2014年

2月

18日

ワシントンDC 2014年2月18日号

 ◇政権6年目は「鬼門」の年 強行突破狙うオバマ大統領

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 2期目のオバマ政権にとって11月の中間選挙は「最後の審判」となる。6年間の政権の信任投票と同時に、残り2年にかける「遺産作り」の成否を占うからだ。オバマ大統領は1月28日の一般教書演説で、機能不全の議会を「スルー」し、大統領令で政策実現を図る単独行動姿勢を鮮明にする危険な賭けに出た。だが、ソデにされた共和党の攻撃が激化するのは必至だ。

「私はじっとしていない」。オバマ氏は一般教書演説で、停滞したまま動かない議会へのいら立ちを隠さなかった。昨年は議会の反発や対立で、世論の支持を受けた銃規制強化法案が廃案に。新たな戦端を開く決断だったシリア攻撃も断念し、新予算が間に合わず17年ぶりに政府機関が一部閉鎖の事態に陥った。

 党利党略に終始する議会を世論も見捨てた感がある。支持率は13%と史上最低レベルだ。一方、オバマ氏の支持率も40%台前半と6年目のブッシュ前大統領に並ぶ低水準。国民の政治不信は深刻だ。オバマ氏が表明した議会との「決別」は、大統領権限を最大限に活用して迅速な政策実現を図り、目に見える成果を出す狙いがあると同時に、抗争をたくみに避け、支持率低下を阻止したいというダメージ・コントロールの側面もある。

 ただ、「議会軽視」とも映るオバマ氏の強硬路線は、かつて「希望」を掲げ、国民の心をとらえたあのオバマ氏とは違う姿だ。「民主党も共和党もない。あるのは一つの米国だ」という超党派の理想を自ら放棄したと言え、現実路線の加速を一段と印象付けた。

 

 ◇岐路となる移民制度改革

 

 2期務めた過去の政権にとって、最終コーナーに差し掛かる「6年目」はまさに鬼門。「波乱」に見舞われる大統領も少なくない。最近の2政権の6年目も激しい逆風にさらされた。

 クリントン大統領は1998年1月、ホワイトハウス実習生との「不適切な性的関係」が暴露され、議会による大統領弾劾訴追にまで発展。ブッシュ政権では2006年、開戦から3年となったイラク戦争の泥沼化が加速。戦争反対の世論が6割に上り、反戦運動が高まった。

 だが、中間選挙の結果は明暗を分けた。クリントン政権の与党・民主党は好調な経済や高い世論の支持に支えられ善戦。一方、ブッシュ政権は惨敗し、共和党の上下両院支配が12年ぶりに崩れた。

 いまの議会は上下両院で多数派が異なる戦後2回目の「ねじれ」(上院は与党・民主党、下院は野党・共和党が多数派)下にあり、政策停滞の一因になっている。しかし、同じ「ねじれ」ながら高い支持率を誇ったレーガン政権(上院は与党・共和党、下院は野党・民主党が多数派)では6年目の86年、税制改革や移民制度改革など与野党が対立する難題が次々に実現し「ねじれ下の奇跡」(『ニューヨーク・タイムズ』)と言われた。

 オバマ政権は支持率を見る限り、ブッシュ政権の「悪夢」がよぎる。イラク戦争のような逆風はないが、トラブル続きの医療保険改革(オバマケア)への世論の支持は低く、共和党から早々に「失敗」の烙印を押された。また、クリントン氏のようなスキャンダルはないが、政権人気を高めるほどまで景気が回復しているとも言えない。

 一方、一般教書演説で強調した移民制度改革が実現すれば「レーガン・パターン」も可能だ。不法移民が多い中南米系(ヒスパニック)の支持を広げたい共和党は歩み寄りの姿勢を見せており、チャンスは残る。低支持率、議会の圧力と「綱渡り」の政権運営を強いられるオバマ氏は、6年目の鬼門を突破できるか。