2014年

5月

27日

ワシントンDC 2014年5月27日特大号

 ◇足踏み続くIMF組織改革 「米国抜き」を求める声も

 

須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 4月中旬、ワシントンで国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合が開催された。この場で関心を集めたのが、経済危機に直面するウクライナへの支援策とIMF改革の行方だった。

 IMFは4月30日の理事会で、ウクライナに対し、向こう2年間で約170億ドルの融資枠の設定を決めた。このようなIMFの融資財源は、IMF加盟国が払い込むクォータ(出資割当額)が中心となる。クォータは加盟国の世界経済における相対的な地位を基に決められる。加盟各国の政府は、金融危機後の2010年、クォータの規模倍増と、今の経済力に応じて新興国のクォータ配分と投票権を高めることで合意した。

 しかし、この改革案は、重要決議案の拒否権を有する米国の国内で、必要な議会承認が得られない状況が続いており、合意から4年経過した現時点でも成立に至っていない。ウクライナ危機に際して、IMFによる支援への期待が高まる中、今回の春季会合の場で各国は、IMF改革の遅延にしびれを切らし、議会承認が得られない米国への不満を噴出させたのだった。

 改革案が実行されれば、中国をはじめとして新興国のクォータ配分と投票権が増え、先進国の比率は低下する。ただ、米国は15%を超えるクォータと投票権(拒否権発動が可能)を維持しており、実は米国にとって受け入れやすい内容だ。オバマ政権は10年の改革案を支持しているが、同年秋の中間選挙で共和党が下院の多数派を占めるに至り、主に共和党保守派の反対で議会による予算措置等の承認が得られていない。

 

 ◇G20などは「深く失望」

 

 今回のウクライナ危機にあたって、米国は債務保証10億ドルを含む支援策を決定している。今年3月にこの法案が民主党が多数を占める上院で諮られた際、IMF改革受け入れに必要な措置も盛り込まれていた。

 だが、共和党保守派の強い反発を受け、最終的に上下両院で可決された法案からはIMF改革に関する条項が削られた。これに対し、ルー財務長官は、IMFの国際通貨金融委員会(IMFC)における声明文の中で、「議会がIMF改革に必要な措置をウクライナ支援法案に盛り込まなかったことに深く失望している」と述べている。

 結果として、IMF改革に対する議会の承認が得られなかった米国に対し、20カ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議(G20)やIMFCは「深い失望」を表明するとともに「最も早い機会に」批准するよう促している。さらに、14年末までに批准されなければ、IMFに対し、次のステップについての選択肢の策定を求めると表明、米国抜きでの改革を模索する可能性を示唆した。

 米国内でも、識者の中で同様の意見が見られるようになってきている。かつて財務次官補を務め、ワシントンの有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所の前所長であるフレッド・バーグステン氏は、『フィナンシャル・タイムズ』紙への寄稿において、米国がこれまでIMFで主導的役割を果たしてきたことを認めつつも、米国内で議会承認が得られないのであれば、「IMFは米国抜きで改革を前進させるべき時に来ている」と主張している。

 同氏も指摘しているが、オバマ政権が10年の合意後、IMF改革批准に向けて、必ずしも国内で迅速かつ十分な議会対応を行ってこなかった面はある。しかし、欧州危機の経験や現下のウクライナ危機を前に、世界経済安定化のためのIMFの役割と改革の緊要性は高まっている。米国議会には党派対立を超えた対応が求められている。