2014年

4月

08日

経営者:編集長インタビュー 関家一馬 ディスコ社長 2014年4月8日特大号

 ◇「切る、削る、磨く」で世界シェア1位

 半導体ウエハー加工装置メーカー。ウエハーの切断や研磨で世界シェア7割を誇る。2014年3月期の業績予想は売上高1021億円と初の1000億円超。営業利益率10%超が続く高収益企業でもある。

── 業績好調の理由は?

 

関家 できる仕事を全力でやっているだけです。事業領域を、切る、削る、磨くという三つの技術に絞り込んでいますが、幸運なことにお客様の方から、異なる素材や異なる大きさの加工について、相談が次々に持ち込まれます。

── 苦戦している半導体製造装置メーカーもありますが。

関家 一部の工程に特化している企業は、加工工程の変更や、外国勢との競争の影響を受けやすいのでしょう。当社は、切る、削る、磨くの三つの技術が普遍的であることに加え、取引先からの新たな加工の相談に対して「最初にディスコに相談してよかった」という結果や、仮にうまくできなくても「ディスコでできなければ他でも無理だろう」と納得してもらえる結果を出すことで、最初に相談される会社であるよう努めています。最初に相談されれば、仕事を取れる可能性が高い。それに、顧客の要望が技術者の知識や経験となり、さらに相談が持ち込まれるという好循環が生まれています。

 ◇国内製造を続ける

── 生産拠点はすべて国内です。今後も国内でやっていけますか。

関家 やっていけると思っています。日本の雇用のためという思いはあまりありませんが、製品の付加価値が高ければ高いほど国内で生産を続けられますし、国内に残るべきだと思っています。いずれ他社が生産拠点を海外に移して国内の労働力が余れば、労働コストは下がり、労働力を確保できますから。それに、当社は、日本企業向けの売り上げが最も多く、部品は日本のメーカーから調達しています。工場や人を国内に置いた方がデリバリーが早く、コミュニケーションも取りやすい。労働者の質も高い。日本の事業環境の課題は、人件費や電気・水道代が高いことぐらい。総合的に、しかも戦略的に評価したら「日本」という判断になります。

 ◇個人採算制を導入

 採算を意識した経営を徹底。部門管理会計を導入している。11年末には社員一人一人の採算を示す独自の「個人Will(ウィル)会計」も導入した。関家社長の発案だ。ある仕事をこなすと、その仕事の料金が“収入”として個人に与えられる。逆に、別の社員に仕事を頼む場合は料金を払う。自身の給与も支出として計上するため、個人の採算が分かる。仕事の割り当てはオークションで決める。人気のある仕事ほど料金は下がる。

── 導入の狙いは。

関家 当初の狙いは二つです。一つは、コストをかけて部門管理会計を導入しても、部門ごとの採算を意識するのは部長と会計担当者だけ。部員は、会社の業績は把握しても部門の採算は気にしませんでした。賞与が経常利益率連動であることも一因です。そこで採算を意識してもらうために、個人レベルに落として示すことにしました。もう一つは、粗利200万円の仕事を受注して、社内リソースを300万円使ってしまうという無駄遣いをなくすため、他の部署を動かせばフィー(費用)が発生することを意識してもらうためです。
 やってみると、ほかにもメリットがありました。オークションによる仕事の割り振りは、当事者に不平不満が残りにくいことが分かりました。たとえば、子育て中の女性エンジニアは、16時までに退社できる仕事を自分でオークションで落札して引き受けることができます。早く帰れる仕事しかできない、などと心苦しく思いながら退社することがなくなります。しかも、どうしても時間内に終わらない場合は、同僚に対価を払って頼むことができます。一時的に仕事が増えた場合には、人事異動なしに部署を超えて人手を確保することもできます。

── 個人の採算は給与・賞与に直結するのですか。

関家 個人ウィル会計の成績に連動するのは賞与の0・1カ月分です。ほかに、「DISCA(ディスカ)」という社内通貨を個人ウィル会計の業績に応じて毎月配布します。ディスカはいわば、経費の支出権。これで会社の標準装備ではないワイヤレスマウスなどの備品を購入したり、社内のスポーツジムを利用できます。買った備品は会社の資産ですが、辞めるまで使えます。ディスカの総額は景気動向で変動します。現在は月500万円。社員1人当たりの単純平均は月約1600円強ですが、個人の業績によるので、大幅黒字の人は月1万円もらえる一方、赤字の人はゼロ円です。

── もっと報酬連動型にするつもりはないのですか。

関家 部署によって個人ウィル会計の運用の習熟度や、収益の多寡が異なるので、連動を強めると不満が出ることが予想されます。「これがあなたの成績です」と言われれば、そこまで連動させなくてもみんな必死に追い求めてくれます。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=望月麻紀・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 29歳で取締役になり、役員会に出席するようになりました。当時は賞与をいくらにするかで未明まで会議が続くこともありました。そこで賞与を経常利益に連動させる仕組みなど、経営を容易にする提案をしていました。
Q 最近買ったもの
A 車「レクサスGS」(トヨタ自動車)。目立たないように色は濃紺です。
Q 休日の過ごし方
A 土日どちらかはテニス。友人と旅行や買い物へ。冬はスキーに行きます。
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 ■人物略歴
 ◇せきや・かずま
 東京都出身。1966年生まれ。88年慶応大学理工学部卒業後、89年ディスコ入社。技術開発部長、常務などを経て、2009年4月より現職。48歳。