2014年

3月

25日

ワシントンDC 2014年3月25日特大号

 ◇舌戦続くウクライナ危機 共和党で強まる弱腰批判

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 オバマ米大統領にとって、危機管理は鬼門だ。圧倒的な軍事力を行使して政策を遂行する「力の外交」を嫌い、国際協調路線で「対話の外交」を追求するスタイルは、共和党タカ派から格好の攻撃材料となり、唯一の超大国にもかかわらず「弱腰」をさらしているという政治的プロパガンダに使われる。そこに降りかかったのが「今世紀になって欧州最大の危機」とされるウクライナ危機だった。

 危機の発端は昨年11月、ウクライナのヤヌコビッチ前大統領が欧州連合(EU)加盟方針を転換し、旧宗主国のロシアに急接近したことだ。親欧米派市民が大規模な反政府デモを展開し治安部隊と衝突。今年に入って流血の惨事が続き、危険を感じた大統領が出国。反政府側が暫定政権樹立に動く事態に至ってロシアが介入した。

 危機を巡っては、欧米とロシアがまさに東西冷戦を彷彿(ほうふつ)とさせるパワーゲームを繰り広げている。首都キエフでの政権崩壊は親ロシアのウクライナ南部のクリミア自治共和国での騒乱に飛び火し、ロシア軍の動きが活発化するのを見て取ったオバマ政権は2月28日、軍事介入すれば「代償が伴う」と警告した。

 しかし、ロシアのプーチン大統領はこれを無視。上院から軍事介入の承認を受け、3月2日までにクリミア半島を完全に掌握。対抗措置として6月にロシア・ソチで開催される主要8カ国首脳会議(G8サミット)の準備会合への参加凍結をロシアを除く7カ国が表明。金融制裁の検討に入り駆け引きは激化の一途だ。

 オバマ大統領は「国際法違反だ」と語気を強め、ケリー国務長官も「他国への侵略」と同調する。議会からも「帝政ロシアへの復古」(共和党のマケイン上院議員)などロシア批判が噴出した。だが、矛先はオバマ大統領にも向けられた。

 

 ◇過去も危機管理で批判

 

 ロジャース下院情報委員長(共和党)は「プーチンはチェスをし、我々はビー玉遊びをしている」、グラハム上院議員(同)も「我々の大統領は弱く、決断力に欠ける」と、決然たる行動を求めたのだ。威勢のいい言葉で批判をするだけで、足元をみられているとの不満がある。

 オバマ大統領の危機管理にはとかく批判がつきまとう。2008年8月、ロシアがグルジアに軍事介入した。大統領選中だったが、当初、ロシア、グルジア双方に自制を求め、ロシア批判を強める共和党候補のマケイン氏に支持率で一時逆転を許した。12年9月の駐リビア米大使らが死亡した在ベンガジ米領事館襲撃事件では、「計画的テロ」と断定するまで2週間以上かかり、やはり共和党から集中砲火を浴びている。

 今回、オバマ大統領の警告直後にプーチン大統領が軍事介入方針に踏み切った。このことから、米メディアには「オバマ政権は直前までロシアの軍事行動を予測していなかったのでは」との疑念が広がった。

 米露の今回の勝負は、専門家の間では「米国不利」との見方がもっぱらだ。理由は三つ。①オバマ大統領が「政権の遺産」としたいイラン核問題解決にはロシアの協力が不可欠、②ロシアへのエネルギー依存が高い欧州諸国が強硬な経済制裁に同調するか不透明、③EU諸国との緩衝地域となっているウクライナはロシアにとって地政学上、重要──。

 オバマ大統領にとって懸案のイラン核問題やシリア内戦でロシアの協力は不可欠。全面対決は避けつつ、ウクライナ新政権を支援するというのが現実的解決策といえそうだが、そうなれば共和党からの「弱腰批判」が強まりかねない。厳しい危機管理が続く。