2014年

6月

03日

特集:負けない投資術 第1部 投資信託・ETF編 2014年6月3日特大号

 ◇資産目減りを防ぐ投資術 物価上昇に強い金融商品とは

 

服部哲也

(マイベンチマーク取締役)

 

 日経平均株価は5月22日、前日比295円高の1万4337円をつけ、年初来安値(4月14日の終値1万3910円)に比べると回復しつつある。

 また、日銀が4月末に発表した消費者物価指数上昇率予想(生鮮食品、消費増税の影響を除く)によると、2015年度は1・9%、16年度は2・1%と、日銀の黒田東彦総裁が目指す「2年で2%」という目標に向けて上昇する見通しだ。

 だが、資産運用にとって“最大の敵”は、インフレ(物価上昇)だ。物価上昇とはつまり、貨幣価値の下落である。例えば年率2%のインフレの場合、今1万円で買えるものが来年は1万200円出さないと買えなくなるわけだから、今の1万円は来年には1万円の価値がなくなってしまうことを意味する。日銀の目標通りインフレ率が年2%になれば、年2%を上回るリターン(運用益)を上げなければ、お金の実質的な目減りを防げない。投資は資産防衛のため、避けて通れない。

 では、お金にはどのように働いてもらったらよいのか。また、インフレが起きた場合、債券や株式などの価格がどのように動くのかを確認しておこう。

 

 ◇当面有利なのは株式

 

 預貯金は当然、インフレに弱い。それでは、確定利付きの債券はどうだろうか。一般に、インフレには金利の上昇が伴う。だが、金利(利回り)が上がれば債券価格は下がる。債券というのは、例えば「元本100円に対して年当たり2円の利子を支払う」と書いてある借金の証文だから、金利が3%に上がったとしても、支払う利子の額は2円のままだ。そのため、元の利回り2%を3%に引き上げようと思えば、証文、つまり債券の価格を引き下げなければならないからだ。金利が上昇すれば債券の価格は下がり、満期までの期間が長い債券ほど値下がりが大きくなる。

 次に、株式はどうか。「インフレ時には株式投資や不動産投資が有利だ」という一般的なうたい文句がある。確かに、企業収益が伸びる、つまり景気が良くなって物価が上昇するようなインフレの場合には、株式投資のリターンが高くなる可能性は大いにあると言える。ただし、常に株式が有利というわけではない。例えば、原油などの輸入原材料価格の上昇によるインフレの場合、国内企業の利益が圧迫されることで株価にはマイナスに作用する可能性が高い。また、金融引き締めによって企業収益の伸びよりも金利の上昇幅が大きくなるようだと、株価にとってはマイナスだ。

 だが、日本では現在、景気が回復してインフレになったとしても、すぐに金融引き締めに転じることは考えにくい。当面は、株式投資にとって不利なインフレに陥るような可能性は低いと考えてよいだろう。

 

 ◇複数国に分散する投信を

 

 以上を踏まえ、インフレに備えて、どのような金融商品を選べばよいか。最も有望と考えられるのは、株式ということになる。自分で異なる業種の株式を数銘柄買ってポートフォリオを作れれば一番良いが、これは初心者にはハードルが高い。

 そこでお勧めするのが、投資信託(ファンド)だ。投資信託とは、多数の投資家から集めた資金を一つにまとめて、それを投資の専門家(ファンドマネジャー)が主に株式や債券などの有価証券に投資し、それによって得られた収益を投資家が出した資金の額に応じて配分する金融商品だ。有価証券への投資は、一企業の株式のみではなく、数十~百銘柄に分散して投資することで、リスクの低減も図ることができる。特に外国株に投資する場合、直接投資するのに比べて管理に関する煩わしさはなく、コストも安くなるというメリットもある。

 中でも初心者には、株式のインデックスファンドがお勧めである。インデックスファンドは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの市場平均との連動を目指す運用を行うファンドである。なぜお勧めなのかというと、販売手数料や信託報酬(ファンドの運用手数料)が安く、値動きの情報も得やすいからだ。インデックスファンドを買う場合の注意点としては、業種やテーマを絞った指数に連動するファンドではなく、TOPIXのように株式市場全体の動きに連動するファンドを選ぶこと。その場合、無意味だから複数のファンドは買わないことだ。

 一方で、市場平均よりも高いリターンを目指すアクティブファンドというものもある。しばしば「上昇相場の時はアクティブファンドの方が断然有利」という説を目にするが、これは間違いだ。市場平均に勝つか負けるかは五分五分だし、運用コスト(信託報酬)はインデックスファンドの方が断然安い。

 実際、アクティブファンドの運用成績の平均値はインデックスファンドの成績に劣るという実証データもある。実は初心者・経験者を問わず、どのような状況にあっても、販売手数料や信託報酬などのコストが安いものを選ぶことが、最も賢明な運用方法だ。

 また、外国株についてもインデックスファンドを選ぶことをお勧めする。だが、購入に際する注意点として、先進国・新興国を問わず、一つの国ではなく複数の国(通貨)に分散するファンドを選ぶようにしてほしい。特に新興国は、通貨も含めて値動きが大きく、高いリターンを期待できる半面、ひとたび流れが変わると損失も大きくなる可能性も高いからだ。具体的な候補としては、日本を除く先進国の株式指数である「MSCIコクサイ」という指数に連動するファンドが良いだろう。

 

 ◇安全性高いMMFやMRF

 

「株式投資は元本割れのリスクがあるから嫌」「債券の方が株式よりも安全」という向きには、変動金利型個人向け国債がお勧めだ。利息は市中金利に連動して上昇するし、購入後1年経過すれば、途中で売却しても受け取った利息とトータルで元本割れにはならないからだ。

 また、国内債券で運用する投資信託ではあるが、MMF(マネー・マネージメント・ファンド)やMRF(マネー・リザーブド・ファンド)も、お勧めの商品の一つに挙げることができる。安全性が高い短期の債券のみで運用しているので、元本割れのリスクは少なく、インフレに伴って金利が上昇する場合でも、ある程度はこれに付いていけるからだ。

 もし国内のインフレ率が海外に比べて高くなったら、為替レートは円安になることが予想されるが、その場合は何に投資するのがよいか。外貨定期預金は、表面上の利回りは高いが、為替手数料が高いのでお勧めできない。最近ではネット銀行が為替手数料を安くしているものの、有利性が低いことは否めない。

 本格的に勉強する気がある人なら、FX(外国為替証拠金取引)が良いのだが、初心者には外貨建てMMFをお勧めする。元本保証商品ではないものの、国内のMMFやMRFと同様に、高格付けの短期債券を中心に運用しているので安全性が高い。加えて、利回りは外貨預金よりも高く、為替手数料は外貨預金のそれよりも安いからだ。

 最後に、身も蓋(ふた)もない話に聞こえるかもしれないが、「資産運用で生活を楽にする」とか、「セカンドライフを豊かに過ごす」といったうたい文句は、フィクションに過ぎない。ごくまれに例外はあるにしても、継続的かつ安定的に多額の運用益を上げることは不可能だと考えた方がよい。

 では、何のために資産運用や投資を行うのか。なぜなら、何もしないでいると、波が海岸線を浸食するように資産は実質的に目減りしてしまうからだ。投資は基本的には、目減りを防ぐために行うものだと考えよう。特に初心者や定年退職者は、一獲千金を夢見て無理なリスクを取らないように注意してほしい。