2014年

3月

18日

特集:アメリカと日本株 2014年3月18日号

 ◇日本株を売り越す外国人投資家 薄れたアベノミクスへの関心

 

秋本裕子

(編集部)

 

 日本株に対する外国人投資家の関心が、今年に入って急速に薄れている。

 外国人投資家は昨年1年間で日本株を17兆円買い越し、年間で57%の株価上昇に寄与したが、今年は1~2月に1兆2200億円売り越している(東京証券取引所1・2部合計)。

 米国株は、1月下旬の急落から反転、2月14日にダウ平均は節目の1万6000ドルを回復して底力を見せた一方、日本株は3月6日に1万5100円台を5週間ぶりにようやく回復するなど戻りが鈍く、相対的な弱さが目につく。

 その背景として、「アベノミクスに対する関心が、海外勢の中で薄れている」(みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミスト)との見方がある。

 

 ◇安倍政権への信頼感低下

 

 実際、ブルームバーグによる世界の投資家の各国指導者に対する信頼感調査(2014年1月)では、安倍晋三首相の信頼感は36となり、前回(13年9月)調査と比べ、評価が大きく下がる結果になった。

 それはなぜか。高田氏は「靖国問題などが海外でも報道され、右傾化の懸念が高まっている」と分析する。また、在米証券会社幹部も、「(靖国参拝は)もっと経済や市場の基盤が固まってからにすればよかったのに、早すぎたと話す外国人投資家は多い」と言う。

 加えて、「大胆な規制緩和がなかなか出ないことへのいらだちがある」(みずほ総研の高田氏)。2月中旬に米ニューヨークなど世界4都市を回り、ヘッジファンドや「ロングオンリー」と呼ばれる長期保有の投資家と面談したという野村証券の田村浩道チーフストラテジストは、「今回は意外に成長戦略への質問が少なかった」といい、「成長戦略への期待値が下がっている」と指摘する。

 

 ◇欧州株へシフト?

 

 ただ、こうした中でも、外国人投資家は日本株を見限ったわけではなく、「積極的に買い増すべきか、売るべきか、様子を見ている」ということのようだ。野村証券の田村氏は、「外国人の日本株への見方は慎重ではあるが、強気の見方は維持している」、メリルリンチ日本証券の神山直樹株式ストラテジストは、「今後、円安から企業収益につながるのかを見ている」と説明する。

 一方で、「投資家の関心が、比較的好調な米経済や底を打ち始めた欧州に注がれている」(在ニューヨークの市場関係者)との指摘もある。実際、米バンクオブアメリカ・メリルリンチのファンドマネジャー調査(2月)では、今後1年間で最も「オーバーウエート(基準より多く配分)」にしたい地域に、「ユーロ圏」を挙げた回答者が差し引き40%となり、過去最高に達した。その一方、同5%で続いた日本は、前月から7%ポイント減少。足元では、米国を「オーバーウエート」にしているのは同11%と、前月(5%)から増加するなど、米・欧株への関心は高まっている。

 

 ◇期待をつなぎ止める

 

 安倍政権は、アベノミクスへの期待を、何とかつなぎ止めなければならない。「外国人の期待が高い分、失望売りにつながる」(欧州銀行系投信のファンドマネジャー)懸念がある。

 だが、今後のかじ取りは難しい。黒田東彦日銀総裁が目指す「2年で2%」の物価上昇率の達成は難しいと見る向きは多く、4月からの消費増税で一時的にせよ日本経済は減速する見通しだ。世界経済を見ても、米国経済は足元では天候要因などで変調がみられ、頼みの綱である中国経済も減速懸念が広がっている。

 目下、カギとなるのは金融政策だ。「黒田総裁は、目標が達成できなくなれば追加緩和をするという姿勢を示すことで、市場の期待感をつなぎとめるしかない」(日本総研の湯元健治副理事長)と言える。市場では、「早ければ3月か4月」との見方が膨らんでいるが、実際に追加緩和をすると期待をつなぎ止める効果はなくなる。そのため、「いつでもやる用意があると見せながら、やらずに済ませたいのが黒田総裁の本音だ」(同)。

 13年4月、黒田総裁は「異次元緩和」で市場の驚きを誘い、日本株への「買い」につながった。では、次にどういう手を打てば、投資家にインパクトを与えられるのか。アベノミクスが超えるべきハードルは、相当に高くなっている。