2014年

3月

18日

ワシントンDC 2014年3月18日号

 ◇中間選挙接戦州の力学変える新エネルギー委員長の誕生

 

篠崎真睦

(三井物産ワシントン事務所長)

 

 2月11日午前、ルイジアナ州のキャメロンLNG(液化天然ガス)輸出基地に対する米エネルギー省の輸出許可が下りた。同プロジェクトは三井物産、三菱商事などが参画する輸出計画で、2017年の輸出開始を目指している。同日の午後、上院エネルギー天然資源委員会の新委員長にマリー・ランドリュー上院議員(民主党)が就任した。この人事が話題となっている。

 新委員長は、上院の年功序列、玉突き人事により誕生した。まず、マックス・ボーカス上院財政委員長(民主党6期目、72歳)が駐中国大使へ転出したことで、ロン・ワイデン議員(同3期目、64歳)がその後任に就任することになった。

 ワイデン議員は上院エネルギー天然資源委員会の委員長だった。空席となったこのポストに、同委員会に所属するランドリュー氏(3期目、58歳)が昇格したのである。

 今回の委員長人事は次の2点で注目を浴びている。一つは、ランドリュー氏がエネルギー委員会を仕切ることで、同委員会の優先事項が変わる可能性である。ワイデン前委員長は環境保護を重視し、LNG・原油輸出の動きに懐疑的だった。一方のランドリュー氏は石油・天然ガス関連産業に依存したルイジアナ州選出で、リサ・マコウスキー上院議員(共和党、アラスカ州選出)と共に米国からの原油輸出解禁を求めている。

 

 ◇輸出許可は「良い手土産」

 

 細かく見ても、石炭排気ガスの過度の規制に反対、カナダ西部のオイルサンド油田と米メキシコ湾岸の精製施設を結ぶ「キーストーンXLパイプライン」建設の支持など、ワイデン前委員長とは正反対の政策を支持している。石油開発会社がメキシコ湾で原油開発する際、収益の一部をロイヤルティーとして連邦政府に納めている。その湾岸州受け取り分増大なども求めており、政権のエネルギー環境政策にも影響を与えると見られる。

 2点目は、今回の玉突き人事が今年11月の中間選挙に与える影響だ。ワシントンの選挙専門家の多くは、民主党が医療保険改革の導入で失点したことで、下院は共和党が多数派を維持する可能性が高く、上院は接戦になると予想する。その接戦州がモンタナ州とルイジアナ州だ。

 モンタナ州では、駐中国大使となったボーカス上院議員の後任として、同州副知事のジョン・ウォルシュ氏が指名された。同氏が務めるのはボーカス議員の残りの任期に過ぎないが、中間選挙に向け立法活動で名声を高めることができ、選挙資金もより集めやすくなる。選挙専門家は同州上院選を「共和党優位」から「伯仲」または「民主党寄り」へと予想を変えた。

 一方、ルイジアナ州では、ランドリュー氏の再選が危ぶまれている。ただ、エネルギー天然資源委員長になったことで、同州の基幹産業である石油・ガス企業からの献金や集票も容易になり、選挙戦にも追い風となる。同氏は、今回のキャメロンLNG輸出プロジェクト許可に向け、モニツ・エネルギー長官に働きかけるといった動きを見せていた。今回の輸出許可は、委員長就任と合わせて「良い手土産」になるとの見方がワシントンでは広がっている。

 オバマ大統領としては、上下両院で共和党が多数派となれば完全にレームダック(死に体)化してしまう。CNNなどによると、大統領は2月上旬の民主党上院議員の年頭研修会で、「中間選挙で上院支配を維持することは14年の私の最優先課題だ」と演説したという。今回の「巧妙な玉突き人事」の仕掛けは、「民主党の上院多数派死守」につながるのか。今後に注目したい。