2014年

3月

25日

特集:経常赤字と本当の国力 第3部 成長の壁 潜在成長率 2014年3月25日特大号

 ◇さらなる低下の可能性 電機の凋落が影響か

 

早川英男

(富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー)

 

 薄型テレビやスマホに代表される日本製エレクトロニクスの凋落(ちょうらく)は、さまざまな経済指標の動きに異常をもたらしている。その第一は、大幅な円安にもかかわらず、貿易赤字がむしろ拡大していることだ。この背後には、円安と原発停止による化石燃料の輸入額増加や、企業の海外生産拡大など多くの理由があろうが、品目別に見れば、電気機器において輸出が伸び悩み、輸入が大きく伸びていることの影響が顕著である。かつて日本を代表する輸出産業であった電機の国際競争力劣化が、わが国の対外収支に大きな影を落としているのは間違いない。

 その第二は、消費者物価の上昇である。消費者物価の前年比は、昨年末までに1%を超えた。もちろん、その最大の要因は円安に伴うエネルギーや食料品の値上がりだが、見逃せないのはパソコンやテレビといったハイテク耐久消費財の値動きである。従来、これらの製品は日本企業の生産性上昇と激しい価格競争の結果、消費者物価を一貫して押し下げていた。しかし、電気機器の多くが輸入財と化したことで、円安による価格上昇が耐久消費財にも及んでいる。政府・日銀は、民間予想を上回るペースの物価上昇を「デフレ脱却の動き」と胸を張るが、それが主力産業の競争力劣化の表れだとすれば、喜んでばかりでよいのだろうか。

 以上の2点は、既にデータにはっきり表れている。しかし、これらをエレクトロニクス凋落の帰結として受け入れるならば、筆者には第三の帰結として、不吉な仮説が浮かび上がってくる。それは、「日本経済の潜在成長率がさらに低下しているのではないか」という疑問だ。………