2014年

3月

11日

特集:中国危機の真相 2014年3月11日号

 ◇理財商品は「時限爆弾」 景気悪化とドル急落リスク

 

濱條元保

(編集部)

 

 デフォルト(債務不履行)騒動に揺れる中国の理財商品は、一種の時限爆弾だ。償還が困難になった商品をデフォルトさせて、投資家に損失を負担させる強行着陸か、公的資金を投入して投資家を救済する軟着陸か、いずれでも世界経済に波及するリスクを抱える。

 ◇リーマン・ショック再来も

 

 銀行で販売される理財商品は2005年ごろに登場し、09年以降、急激に残高を積み上げた。12年末の7兆元から13年9月末時点で10兆元(170兆円)に増えている。銀行預金より高い年5%前後の利回りで、5万元(85万円)程度から購入でき、発行から3カ月や半年といった運用期間が短い点が特徴だ。

 また、信託会社が組成する信託商品も広義の理財商品とされ、購入は100万元(1700万円)からで、利回りは約10%。富裕層や国有企業の財テク商品となった。償還までは1~2年が一般的で、12年末の7・5兆元から13年9月末時点で10兆元に残高が増えた。

 理財商品と信託商品の合計20兆元(340兆円)は、銀行融資を受けられない中小企業の資金調達先として実体経済を支える一方で、地方政府のインフラ整備などにも使われている。こうした銀行の正規融資以外の金融システムはシャドーバンキング(影の銀行)と呼ばれ、中国経済で重要な役割を担う。

 1月末、中国工商銀行が11年1月に販売した総額30億元の信託商品が、元本のみ保証され、利払いができなくなった。投資先の石炭会社が破綻したためだ。ただし、1月中旬までは元本も保証されない完全なデフォルトが濃厚とされたが、結局、中国政府とみられる匿名の投資家によって元本は保証された。

 金融市場の改革を急ぐ中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁らは、個人投資家のモラルハザード(倫理観の欠如)を懸念して、不採算事業への投資に対しては、投資家に責任を取らせるべきだとの考えのようだ。しかし、デフォルトを強行した場合の混乱を政府は恐れている。理財商品は預金代わりの手軽な商品として市民に広く浸透しており、お金が返ってこなければ、銀行の窓口などに市民が殺到して暴動になりかねない。また、新たに発行する理財商品などに買い手が付かなくなり、シャドーバンキングが機能不全に陥る可能性がある。

 そうなれば中国国内の金融市場は大混乱となり、実体経済への波及も必至。世界貿易も低迷せざるを得ない。日米欧の先進国も無傷でいられないだろう。リーマン・ショックの再来である。

 

 ◇中国が米国債を売る時

 

 一方で、政府や銀行などが損失を補填(ほてん)すれば、混乱は避けられ、シャドーバンキングに資金繰りを依存する中小企業や地方政府のインフラ開発は継続が可能になる。その後は、銀行借り入れや社債発行による資金調達に切り替えて、シャドーバンキング依存をゆっくり低下させる軟着陸路線だ。

 だが、この前提となるのは政府による公的資金の投入である。その財源をどう確保するか。経済成長が減速する中での増税は難しい。国債発行という調達手段もあるが、5~10%の投資商品が投資家に選好される中で、それ以下の金利で調達できるか疑問である。残される手段の一つが、政府や銀行が保有する海外資産を売ることである。

 もし中国が保有する大量の海外の株式や債券などを売却すれば、理財商品による損失の穴埋めは十分に可能だろう。だが、その副作用は大きい。世界の金融市場で中国が売りに回れば、大幅な下落は避けられない。特に世界が懸念するのは、中国が大量に保有する米国債である。

「中国が理財商品への対応に、外貨準備に手を付ける」──市場関係者の間に、こんな臆測を呼んだ途端、米国債市場は動揺するだろう。中国の3・8兆ドル(380兆円)に上る外貨準備金の中で、換金しやすく潤沢に保有する資産が米国債だからだ。

 すでに「中国の米国債売り」を警戒する声がある。昨年12月末時点で世界最大の1兆2689億ドル(約130兆円)の米国債を保有しているが、前月に比べると、478億ドル減少しているからだ。いずれにせよ、中国が売りに動けば米国債とドルの急落を引き起こす可能性が高い。

 また、中国経済全体の資金繰りに注目すると、さらに不気味なデータがある。図2は国際決済銀行(BIS)の統計を基に、03年3月を100とし、その後の世界全体の借り入れなどの与信残高と中国の対外与信残高の推移を示したものだ。リーマン・ショック後に中国の対外借り入れが急増していることがわかる。

 4兆元の経済対策の資金として、シャドーバンキングに加え、海外マネーが大量に流入したためと考えられる。理財商品問題をきっかけに海外の金融機関が中国向け貸し出しを絞り込めば、中国バブル崩壊につながりかねない。

 理財商品が中国の実体経済や金融市場を通じ、世界経済を揺るがす可能性はある。