2014年

4月

22日

特集:最後の英語やり直し! 2014年4月22日号

 ◇時間とお金を無駄にしない 勝間流の“最終手段”

 

勝間和代

(経済評論家)

 

 私は大学卒業後、外資系企業に入社したが、最初は英語がまるでできなかった。入社当時のTOEICの点数は420点。社内文書はすべて英語だったが、1行に三つぐらい分からない単語が出てきて、読むのに非常に時間がかかった。

 仕事上どうしても避けて通れず、入社1年後ぐらいから本格的に英語を勉強し始めた。学習教材を本屋でありったけ買ってきて勉強したり、英会話教室に通ったりもして、多額の費用を英語学習につぎ込んだ。それらがすべて無駄だったわけではないが、本当に役立ったのは10分の1ぐらい。結局、英語学習の正体は試行錯誤だ。方法をいろいろと試してみて、自分なりに取捨選択して自分に合った方法を探すしかない。

 今の私の英語力は、普通に会話と読み書きができ、ビジネスにもほぼ支障がないというレベル。TOEICのリスニングテストなら満点が取れる。それぐらいの英語力を身につけるための鉄則を伝授したい。

 

 鉄則① 学習は1000時間以上

 

 まず最初に、英語学習には時間がかかることを理解する必要がある。具体的には、ある程度使えるようになるまでが1000時間、上級者並みに上達するには1万時間が目安だ。多くの人は大学受験などで英語を結構勉強したと思うので、1000時間あれば十分だと思う。

 1000時間とは、1日1時間として3年程度。私もビジネス英語を使えるようになるまでにそれぐらいはかかった。といっても、そう大変なことではない。隙間(すきま)時間を使って「ながら」勉強をすればよいだけだから。私は子育てしながら働いていたので、通勤時間や家で料理中に英語のテープをかけっぱなしにして、隙間時間にいつも英語を聴いていた。もっとまとまった時間がある人なら、1日3時間徹底的に勉強すれば1年程度で終わるし、英語圏に留学して1日12時間を英語しか使わない環境で勉強したなら、3カ月程度で十分だ。

 何年やっても英語ができるようにならないという人は、正味の学習時間が足りない。1週間に1回、英会話教室に通っているとかオンラインで英会話レッスンを受けているだけの人だと、1000時間達成までに15年ぐらいかかってしまう。

 ここで注意したいのは、「1000時間」は「英語だけに接する時間」ということ。学校の授業はもちろん、ラジオ講座、英会話教室、オンライン英会話などでは、英語を聞いているつもりでも、日本語で説明を聞いている時間が意外に多い。見落としがちだが、その時間は累積時間には入らない。文法でも単語でも英文和訳でも何でもいいが、英語に直に触れている時間を換算する。ポイントは「年数」ではなく「累積時間」だ。

 

 鉄則② まずは単語を覚えろ

 

 英語学習で重要なのは、単語を覚えて語彙(ごい)を増やすこと。英語に必要な要素を発音、文法、語彙の3要素とすると、すべてマスターするのは絶対に無理。この中で明らかに結果が出やすいのは語彙だ。語彙は増えるほど会話が楽になる。

 大学受験をした人であれば、既に2000単語ぐらいは頭に入っているはず。ネイティブの語彙は1万と言われているが、2000語から1万語に増やすのは、実は思っているほど大変ではない。

 わざわざ単語帳を見て覚える必要はない。私が実践した方法は、洋画を字幕付きでひたすら見ること。どういう主人公がどういうシチュエーションの会話で使っているか、雰囲気で覚えるとわかりやすい。例えば、pregnantという単語の意味が「妊娠」、obesityが「肥満」だということは、映画やドラマを見てニュアンスで覚えられた。7~8割聞き取れるようになれば意味を予測できるので、残りのわからない言葉を補足できる。巻き戻して何度も聞き返す必要はない。

 逆の発想で、邦画を英語の字幕付きで見るのもよい方法だ。日本語のセリフを聞かずにひたすら英語の字幕で理解してみる。飛行機に乗れば見られるものだが、アマゾンなどの通販サイトでも海外向けに制作された英語の字幕付き映画のDVDを買うことができるので、私も利用している。

 1000時間を洋画でマスターするには、毎日2時間の映画を1本ずつ見れば500日で終わる。私はもともと映画好きなので、まったく苦にならない。わからない言葉やセリフがあっても聞き流して、ひたすら本数を見たことは上達できたコツだ。

 

 鉄則③ お金はかけるな

 

 このように、聞き流す「多聴」はオススメの方法。文字を読むことは手足を止めないとできないが、聴くことは「ながら」でできるので効率がよい。その意味では、「オーディオブック」(書籍を英語で朗読し録音したコンテンツ)は役立った。興味がある内容を選び、英語でひたすら聴いた。

 今はウェブやDVDなど安価なツールがあふれ、お金をそれほどかけなくても自分に合った方法を見つけることができる。お金をかけた方が早く英語ができるようになるわけではないので、安く、楽しく、英語をインプットする方法を探せばよい。

 ゲームが好きなら英語でゲームをやってもいいし、料理が好きなら英語のレシピ本を見ながら料理を作ってもいい。私は通販での買い物が大好きなので、日本では売っていない、あるいは日本では価格が高い商品を海外の通販サイトで購入している。こんな方法でも英語の勉強になるし、欲しい商品を安く手に入れることもできて一石二鳥だ。何より、好きなことなら苦にならずに続けられる。

 一般的に、「どうすればいいのか」を尋ねる人は、語学が上達しない。試行錯誤で実行してみて、自分の方法を見つけるしかない。3カ月続けて駄目だと思ったら、やめて次の方法を試すことだ。勉強法を自分で見いだせないうちは上達は難しい。

 

 鉄則④ スペルは覚えるな

 

 単語を覚えるというと、スペルも正確に覚えないといけないと思うかもしれないが、決してそんなことはない。私のスペルはかなり適当だ。外資系企業に勤めていた時は英語でメールや文書を書かないといけなかったが、スペルチェックできるソフトもあるので問題はなかった。

 一つ一つスペルを書いて覚える時間があれば、映画を見て単語の意味を覚える方が効率的だ。文法も正しくなくても通じるから、気にする必要はない。

 ただ、ある名詞の前にaかtheかどちらの冠詞がつくのかは気をつけた方がよい。aは特定のもの、theは一般的なものにつけるが、その後に名詞がくるという目印になるものだから、ネイティブにとっては重要だ。

 同様に、複数形を正しく覚えることも重要だ。「眼鏡」をglassと覚えている人が多いが、実際にはglassesと複数形しか使わないので、間違って覚えると相手を混乱させてしまう。

 

 鉄則⑤ 紛らわしい発音だけ区別

 

 発音は、ネイティブのようにスラスラ言えなくても、相手が混乱しない程度の発音ができれば、日本語英語で十分。発音記号を見ても無駄で、カタカナ表記で発音を学ぶことをオススメする。

 ただ、気をつけるポイントはある。日本語は「母音言語」であり、すべての語尾に母音がつく。一方、英語は「子音言語」で、子音で終わる言葉が多い。だから、日本人が英語を話すと、「チョコレートォ」のように最後の母音を発音してしまう。これはネイティブには余計な音が多すぎて通じなくなるので、母音は発音しないようにしたい。正しい発音は「チョックレイツ」に近い。

 とはいえ、ネイティブを混乱させる日本人の紛らわしい発音が特に4種類ある。「whとth」「sとsh」「bとv」「rとl」だ。この違いさえ気をつければかなり違う。

 Whatは、ネイティブの発音では「ワット」となる。日本人は「ファット」と発音するので、“fat?”(肥満?)と勘違いされてしまう。Thisも「ジス」ではなく「ディス」だ。

「sとsh」の違いで言えば、日本人はshe(彼女)と、sea(海)の発音が逆になったり、同じになっていることが多い。sheは「シー」で、seaは「スィー」だ。

「bとv」の音の違いは、violinが「バイオリン」ではなく「ヴァイオリン」だとカタカナ表記で示せばわかりやすいだろう。rとlも、right(正しい、右)が「ゥライト」と発音し、rが小さな「ゥ」を意識するのに対し、lはそのまま発音すればいい。

 要は、発音の違いで混乱させない程度に発音をマスターすれば、後は日本語発音でよい。

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 ◇あなたの疑問に答える 英語力アップのコツ

 

 勝間和代氏の著書『最後の英語やり直し!』(毎日新聞社刊)の刊行を記念したトークショーが4月7日、東京都内で開かれた。来場者から英語学習についての質問や悩みが多く寄せられ、勝間氏が体験を基にアドバイスした。

Q まとまった学習時間を取れない。

A 私もまとまった時間なんてない。テレビをボーっと見ている時間、何気なくネットを見ている時間、通勤時間や車を運転している時間を英語学習に充てればいい。洋画やCNNなどのニュース放送を流しておいて耳で聴いているだけでもいい。

Q 1冊の本を10回読むのと、違う本10冊を1回ずつ読むのはどちらが効果的?

A その本が好きなら何回読んでもいいが、多様な言葉に触れられるので10冊を1回ずつ読む方を勧める。英語の本を読むのがつらい人は、オーディオブックがオススメ。電子書籍「キンドル」の合成音声を使って聴く手もある。

Q オンライン学習をしているが、習得にどれぐらいかかるか。

A オンラインでは大した分量の英語を聞けないので、時間が足りない。教材でもTEDでもいいが、好きなスピーカーの会話と同じようにまねる(シャドーイング)とうまくなる。洋画で好きな俳優の言葉を覚えてもいいし、歌をシャドーイングで覚えるのもいい。

Q 通勤途中に口語英語のCDを聴いているが、TOEIC730点の目標までなかなか届かない。

A TOEICに比べて単語レベルが低いんじゃないか。まずはTOEICの過去問題を解いてみること。TOEICのヒアリングテストはネイティブの話し方の1.5~2倍は遅いから聞き取りやすい。TOEICのヒアリングでは満点も可能。他のテストで取れなくても800点台後半はとれる。TOEICの点数が上がらない人は、TOEICの勉強をしていない。本気で点数を上げたいなら過去問題を徹底的にやるべき。

Q 英語をアウトプットする機会がない。

A アウトプットの機会なんて私もほとんどない。週1回でも話せる場があるといいぐらい。どちらかというと、足りないのはアウトプットよりインプットの時間だ。

Q ゼロからの英語の始め方は?

A 一番簡単なのはおとぎ話を読むこと。絵本に近いものから読んでみるのはどうか。ディズニー映画を英語の字幕で見るのもオススメだ。