2014年

4月

29日

経営者:編集長インタビュー 西浦三郎 ヒューリック社長 2014年4月29日号

 ◇中規模ビルで独自の成長路線を開拓

 駅近くの中規模ビル賃貸業を柱とするヒューリック。大規模再開発の話題に沸く不動産業の中では派手な存在ではないが、時価総額は不動産大手3社に次ぐ規模だ。従業員数125人で1人当たり2億円超の経常利益を上げる高収益企業としても知られる。

── 銀行系の不動産会社から出発して、現在はすごく稼いでいる会社という印象があります。西浦社長が就任後に会社は大きく変わりました。

西浦 社長に就任した2006年に、10年後の会社像を考え、成長ストーリーを自分なりにつくりました。当社は、もともとは旧富士銀行系列の不動産管理会社です。銀行はバブル崩壊で負った不良債権を処理するために、保有不動産を当社などに売却しました。そのため当社は借り入れ過多の状態にあり、まずは財務を改善する必要があったのです。
 財閥系の大手不動産と同じことはできません。では当社の特徴は何か。銀行の店舗を保有していることでした。銀行が売却した不動産の中には、銀行の支店店舗が多くありました。支店は駅近くの3階建てが多いですが、容積率基準では8階や10階まで建てられる。建て替えれば効率的に運用できるわけです。そこでこの5年で40棟ほど建て替えました。
 建て替えのほか新規にビルを購入したりもしていますので、保有資産に占める支店店舗の比率は年々下がっています。
── 現在の事業の柱は。
西浦 賃貸事業です。販売用不動産を除いて約160件保有しており、賃料収入が全体の収益の7割強を占めます。
 新規で買っている物件は東京の中央5区(千代田、港、中央、新宿、渋谷区)が中心です。オフィスビルと商業ビルは、新宿、渋谷、青山1丁目の駅から徒歩3分以内、それ以外は1分以内が立地の目安です。
 中規模ビルがほとんどで、大型ビルは基本的にやりません。大型ビルの坪4万円以上の家賃を負担できるテナント企業は限られているからです。大手企業の多くは本社ビルを持っていますし、財閥系企業はグループ不動産会社のビルに入ります。オフィス需要の急拡大が見込めないのに、当社のような会社が大きいビルをつくっちゃいけないんです。
── 3月に策定した長期経営計画では、経常利益を13年12月期の260億円から、23年には850億円を目指すとあります。大胆な成長戦略に対する自信はどこから?
西浦 08年に、10年後に経常利益を当時の3倍の300億円にしようと計画を立てました。それが14年3月期に4年前倒しで達成できる見通しです。ならば850億円にチャレンジしようと。
 事業拡大の一つはREIT(不動産投資信託)です。今年2月にヒューリックリート投資法人を上場しました。REITをつくるということは、当社がコントロールする物件が増えるということです。当社が保有する約160件とREITに21件、合計約180件のビル管理の手数料をいただけます。REITに合わせて当社も成長していく循環が生まれました。
 
 ◇高齢者、観光、環境

 PPP(官民パートナーシップ)による不動産事業や、REITが資金調達する間に物件を代わりに購入するウェアハウジング事業、CRE(企業の保有不動産の有効活用)など、貸しビル業の枠を超えた新たな事業にも意欲的だ。

── 成長分野として高齢者、観光、環境の「3K」を拡大する方針です。高齢者向け施設は1棟の規模が小さく、効率性が低いのでは。
西浦 2000室ほど保有していて、そのうち9割は東京です。確かに1カ所当たりの入居者は50~100人程度ですが、高齢者向け住宅・施設は、今後40年間、間違いなく需要が拡大し続けます。
 病院ビジネスも考えています。600の病院を調べたところ、その40%弱で病棟の老朽化が進んでいることがわかりました。建て替えようにも、敷地内に新しい病棟を建てて入院患者を移すことができない場合は、当社が近隣に病院を作る場所を探して、病院を建てるビジネスが考えられます。さらに4割程度の病院経営者は、病院跡地で老人ホームの経営を考えています。仕事はたくさんあります。
── ホテルも保有していて、すべて観光向けとか。
西浦 シティーホテルやビジネスホテルは競合が厳しいので参入するつもりはありません。地方の場合は観光地、東京の場合は観光・ビジネスの客が泊まるということでやっていく方針です。
── 昼食を無料で提供するなど福利厚生が充実しています。
西浦 従業員125人なので食堂はありませんが、弁当、スープ、サラダを無料で提供しています。20年までに女性の管理職比率20%を目標にしているので、今年の採用も男女同数にしました。ベビーシッターの費用は1日2時間までは会社で負担しますし、本社5階に保育所をつくる予定もあります。社員にエネルギーを出させるためには、給料やフリンジベネフィット(福利厚生など賃金以外の経済的便益)で応えるしかありません。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 旧富士銀行の人事部の教育研究室で研修を担当しました。20代は頻繁に経済誌などに論文を投書していたので、研修担当になったのかもしれません。
Q 最近買ったもの
A 買い物といえば本くらい。毎週1万円分は買っています。最近は旅行にお金を使うことも多いですね。先日は息子家族と千葉県の犬吠崎に行きました。
Q 休日の過ごし方
A ゴルフをしたり、家族と過ごしたり。海外出張の移動日になることも多いです。
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 ■人物略歴
 ◇にしうら・さぶろう
 東京都出身。1948年生まれ。71年早稲田大学第一政経学部卒業後、旧富士銀行入行。2004年4月みずほ銀行取締役副頭取を経て、06年3月から日本橋興業(現ヒューリック)社長。65歳。