2014年

5月

20日

経営者:編集長インタビュー 菊地唯夫 ロイヤルホールディングス社長 2014年5月20日号

 ◇既存店に重点投資しファミレス復活

 

 ロイヤルホールディングスは、①ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を中心とする外食(売上高占有率約50%)、②空港ターミナルビルや病院などの飲食・物販施設の展開を受託するコントラクト(同25%)、③機内食(同7%)、④ホテル(同15%)の4事業を中心に展開している。

 

── 2013年12月期は2期連続の増収増益でした。好調の要因は?

菊地 外食産業が1997年以降、右肩下がりで推移する間、当グループは増収減益と減収増益を3~4年単位で繰り返してきました。なぜか。既存店の売上高が前年を割ると、新店を出して売上高を増やしますが、新店はすぐには利益を増やせないため増収減益になります。これが数年続くと利益が枯渇するので不採算の店を閉め、新規投資を凍結する。すると減収増益になります。この構造から脱却するには既存店の売上高を伸ばす必要があると、09年ごろから既存店への積極投資を始めました。

── 具体的には?

菊地 09年末はロイヤルホストの国内281店舗の4分の1が赤字か赤字すれすれでした。そこで「どういう商品とサービスを提供するのか」という定義を再構築し、それができる店のみ存続させ、できない店はやめることにしました。やめ方は二つあり、どの業態に変えても生き残りが難しければ閉店。立地などから生き残れる店は「カウボーイ家族」(ステーキとハンバーグのファミレス)に転換しました。残った店に70億円を投じて、改装や人のトレーニングをした結果、前年の売上高を超えるようになりました。

 ファミレスを支持してくれる団塊の世代が65歳を超えて、貯蓄性向から消費性向に変わりつつあることやアベノミクスも追い風です。

── 2000円前後する高価格のステーキが好調とか。

菊地 はい。ロイヤルホストは調理にこだわりを持っていたのに、既存店売上高が前年を割り続ける中でコストを削減し過ぎました。3人でやるべき作業を2人でしたり。それで負のスパイラルに入り脱却できなくなっていったのです。

 02年4月から09年まで定期採用を凍結したので、店長など働き盛りの中堅社員は、すごく層が薄い。これが会社の潜在成長率を引き下げています。そこで10年から採用を再開して今年は62人が入社しました。国内店舗数はピーク時(99年)の377店から229店(4月末)まで減りましたが、来年から少しずつ店舗も増やすつもりです。

 

 ◇外国人に人気の「てんや」

 

── 天丼チェーンの「てんや」を現在の130店から22年までに400店にする目標を掲げています。

菊地 増収増益を確実に達成するには、ロイヤルホストの再構築とともに「成長エンジン」を伸ばす必要があります。

 成長エンジンとなる事業には三つの要素があり、一つは少子高齢化への対応です。てんやはシニア層に評価されています。世帯人数が少なくなると、自宅で揚げ物をすることが減ります。てんやの売上高の30%はテークアウトです。二つ目の要素はブランドが陳腐化しないことで、ファストフードはブランドの陳腐化に抵抗力があります。三つ目は資産の効率的な活用。てんやは400店のうち200店を直営、残り200店を国内外のパートナーとのフランチャイズ方式で増やす考えです。

── てんやは外国人に好評とか。

菊地 今後を考えるもう一つのキーワードは外国人旅行者です。都内中心部の店は外国人客の方が多いときもあります。本場のちゃんとした天ぷらを500円で食べられることが人気を呼んでいるのです。400店のうち100店は海外店にする予定で、当面は東南アジアに出店していくつもりです。

── コントラクト事業は?

菊地 先述した事業の三つの要素で考えるととても有望です。まず病院や老人ホームは高齢化に対応しています。陳腐化するようなブランドも、そもそもない。また、我々は事業を受託するだけなので固定資産は増えません。昨年からはハラル(イスラム教徒が口にできる料理)の実験を始めました。機内食でのハラルのノウハウを生かして、医療ツーリズムを推進する大阪の病院の患者食などの事業を受託しました。

── 機内食は?

菊地 国際的な機内食監査会社による50カ国・300カ所の工場の監査で、当グループの機内食会社が食品の安全と品質で12、13年度の世界一になりました。競争は厳しいですが、格安航空会社の人気が高まるほど既存の航空会社は食で差別化するはずで、我々にはチャンスです。

── ホテルも好調とか。

菊地 当グループが運営するリッチモンドホテルは、調査機関によると「1泊9000~1万5000円未満」の部門で8年連続日本一です。お客様のリピート率が高いのが最大の強みです。ホテルは今後毎年1~2ずつ増やす予定です。

── 金融業界から転身して印象深いことは。

菊地 創業者の素晴らしいのは、外食を産業化したいという強い思いがあったことです。ただし、当時と今の産業化の方程式は違います。今の時代に合った産業化のモデルを考えています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=中川美帆・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 前半は日本債券信用銀行の東郷重興頭取(当時)の秘書をして、金融危機の荒波にもまれました。後半はドイツ証券の投資銀行部で企業のコンサルタントや資金調達、合併・買収のアドバイザーなどをして、外資系の最先端の金融技術にふれました。

Q 最近買ったもの

A 増税前に、電動式のソファを買いました。

Q 休日の過ごし方

A 息子が3人いて一番下が小学5年生なので、そのサッカーの応援に行きます。あとは犬の散歩と仕事。書類は土日に作ることが多いですね。

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 ■人物略歴

 ◇きくち・ただお

 神奈川県出身。1988年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、日本債券信用銀行(現 あおぞら銀行)入行。2000年ドイツ証券入社。04年ロイヤルホールディングス入社。10年3月から現職。48歳。