2014年

2月

18日

特集:FRBと日銀 次の一手 2014年2月18日号

 ◇緩和縮小に着手したFRB 資産購入をやめられない日銀

藤枝克治/望月麻紀
(編集部)

 ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の就任式が行われた2月3日、ニューヨーク・ダウ平均株価が急落し、それを受けて日本株をはじめ世界の主要株価も大幅に下落した。過去2代のグリーンスパン、バーナンキ両氏の就任時には、株式市場はご祝儀相場に沸いたが、イエレン新体制は市場の重苦しいムードの中、発足した。

 直接の引き金は、この日発表された米国の製造業の景気動向を示すISM製造業景気指数。1月は前月比5・2ポイント低下の51・3となり、景気拡大と後退の境目となる50に近づいた。歴史的な大寒波の影響が大きいと言われているが、新車自動車販売や新築住宅販売などの指標でも、市場予測を下回る値が公表され、「寒波以外の要因による悪化ではないかと、市場が米国経済の先行き不透明感を強め、過剰反応する傾向がある」(桂畑誠治・第一生命経済研究所主任エコノミスト)。
 根底にあるのは、米国が1月から始めた量的緩和(QE)の縮小だ。FRBは月額850億ドルに達していた資産購入額を、100億ドル削減し、2月も更に100億ドル減らすことを1月末に決めた。予想を下回る経済指標に、購入削減を続けられるほど米国経済は回復したのかと市場は懐疑的な見方を強めた。
 新興国経済にはより直接的な影響を及ぼしている。米国の緩和縮小で、流入していた緩和マネーが逆流するとの懸念から、ブラジルなど新興国の通貨が下落。投資マネーの避難通貨として円が買われ、円高・ドル安となり、株式市場に波及している。
 だが、「新興国経済の停滞が米国の実体経済を脅かさない限り、FRBが出口を模索する姿勢に変わりはない」との見方が根強い。年内に量的緩和終了、利上げは15年以降がメインシナリオだ。

 ◇資産バブル、インフレ懸念

 FRBが大胆な金融緩和に踏み切ったのは08年のリーマン・ショック後。ゼロ金利政策の後、3回にわたる量的緩和策で市場に大量の資金を供給し、米国経済を刺激してきた。その結果、FRBの資産規模はリーマン・ショック前の約4倍に膨れ上がり、GDPの2割に達している。このまま緩和を続ければ、資産バブルやインフレの懸念、さらにはドルに対する信認が揺らぎかねないという危機感がある。だからこそ、世界の金融市場が混乱しても緩和縮小に積極的な姿勢を取る。
 一方、日本はどうか。バブル崩壊後の日銀はどこよりも早くゼロ金利と量的緩和に踏み切ったが、出口はまったく見えない。むしろ昨年就任した黒田東彦総裁の下、デフレ脱却を旗印に「異次元緩和」に突入した。日銀の資産規模はすでにGDPの4割に達するが、約束の「2年で2%」のインフレ目標を達成できると予想するエコノミストはほとんどいない。それどころか、4月以降はさらなる追加緩和に追い込まれるとの見方が出ている。
 日本の危機が一層深刻なのは米国以上の巨額の財政赤字を抱えているからだ。田中隆之専修大教授は「日本は13年末現在、政府債務残高がGDPの2倍、日銀の国債保有残高がGDP比38%で、いずれの比率も米国の2倍。資産購入をやめると金利が上昇し、財政再建できなくなるため、出口を抜け出せない可能性が高い」と指摘する。
 しかも、米国が緩和縮小を始めたことで、米国の長期金利が上昇し、それに合わせて日本の長期金利も上がる可能性が高まっている。
 世界の中央銀行は米欧日を中心に大緩和競争を繰り広げてきた。欧州中央銀行(ECB)も南欧諸国の債務危機への対応で金融緩和を続けている。5年を経て、時代は緩和縮小へと大きく転換しようしている。FRBが一歩先行し、金融政策の正常化へ向けて自国の利益を優先するなか、日銀は後を追うことができるのか。道筋は全く見えていない。