2014年

5月

20日

ワシントンDC 2014年5月20日号

 ◇弱腰批判も世論は厭戦気分 オバマ外交がぶつかった壁

 

今村卓

(丸紅米国会社ワシントン事務所長)

 

「米国はもっと積極的に国際問題に関与すべきだ」。このような批判がオバマ米大統領に向けられている。昨年はシリアへの軍事介入を結局見送り、今年はロシアによるクリミア編入を結果として許してしまった。だが大統領は、批判の先鋒に立つ評論家や共和党議員は何も分かっていないと、うんざりしているようだ。

 日本から始まったアジア4カ国歴訪の最後の訪問先となったフィリピン。現地で4月28日に開かれた記者会見において、オバマ大統領は苛立(いらだ)ちの表情を隠さず、強く反論した。

 イラクとアフガニスタンで、軍や財政に膨大な負担を発生させた長期にわたる戦争を経験したばかりなのに、なぜ軍事力を行使したがるのか。こうした批判を生み出す思想が、これまでどんな結果をもたらしたのか──。大統領はそう語り、外交優先の自身のアプローチを擁護した。

 開き直りともとれるこの発言は、日本で尖閣諸島が米国の防衛義務を定める日米安全保障条約の適用対象になると明言し、フィリピンでは新軍事協定の締結に至った「実績」と比べ、当惑を感じさせるものだった。今回の歴訪での実績こそ、オバマ政権の中国に対する弱腰や空虚なアジア・リバランス(再均衡)といった批判を跳ね返す、新たな一歩になるとの見方が広がっていたからである。

 

 ◇超大国の役割望む同盟国

 

 しかし、その2日後に発表された政権の外交政策に関する世論調査の結果は、オバマ大統領がそう言わざるを得なかった理由を明確に示すことになった。「国際問題に関する米国の役割を小さくすることを望む」との回答が全体の47%を占めたのだ。

 国民の厭戦(えんせん)気分の強さは、昨年実施された別の世論調査でも同様の回答が5割強を占めたことですでに示されていた。問題は、ロシアのクリミア編入という米国外交にとっての失態を経ても、国民の意識が変わらないことである。

 この世論の強固な厭戦気分と内向き志向が、政権の外交政策の選択を非常に難しくしている。同じ世論調査では、外交政策に対する支持率が38%と過去最低に落ち込んだ。その要因は内向き志向とロシアに対する弱腰批判という二つの面がある。

 つまり、現状は、幅広く世論の支持を得られる外交政策がない状態だ。それなのに、オバマ政権を批判する外交評論家やタカ派の共和党議員は、世論の強い厭戦気分をどう乗り越えるのかには全く言及せず、自らの専門分野の外交だけに専念して、積極的な国際問題への関与を求めている。

 ただ、大統領の外交政策も、世論を重視すればするほど、米国に超大国としての役割を求める同盟国の信頼を失いかねない弱みを抱えてしまっている。そこに生じる脆弱(ぜいじゃく)性に好機を見いだして、挑戦してくるロシアのプーチン大統領のような存在もある以上、現実重視のオバマ政権としてはその脆弱性をできるだけ露呈させないように対応せざるを得ない。

 この点では、外交評論家らの弱腰批判にも一理があり、オバマ政権としても現実味がないと切り捨てることはできない。だからこそ、今回のアジア歴訪では実力行使という裏付けを伴った同盟強化をオバマ政権は選択し、アジアへのリバランスの実践の第一歩としたのであろう。

 オバマ政権は、米国が超大国であることを求める同盟国と、そうでなくなることを求める世論のどちらとも向かい合って、外交政策を決めざるを得ない。この同盟国と世論の矛盾が早期に解消するとは考えにくい以上、オバマ政権の外交政策もその任期末まで、ぎこちない歩みを続けることになると思われる。