2014年

4月

22日

経営者:編集長インタビュー 渡辺勝 乃村工藝社社長 2014年4月22日号

 ◇企画から運営まで、空間演出のトップ

 

 創業122年。芝居の大道具や装置づくりから出発し、高級ホテルや専門店、飲食店、企業PR施設等の内装を手掛ける。ディスプレー業界ではシェアナンバーワン。

 

── 業績が好調です。

渡辺 2012年の春ごろから大型の商業施設や再開発案件の動きがよくなり、その波に乗りました。東京スカイツリー、ダイバーシティ東京、渋谷ヒカリエなど話題になった施設にはほとんど関わっています。ホテルの内装も高級志向が強まり、当社にとっては追い風です。

── もともとホテルは得意だった?

渡辺 百貨店の内装が主でした。1990年のバブル崩壊後に注文が半減して困っていたところに、海外ファッションブランドから仕事が入りました。そのブランドの専門店を立て続けにつくったことで力をつけ、「高級ファッションブランドなら乃村に」となり、そこから飲食店、高級ホテル等に領域を広げていきました。斬新なデザインで話題になる飲食店は、たいてい当社が手掛けたものです。ここ2、3年は、オフィスや工場で業務の効率化を図ったり、社員のモチベーションを上げる空間づくりもしています。

── シェア1位が続く理由は?

渡辺 お客様のアイデアだけでつくるのではなく、当社の強みとして、プラスアルファのアイデアも必ず提案します。それも先すぎない、半歩進んだ提案を。そうすると、予算が増額されることもあります。

 売り上げの8割は、毎年注文がある常連のお客様です。122年の歴史と信用を壊さないよう、独自の品質基準を設けていて、時には赤字になることもあります。逆に言えば、前期は赤字案件がなかったから業績もよかった。

── クリエーターの力が重要です。

渡辺 金太郎飴はいりません。個性をしっかり身につけて、それで勝負するように、と言っています。

 加えて、電機やIT業界の展示会では、企業ブースの多くを当社が担当することもあります。それでも大丈夫なように、担当業界のトレンドや企業の強みを知り、各企業の個性が際立つようにします。

 一方で、メーカーのショールームなど、従来はきれいであればよかった分野でも、「商品が売れる」空間づくりが求められるようになりました。その点、当社には、物販分野が長い、売れる店づくりが得意なクリエーターもいます。クリエーター間で知恵を共有できるのが当社の強みです。

── 優秀なクリエーターの処遇はどうしていますか。

渡辺 最高位は役員待遇です。すでに2人いて、他の役員と同じ報酬です。当社には350人のクリエーターがいて、年間8000件近いプロジェクトをこなしています。前回と同じという仕事は一つとしてなく、ゼロからつくり上げるものばかりです。お客様から指名されるクリエーターもいる。だからこそ、正当な処遇をすることは非常に重要です。

 

 ◇集客のためのイベントも

 

 飲食・物販店舗やイベントの運営も行うほか、自治体が所有する美術館や博物館の運営にも参入し、現在12館に達している。全売上高1000億円のうち、すでに300億円が運営事業だ。

 

── どうして運営まで?

渡辺 我々はものづくりを中心にやってきましたが、そのままにしておくと施設や空間は廃れます。つくったものの運営まで任せていただければ、施設も生きるし、利益も出る。お客様の商売繁盛を考えてのことです。

 川上の業態提案からデザイン、施工、運営まで一貫して行っており、その仕上げが12年にオープンした東京スカイツリーと隣接する商業施設の東京ソラマチです。東武鉄道さんの依頼で調査・企画から施工まで関わりました。現在は運営のサポートもしています。水族館や展望台は空間づくりを中心にお手伝いしました。運営では、正月や夏休みなどのシーズンキャンペーンなど、販売促進の提案をしています。

── 今後、施工と運営の比率は?

渡辺 いま7対3の比率を5対5にしていきたいですね。

── 昨年10月に日立製作所とビッグデータ活用の協業で合意しました。

渡辺 日立さんは、センサーを使って人間の動き方を大量にデータとして蓄積して活用しようとしている。一方、我々も人の流れの把握が大事です。これまでは経験知でやっていましたが、データがあれば、確実に空間の価値を上げられます。例えば、20代の若者をターゲットにしていたけれど調べてみたら30代が多かったとか、そういうことも分かるようになります。ただし当面は、快適で機能的なオフィスや物流施設づくりに活用することになると思います。

── 今後の課題は。

渡辺 専門店、ホテル担当、企業PR施設……と組織が専門特化していて、社員がほかの部署の仕事をよく理解していません。そこに横串をさして、会社全体のことを分からせる。そうやって全社一丸となってお客様に売り込んでいけば、それだけで売り上げは20%アップすると考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=吉田啓子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A セールスプロモーション部で、車検の記念品用に恐竜の化石や隕石(いんせき)入りカプセルを広告代理店に提案したり、小学生向け雑誌で定期購読するともらえるドラえもんのチョロQ(ミニカー)をつくったり……。常に頭をフル回転して新しい企画を考えていました。

Q 最近買ったもの

A ゴルフセット。新しくすると飛距離が伸びるかな、と思ったのですが……。

Q 休日の過ごし方

A ジムに行きます。軽く運動して、マッサージして。人が集まるので、情報収集にもなります。

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 ■人物略歴

 ◇わたなべ・まさる

 東京都生まれ。1970年獨協大学経済学部卒業後、乃村工藝社入社。93年取締役。常務、専務を経て、2007年5月より現職。67歳。