2014年

2月

25日

経営者:編集長インタビュー 池田元英 エナリス社長 2014年2月25日特大号

 ◇電力取引、需給管理のパイオニア

── 会社設立の経緯を教えてください。

池田 銀行勤めの後、一時、政治家を目指しました。神奈川県議会選挙で落選。金融の世界に戻り、金融機関相互の取引を仲介する短資会社に就職しました。米・ニューヨーク支店で間近で見聞きした電力取引を、日本でも広めようと社内ベンチャーを設立しました。そこで電力の取引仲介業者を目指しましたが、電力を供給する電力小売業者(新電力、PPS)が少なく、自らPPSとして参入しました。

 立ち上げた会社の顧客だった松下電器産業(パナソニック)に移り、需給管理による電力コスト削減を手掛けた。この経験をベースに2004年に創業した。新電力から工場の余剰電力や自然エネルギー等の卸電力を仕入れ、地域の大手電力会社の送電網を通じて販売するPPSの黒衣としての業務代行業から始め、現在は顧客企業約800社の電力需給管理が事業の柱。太陽光やバイオマスなどの発電事業も行っている。

 ◇電気の三つの価値

── 需給管理とは具体的に何をするのですか。

池田 需要予測に基づき、複数の電力会社から時間帯を分けて電気を購入します。需給管理の目的は経済性だけではありません。電気には経済性、環境性、社会的合理性の三つの評価軸があると考えています。たとえば、電気のトレーサビリティー(流通経路)を生かし、環境性が高い水力や風力発電でつくった電気で化粧品を製造・販売したり、地元で発電した電気を地産地消したりして、経済合理性以上の価値を提供することも可能です。

── 顧客の業種は?

池田 メーカーや金融機関、飲食店チェーンなど業種は多様です。

── 家庭向けは?

池田 個人向けはこれからですが、エネルギー管理システム(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム、HEMS)をマンション単位で一括受託したり、マンションデベロッパーに当社のシステムを販売しています。このHEMS事業に力を入れています。

 HEMSは 家庭用エネルギー管理システム。太陽光発電量や電力使用量、売買電の状況や料金などを一元管理して、モニターに表示する。

──家電メーカーも力を入れています。

池田 システム普及数は全国で10万件近くまで増えましたが、計測できる家電がまだ少なく、ほとんどが太陽光発電の計測用として使われているにすぎません。そこで当社のHEMSは、赤外線家電コントローラー機能を搭載しました。HEMSのネットワークに接続できない家電でも、スマートフォンやパソコンを使って、HEMS経由で家電の赤外線リモコンを操作することができます。

 昨年10月、東京証券取引所のマザーズ市場に上場。13年12月期の売り上げは事業所向け省エネルギーシステムが前期比2倍に増え、全体でも倍増の101億円だった。

── 上場で調達した資金は何に使いますか。

池田 14億円弱調達しましたが、一部を発電所とシステム投資に活用しました。

── 今後の目標は。

池田 長期的には、20年までに売上高は1兆円を超えなくてはと思っています。現在、電力需給管理を請け負っている企業の電気購入額は単純合計で2500億円。管理だけでなく、この2500億円分の電力供給まで請け負うことを目指します。このようにして顧客を増やしていけば1兆円はすぐに達成できるはずです。

 ◇新電力を支援

── 課題は。

池田 PPSは昨年末現在で約140社設立されていますが、実際に稼働しているのは約30社しかありません。うち17社は委託を受けたことがあり、12社は今も顧客ですが、参入企業はまだまだ少ない。
 米国には小売事業者は3000社あり、ドイツでも1500社。日本は米国とドイツの間ぐらいの数の小売事業者があってもおかしくありません。日本には約1800自治体あり、地産地消を進めるためにも2000程度あってもよいでしょう。当社のように裏方で需給管理をしたいという会社はほとんどいないので、PPSが増えれば一定程度の需要が見込めると考えています。

── 「同時同量ルール」が参入障壁になっているのでは。

池田 PPSに課されている同時同量のルールは、30分ごとに電力の需要量と供給量の誤差を3%以内に収めるというものです。達成のために需給バランスを常に監視し、必要に応じて発電所の出力をコントロールしたり需要を調整しなければなりません。規模が小さい事業者には難しいルールです。その点、当社は、需要予測の立案や常時監視、緊急時の対応などの業務を24時間365日代行するほか、PPS同士が助け合う仕組みも整えています。
 現在、全原発が停止中です。需給管理で企業の電力コスト削減を支援していきます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 何をやっても注目されず、結果も出にくく、風雪に耐えていましたが、電力取引を仕事にすると決め「何十年でも待ってやる」と心に決めていました。
Q 最近買ったもの
A 二つ折りだった財布を長財布に替えました。ズボンのポケットに入れなくなったので傷みにくくなりました。
Q 休日の過ごし方
A 6歳の娘と遊ぶことが多いです。ピアノを教えるのが楽しみです。
………………………………………………………………………………………………………
 ■人物略歴
 ◇いけだ・もとひで
 東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、1992年東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。政治家秘書などを経て、日短エクスコ(現セントラル短資FX)入社。松下電器産業(現パナソニック)へ転籍。04年独立、08年1月より現職。44歳。