。

 グローバルな供給体制が整っていなかったこれまでは、アジア市場は、当社にとってバッファー的な市場でした。日本や北米で生産・販売をして、余裕があるときはアジアにも回していたが、安定供給はできない。そういう状況でした。しかし、マレーシアで生産体制が確立し、中国でも11年以降、2工場で250万本を生産する体制が整いました。今後は新車向け、補修用それぞれに適した商品内容や価格について、細かな成長戦略を練ることが可能となります。当社の主力は採算の良い補修用ですが、新車メーカー向けにも納入していくつもりです。

 

── 国内はどう攻めますか。

 

信木 ここ数年、販売先の選別を進め、収益体質も強くなってきました。今後も商品力とコスト競争力をさらに強化していきます。宮城と三重の2工場で2600万本の生産をしていますが、マレーシアでの生産をもっと増やして日本に輸出するという選択肢もある。国内では軽自動車のウエートが高まっているので、軽のなかでもより高価格・高スペックなクルマ向けに選ばれるように商品開発をする必要があります。

 

── 新興国メーカーとの競争も熾烈になっています。

 

信木 韓国や中国は単価の安いタイヤを大量に売る戦略で攻めています。非常に脅威です。彼らの土俵で戦うと消耗するだけなので、技術とデザイン性に磨きをかけ、ブランド力で優るしかありません。

 

── 社長に就任して約1年。どんな会社にしますか。

 

信木 会社は成長しないとダメです。人も育たないし、勉強する場もない。だからとにかく上を目指せと言っています。他社との競争で勝つのも大事ですが、売上高6000億円といった目標は何があっても達成するという強い気持ちが必要。そのためには仕事のやり方も変えなくてはいけない。新商品を出したらその結果を技術、営業でしっかりフォローする。海外部門は、今までより長く1カ所に駐在させスペシャリストを養成します。

 

── 大阪から東京に本社を移す会社が多いなか、来年8月、本社を兵庫県伊丹市の研究拠点に移します。

 

信木 逆に東京に行くメリットは何かと問いたい。分散するより1カ所にかたまっているほうが情報も共有できる。結果よければすべてよし、にしますよ。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30歳で米国(経理)から帰ってきて、自動車部品の企画へ。その後財務部に移り、運用をしていました。自動車業界や金融界の方々ともお付き合いができて勉強になりました。

Q 最近買ったもの

A ゴルフのドライバーとキンドル(電子書籍端末)。本が増えすぎると妻に嫌がられるので、キンドルで読むようになりました。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフや読書。妻に付き合って宝塚歌劇の観劇やお茶会にも行きます。

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 ■人物略歴

 ◇のぶき・あきら

 広島県出身。1978年大阪市立大学経済学部卒業、東洋ゴム工業入社。2007年執行役員タイヤカンパニー国内販社統合プロジェクト担当。09年6月取締役常務執行役員企画本部長、経営企画部長。13年3月から現職。59歳。