2014年

5月

20日

エコノミストリポート:『百年の孤独』は時代と国境を超えた南米の文豪ガルシア・マルケス死す 2014年5月20日号

 ◇大衆も知識人も虜

 

野谷文昭(名古屋外国語大学教授)

旦敬介(明治大学教授)

 

 ノーベル賞作家のガルシア・マルケスが4月17日、87歳で亡くなった。南米コロンビア出身の彼は、どのように世界的ベストセラーを生み出し、世界にどういう影響を与えたのか。2人のラテンアメリカ文学者が解説する。

 コロンビア出身の作家ガブリエル・ガルシア・マルケス(愛称ガボ)は、ラテンアメリカという地域に深く根ざしながらも普遍性を備えた小説を長年にわたって書き続けた。ただし、完璧主義を自認する彼は言葉の彫琢(ちょうたく)にこだわったため、いわゆる多作な作家ではなかった。だが、批評家や研究者によってしばしば魔術的リアリズムと呼ばれる、現実を幻想的に感じさせる独特の語り口によってブエンディア一族の年代記を語った『百年の孤独』(1967年)は、インテリから大衆まで幅広い読者を獲得するという快挙を成し遂げ、その作品はスペイン語圏を越えて世界中の人々を魅了した。

 代表的長編には他に、孤独な独裁者を主人公とする実験的小説『族長の秋』(75年)や、若き日の恋を老年になって成就させる男女の愛の物語『コレラの時代の愛』(85年)などがあるが、いずれも趣向を凝らし、発表するごとに話題を集めた。82年にはノーベル文学賞を受賞し、人気のみならずその文学的価値が高く評価された。………