2014年

6月

03日

特集:中国の少数民族 2014年6月3日特大号

 内陸部の経済成長が生む「怒れるウイグル族」

 

大西広

(慶応義塾大学経済学部教授)

 

 昨年10月28日、北京市の天安門前でウイグル族過激派の乗った車が突っ込み炎上するという事件が起こった。私はちょうどその時、そこからわずか3キロメートル程度の場所にいた。その夜のテレビのニュースでもこの事件が報じられはしたものの、何のことやらわからなかった。

 この事件が世界の主要紙で報じられたのは、中国共産党3中全会の直前に北京の中心地で起きたためだ。実は、多くの死者を出すようなテロや衝突は新疆ウイグル自治区南部ではもはや日常化しており、天安門前事件が特別なのは、それが北京の中心地で起きたためにすぎない。今年3月の雲南省昆明駅での殺傷事件や4月末のウルムチ駅での「自爆テロ」は大きく報じられたが、これらの目立つ事件の犯人の狙いは、新疆ウイグル自治区の南部地区で日常的に生じている衝突を世間が無視していることへの「抗議」であったとも言える。

 もちろん、一般住民を巻き込むテロが許されてよいはずはない。加えて、これがより一層の「弾圧」を生み、すべてのウイグル族がテロリストと疑われるような事態を生んでいるとしたら、なおのこと黙認するわけにはいかない。私は自分の育てた大切なウイグル族研究者が新疆自治区に3人もいるので、この点をもっとも恐れる。民族紛争の負の連鎖からどう脱出するか、ここは相当の覚悟が求められるところである。………