2014年

3月

04日

特集:負けない投信・ETF 2014年3月4日号

 ◇塩漬け投信が迎えた見直し機会 魅惑的な「テーマ」に要注意

 

桐山友一

(編集部)

 

「塩漬けの投資信託を持っている人は、手を挙げてみてください」──。横浜市のホテルで2月19日に開かれた「塩漬け投資信託を賢く見直すセミナー」。講師がこう呼びかけると、50~70代が中心の参加者36人のうち、半分以上が手を挙げた。

 塩漬けとは含み損を抱えた状態のこと。セミナーを主催する独立系ファイナンシャルプランナー会社「ガイア」の中桐啓貴社長は「塩漬け状態の投信を持つシニア層は依然として多いが、アベノミクスによる株高で見直しの機運が高まってきた」と話す。セミナーは2010年から毎月2、3回のペースで始めたが、昨年は月7、8回の開催に増加。同社への資産運用の相談件数も、昨年は約1200件と前年から5割増えたという。

 含み損となっている投信の多くは、リーマン・ショック(08年)前に買った外国債券・株式の毎月分配型や、その後に盛んに販売されたハイイールド債(投資適格未満の高利回り債券)の通貨選択型。通貨選択型では高金利のブラジル・レアル建てなどが一時、高い人気を集めたが、その後の通貨安などで運用成績を落としている。一方、日経平均株価は昨年、1972年以来となる56・7%もの上昇を記録。今年から「少額投資非課税制度」(NISA)が始まったこともあり、投資家が運用資産を見直したいと考えるのも自然な流れだ。

 

 ◇組み合わせで安定収益

 

 投資信託協会によると、昨年1年間の上場投資信託(ETF)を含む投資信託(追加型)への資金純流入額は、4兆5573億円と3年ぶりに増加した。中でも、投信の購入額が38兆9930億円と過去最高を記録した一方、解約額も34兆円を超えているのが特徴だ。投信の動向に詳しいドイチェ・アセット・マネジメントの藤原延介氏は「新規に投信を購入した投資家が多かった07年と異なり、投信を買い直す動きが広がっている」と話す。昨年末で上場株式や投資信託の配当・譲渡益にかかる税金を10%に優遇する税制が切れ、本来の20%に戻ったことも影響した。

 リーマン・ショックや欧州債務危機を経て、世界は今、米国を中心に景気の回復局面にある。日本も日銀の異次元緩和などによって、デフレ脱却が視野に入る。一方、00年代に高成長した新興国は、経常赤字などの構造問題を抱えて伸び悩む。投信評価会社モーニングスターの朝倉智也社長は「今後の金利上昇(債券価格は下落)も見据えれば、債券中心でよかったこれまでのポートフォリオ(資産配分)を見直し、先進国株式の比率を上げざるをえない」と話す。

 気になるのは、次にどんな投信を買えばいいのか。金融機関の店頭には今、北米のシェールガスや20年の東京五輪に絡む株式ファンドなど、今後の成長を期待させるさまざまなテーマに沿った商品が並ぶ。ただ、例えば、ある新興国のインフラ企業株式に投資するファンドは、07年の設定後、1年もたたずに設定時の基準価額1万円を割り込み、その後は現在まで一度も1万円を超えていない。設定時に購入した人は、ずっと含み損を抱えていることになる。

 楽天証券経済研究所のファンド・アナリスト、吉井崇裕氏は「“テーマ型”の投信は投資対象が限定されるため、価格変動のリスクも高い」と指摘。「資産運用の基本は特定の資産に偏らない長期の分散投資。市場の変化を一方向に予想する投資では、逆方向に触れた時の損失があまりに大きい」と強調する。吉井氏が提案するのは、複数の資産に分散しながら、異なる値動きをする投信の組み合わせだ。

 吉井氏が先進国の国債や各国の株式、債券、REIT(不動産投資信託)などに投資する「トレンド・アロケーション・オープン」(国際投信投資顧問)と、短期債を主な対象に先物や為替予約を使って運用する「野村グローバル・ロング・ショート」(野村アセットマネジメント)を1対1で組み合わせて試算すると、トレンド・アロケーション・オープンが設定された12年3月以降で年率4・08%の収益が得られた。吉井氏は「NISAでの安定運用に向いている」と話す。

 もうこれ以上、投信を塩漬けにしないために、周到な投信選びが重要だ。