2014年

6月

03日

ワシントンDC 2014年6月3日特大号

 ◇気候変動対策で巻き返し 陰の主役はポデスタ氏

 

篠崎真睦

(三井物産ワシントン事務所長)

 

 オバマ米大統領は5月9日、カリフォルニア州マウンテンビューにあるウォルマート店舗で演説し、二酸化炭素(CO2)排出量削減とエネルギー効率改善を目的とした新たな行動計画を発表した。オバマ政権は今、気候変動・環境対策の推進に再び重点を置きつつある。

 発表された計画は、連邦政府の建物の省エネ化に3年間で20億ドルを投資するほか、太陽光発電産業で2020年までに5万人の雇用を創出するといった内容だ。計画にはアップルやグーグルなど300以上の企業・公共団体が協力し、最終的には3億8000万トン超のCO2排出削減を目指す。

 また、この日は、シェールガスやシェールオイルの採掘技術「水圧破砕法(フラッキング)」に使用する液体物の内容について、環境保護庁が化学品メーカーなどに情報公開を義務付ける案も公表された。フラッキングでは化学薬剤を混ぜた大量の水を用いる。それが地下水などの汚染を招くと懸念されている。現在、フラッキング規制は州当局が担っているが、同案では連邦政府レベルで監督を担う。

 就任時からオバマ大統領は気候変動・環境対策に積極的だった。政権によると、オバマ大統領就任後、米国での太陽光による発電規模は10倍に、風力は3倍に増えたという。しかし、議会では包括的気候変動・エネルギー法案の通過に頓挫し、エネルギー省が融資した太陽光発電パネルの新興メーカー、ソリンドラ社の経営破綻(11年)などで厳しい追及を受け、動きが鈍化しつつあったのも事実だ。

 だが、昨年6月、議会の承認が不要な環境保護庁による規制の権限強化等に踏み込み、今年1月下旬の一般教書演説では14年を「行動の年」と位置づけるなど、巻き返しを図っている。

 

 ◇環境保護庁の権限を駆使

 

 足元の政策に強い影響力を与えている人物として、昨年12月に大統領上級顧問に就任したジョン・ポデスタ氏の存在が挙げられる。

 同氏は、クリントン大統領の首席補佐官を務めた後、03年にリベラル政策実現を目指す民主党系シンクタンク「アメリカ進歩センター」を創設。同シンクタンクはオバマ政権の「人材銀行」と呼ばれるほどになっている。

 ポデスタ氏は環境保護庁による環境規制権限を駆使して、気候変動対策を実現する政権戦略の進言者だ。新設火力発電所のCO2排出量上限で厳しい新基準の導入、複数の州にまたがる大気汚染物質の排出規制権限の活用などに乗り出した。米メディアはこの動きを「石炭業界との戦争」と報じたが、環境保護庁は石油ガス開発時に発生するメタン排出削減に乗り出すことも検討中だ。

 オバマ政権の任期も残すところ2年半。特に今年11月は政権として最後の中間選挙を控えており、経済回復・雇用創出にプラスとなるシェールガス生産を容認・支持する一方で、民主党の支持団体でもある環境保護グループなどにも配慮する姿勢を強めている。

 この点について、ポデスタ氏は石炭などに比べてCO2排出量の少ない天然ガス(シェールガス)の利用拡大を評価しつつ、「天然ガスは化石燃料から太陽光や風力といった再生可能エネルギーで賄える世界へと移行する間のブリッジ(橋渡し役)」と説明し、政権のスタンスを代弁する。

 気候変動対策に向けた実績作りと中間選挙での民主党勝利。この重要課題をクリアするうえで、経験豊富なポデスタ氏の政治手腕も試されていると言えそうだ。