2014年

5月

13日

経営者:編集長インタビュー 宮﨑俊郎 三井海洋開発社長 2014年5月6・13日合併号

 ◇海洋油田の深海技術で存在感

 

 三井海洋開発は、石油メジャーなどが開発する海洋の石油・天然ガス田から石油・ガスを回収する「浮体式石油・ガス生産・貯蔵・積み出し設備」(FPSO)の建造やオペレーションを手掛ける。油価の暴落などで1988年にいったん会社清算に追い込まれたが、FPSOなどに特化した事業展開で、今では深海開発で世界的に欠かせない存在になっている。

 

── 2013年12月期は、売上高、経常利益、受注高が過去最高を記録、今期も好調です。

宮﨑 陸上や浅い海での油田開発が少なくなり、当社が得意とする深海エリアでの開発が活発化しているためです。

 当社が大型受注に成功しているブラジルやガーナでは、00年過ぎから続けざまに大深海に大型油田が見つかっています。南アメリカとアフリカは、昔は一つの大陸としてつながっていて、両大陸の深海からは同じ化石が見つかっています。ブラジル沖の深海で大油田が発見された後、アフリカ大陸の西側の深海でも探査が進み、大油田が発見されました。

 当社の最大の強みは、深さ1500~2000メートルの深海にある油井の洋上で、天候気象にかかわらずFPSOを一定位置に安定させることができる「係留技術」です。さらに、海底の下5000~6000メートルの地中から水や砂が混じった油を吸い上げる「揚泥システム」、吸い上げた油から砂や海水などの不純物を取り除く洋上の「プラント設備」技術。この三つの技術を用いて一体的に設備を組み立て、運営できるのが当社の強みです。

 これらの技術を持っているのは、当社とオランダのSBMオフショア社だけ。ブラジルの大深海案件は、2社でシェアを二分しています。

 ブラジル国営石油会社のペトロブラスは、我々2社が仕事を独占して立場が強くなるのを嫌がり、国際競争入札案件では、最低5社に入札を呼びかけますが、いつも残るのは2社だけです。

── 大深海のノウハウは昔からあったのですか。

宮﨑 東南アジアで90年代からFPSOを手掛けていたので技術はありました。ただし、深さ100~300メートルの海で、油田も小ぶり。このため東南アジアに拠点を持つ事業者など参加プレーヤーが増えて受注環境が悪化しました。そこで、ブラジルの大深海プロジェクトが明らかになった05年、思い切って飛び込んだのです。技術的に未知なところもありましたが、当時の経営者の決断によって、今日の我々があります。

 

 ◇受注体制を拡大

 

── 受注環境は絶好調?

宮﨑 ペトロブラスは投資意欲が旺盛で、石油生産体制を13年の日量230万バレルから20年までに430万バレルに引き上げる計画です。

 一方FPSOは、最大級でも1基当たり日量10万バレル程度の回収能力です。したがって200万バレルも増産するには、20基は必要です。当社もSBMも、現状では年間2基くらいしか受注できませんから、今後当社は、2年間で5基受注できる体制にしたいと考えています。

 そのためここ3年間、プロジェクトマネジャーや、その配下のスケジュールコントローラー、リードエンジニアなど大きなプロジェクトを任せられる人材の増員を図ってきました。当社の全社員数は約3000人ですが、国籍は実に多用で、米国、インド、シンガポール、アイルランド、ペルーなど全部で23カ国。日本人は220人程度しかいません。コンプライアンスや安全基準などのマニュアルは7カ国語分あります。

 

 ◇期待のFLNG

 

── 売り上げの創出にも工夫しています。

宮﨑 FPSOを建造し、ペトロブラスなどに売って終わりではなく、リース方式が増えてきました。その際、1基1000億円以上もするFPSOを当社1社だけで所有するのはリスクが高いので、三井物産、商船三井、丸紅などと特別目的会社(SPC)をつくり、そのSPCが銀行融資を受けて所有します。東南アジアの会社ではこうしたファイナンススキームはつくれません。技術力に加えて資金調達力も、競争力の源泉になっています。SPCへの売却、リース、オペレーション。この三つが当社の収益源です。

── FPSOの建造はどこで?

宮﨑 基礎部分は中国、シンガポールなど、その時々に最もコストが安い造船所でつくり、それを油田まで運んで最終組み立てをします。生産設備を持たない当社には熟練工はいませんが、エンジニアリング力は鍛えられます。

── FPSO以外でどのような事業に注目にしていますか。

宮﨑 今後は、海上で採取した天然ガスを液化して運搬する洋上液化天然ガス設備(FLNG)のプロジェクトが活発化してくるでしょう。まだ、最終投資決定が決まったものは2~3件しかなく、手探り状態にありますが、これが今後の天然ガス開発の大きな潮流となるのは間違いありません。

 また、日本は世界第6位の排他的経済水域を持つ海洋国家です。今後、メタンハイドレートやレアアースについて、国レベルの探査に続き商業生産が始まるとすれば、当社が技術面で貢献できるチャンスは大いにあると考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=内田誠吾・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 三井造船で予算編成などの管理会計畑にいて、全社の経理システムの統合をプロジェクトリーダーとしてやりました。4~5年かかったと記憶しています。

Q 最近買ったもの

A 米ヒューストンに出張するとき、よくゴルフクラブを探して買います。向こうの方が安いので。あと、カメラが好きで、アナログカメラもよく使います。新しいカメラを物色しているところです。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフ。年間40回くらいはしています。

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 ■人物略歴

 ◇みやざき・としろう

 岡山県出身。1972年慶応義塾大学商学部卒業後三井造船入社。経理部長、経営企画部長などを経て2007年取締役。08年3月三井海洋開発取締役。11年3月より現職。64歳。