2014年

5月

13日

ワシントンDC 2014年5月6・13日合併号

 ◇政治献金規制に違憲判決 金権選挙が加速する懸念

 

堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 

 米連邦最高裁判所は4月2日、個人ができる政治献金の総額規制を違憲とする判決を下した。連邦選挙資金規正法が定める上限の設定が、合衆国憲法修正第1条の「表現の自由」の行使を不当に制限するものであるとして、9人の判事が5対4で評決したのである。

 選挙資金規正法では、個人が選挙に際して献金できる金額を、1人の候補者に対し2年間で5200ドル(予備選挙と本選挙で各2600ドルずつ)、政治資金管理団体に対し5000ドルと定めている。個人が複数の候補者と政治資金管理団体に献金できる総額の上限については、各4万8600ドルと7万4600ドルとなっていた。

 今回の判決によって、1人の候補者や政治資金管理団体に対して献金が認められる額の上限は、そのまま維持される。一方、複数の候補者や団体に対して行える献金総額の上限は取り払われることになる。すなわち、資金に余裕のある富裕層が望めば、より多くの候補者や政治資金管理団体に対して献金を行うことが可能となる。

 富裕層に支持基盤の多い共和党からは、最高裁の判断をおおむね歓迎する声が上がっている。代表的なのが「自らがどれだけ多くの候補者を支持するかを選択する権利は、個人に帰属する」(ミッチ・マコーネル上院院内総務)といった意見だ。

 

 ◇徐々に外れてきた歯止め

 

 一方、汚職撲滅のためには献金上限の設定が必要であると、かねてより主張してきたオバマ政権や民主党の主張は退けられた格好だ。ナンシー・ペロシ下院院内総務(民主党)は「これが現在の最高裁が歩んでいる(誤った)路線である」と失望の意を表している。

 米国では、個人以外の企業や労働組合といった団体が政党や政治家に直接献金を行うことが禁じられている。そのため、通常は「PAC」(政治活動委員会)と呼ばれる全国規模の政治資金管理団体が組成され、富裕層などから5000ドルを上限に資金を集めて献金をする仕組みとなっている。また、複数の団体や政治家に対して行える献金の総額にも上限が設けられていたことで、個人が選挙に及ぼし得る金銭的な影響力には一定の歯止めがかけられていた。

 ところが、同じく連邦最高裁が2010年に下した「シチズンズ・ユナイテッド判決」では、特定の候補者や政党と直接協力関係にない政治活動であれば、献金額に限度を設けてはならないとの命令が下された。「表現の自由」の観点からである。

 この結果、多額の献金を集める「スーパーPAC」が組成されるに至った。メディアを駆使してある候補の誹謗中傷活動を行うといった活動も、特定の候補者や政党と直接協力関係にない政治活動となるため、12年の大統領選挙は、相手陣営に対する猛烈なネガティブ・キャンペーン合戦が従来以上に繰り広げられた。選挙にかかる資金も、いっそう多額に及ぶような状況になった。

 今回の最高裁の判決には、少数意見という扱いではあるが「シチズンズ・ユナイテッド判決」と共に「米国の選挙資金規正法が事実上骨抜きにされている」と付された。5対4という僅差での評決は、現在の最高裁における保守・リベラル各派の判事の勢力をそのまま反映したものとなったが、これが共和・民主両党の選挙活動に与える影響度の違いは、より大きなものになるかもしれない。

 所得格差が広がる米国社会において、富裕層による選挙への影響力が増すことはどのような結果をもたらすのか。11月の中間選挙や、今後の大統領選挙の動向が注目される。