2014年

3月

18日

経営者:編集長インタビュー 池田茂 フランスベッドホールディングス社長 2014年3月18日号

 ◇元気な高齢者向け商品を自ら開発

 

── 2014年3月期は3期連続の最終増益見通しです。好調の理由は。

 

池田 昨年、高級ベッドの売れ行きが顕著に増え、前年比で倍増しました。それまでは、デフレで安い輸入品が消費者に好まれていたのですが、全日本ベッド工業会の調査によると、過去10年間で初めて輸入本数が減りました。円安に加え、中国やベトナムといった生産地で、原材料と人件費が上昇し、国内外の価格差が縮まっています。そのうえ、消費者が高級品を買うようになりました。

── 高級志向の理由は。

 

池田 アベノミクス効果と消費増税前の駆け込み需要です。実はどのインテリアメーカーもこの10年、生産体制を縮小してきました。ダイニングセットやソファー、ベッドなど「脚もの」と呼ばれる家具の駆け込み需要が大幅に増えていて、当社も含めて生産が追いつかない状況です。

 

── 生産体制の縮小規模は。

 

池田 マットレスは全国6工場で生産していましたが、現在では東京と兵庫の主力2工場を中心に生産しています。ピーク時には2024人(04年9月末)いた従業員も1530人(13年3月)に減らしました。

 

── 消費増税後の見通しは。

 

池田 4月は、3月までの受注分の繰り越しがあります。駆け込み需要の反動減が表面化するのは5~7月になると見ています。14年度通年の売上高は、13年度と同じ商品ラインナップであれば10%強減るでしょう。そこで14年度は、高額商品の落ち込みをカバーするため、これまで以上に、介護ベッドなど高齢者向け商品に力を入れます。ただし、介護保険でベッドなどの福祉用具をレンタルする場合、非課税になります。一方我々の資材購入にはすべて消費税を課税されます。車椅子など一部商品は課税できますが、レンタル売り上げの7~8割は非課税なので、増税分は負担増です。

 

 レンタル介護ベッドなどのメディカルサービス事業と高級ベッドなどのインテリア事業の2本柱。過去数年、メディカル事業が成長し、売り上げの5割強、利益の7割強を同事業が占めている。

 

 ◇光る杖、電動三輪車

 

── 高齢者向けはどんな商品がありますか。

 

池田 これまでは介護ベッドが中心でした。介護ベッドのレンタルは30年前に私が始めたビジネスです。それ以前は販売だけでしたが、買ってほどなくして亡くなった方のご家族から、買い取りを求められたのをきっかけに始めました。ですが、高齢者の6人に5人は介護保険を利用していない元気な方々です。「高齢者はお金を使わない」と言われますが、元気な高齢者が欲しい商品がなかったからだと考えています。

 

── 元気な高齢者向け商品とは。

 

池田 たとえば、買い物難民の方向けに、電動アシスト三輪自転車を改良しました。自転車はこぎ出す時、片足をペダルに乗せ、もう一方の足で地面を蹴りますが、自転車に乗った経験が少ない高齢者は一度に両足を乗せてしまいます。それでも2秒間は倒れずにこぎ出せるようにしました。電動アシスト三輪自転車は昨年約1500台を販売しましたが、改良によって倍増を見込んでいます。LED(発光ダイオード)を内蔵した光る杖も開発しました。足元を照らすので、夕方の買い物も安心です。どちらも私のアイデアです。

 

── 社長自ら?

 

池田 そうです。開発部門が私の案を具現化してくれました。ベッドもあります。転落事故防止のため、夜間などはフレームをほぼ床の高さに下げられるベッドです。3月から量産体制が整い、認知症の方が多い特別養護老人ホームからの引き合いに期待しています。開発部門も、座位を保てない方向けのベッドを開発しました。ベッドを起こした時に体が左右に倒れないよう、左右の床板をせり上げて体を固定します。開発部門のヒット作です。

 

 ◇今春、直営店オープン

 

── 杖や自転車の採算は?

 

池田 そんなに売れませんよ(笑)。一つ一つの商品の採算は考えません。高齢者向けの商品は多品種少量生産で価格を抑えにくい。だからベッドが売れないと採算は合わないのです。ただ、これまでの売り方については反省しています。売り方を工夫することで、元気な高齢者向けビジネスをぜひ成功させたいと考えています。

 ネットやテレビショッピングにも力を入れますが、宅配しやすく、組み立てが簡単な商品に限られます。そこで、元気な方向けの商品を集めた50~100平方メートルの直営店を今春にもオープンさせます。自分で商品を選びに来ていただきたい。この直営店が実績を上げれば、家具店やホームセンターも、専用スペースを開設するようになると考えています。光る杖はドラッグストアなどでの取り扱いも目指しています。株主優待品として株主約1万5000人への配布も予定しています。株主からの口コミによる宣伝効果を期待しています。

 

── ところで古くなったレンタルベッドはどうしていますか。

 

池田 ナイジェリアやタイに無償提供をしたこともあります。「会社名はフランスですが、日本の会社です」と説明して(笑)。これまでは送料も当社負担でしたが政府の外郭団体の援助を受けられることになりました。(構成=望月麻紀・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 子会社の社長でした。業績が悪い会社を立て直すため、事業をたたむばかりで楽しくない。「新しいことをやろう」と34歳の時に手掛けたのが介護ベッドのレンタル事業です

Q 最近買ったもの

A 高額の腕時計。アベノミクスの高額消費ブームに私も乗りました。

Q 休日の過ごし方

A スポーツジムと読書。主に歴史小説を読みます。

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 ■人物略歴

 ◇いけだ・しげる

 東京都出身、1949年生まれ。1973年成蹊大法学部卒業後、フランスベッド入社。99年6月より同社社長(現職)。2004年3月の持ち株会社化を機に現職に就任。64歳。