2014年

6月

10日

経営者:編集長インタビュー 中村謙一 リロ・ホールディング社長 2014年6月10日号

 ◇企業の「困りごと」を解決

 転勤者の留守宅を管理し、転貸する「リロケーション事業」を1984年にスタート。転勤で空き家となった持ち家を他人に賃貸したが、転勤終了後に明け渡してもらえないなどのトラブル解決にビジネスチャンスを見いだした。その後も、借り上げ社宅の管理や、契約企業に福利厚生サービスを提供する「福利厚生倶楽部」などの事業を展開。企業の人事総務業務を請け負うというスタイルを確立させた。

── 創業の経緯を教えてください。

中村 住宅設備会社を経営していた創業者(佐々田正徳・取締役会長)が、留守宅の問題で転勤者が困っているということに気づき、「誰かが解決しないと企業戦士が安心して転勤できない。日本にこの事業を生み落とそう」と始めました。企業の「困りごと」を解決しよう、本業に集中してもらおう、というのが我が社の始まりです。
 留守宅を賃貸するとしても、転勤者は賃貸のプロでもなく、ゆくゆくは帰ってくるので入居者に出てもらわないといけない。当時は定期借家法もない。これを転勤者同士で借り合って解決できないかと考えたのです。我が社が転勤者の留守宅をお預かりして、貸す相手が見つかったら転貸という形で間に入ってお貸しする。もしトラブルなどがあれば矢面に立って解決をします。細かい業務が多い分、管理費は通常の管理会社より多く、賃料の10%をいただいています。
 当時はリロケーションという言葉もありませんでしたが、地道に営業活動を続けた結果、現在、1万件弱の物件があり、そのうち約9000件に入居者がいます。
── 類似の企業はありますか。
中村 大手不動産も参入してこられましたが、多くが撤退しましたね。物件があちこちに散らばり、面倒な事業なんです。

 ◇企業の人事総務の代行

── 社宅の管理もしています。
中村 留守宅管理の延長線上で生まれた事業です。企業はかっては社宅や社員寮を自社で所有していました。しかし、景気低迷でその余裕はなくなり、土地と建物をデベロッパーに売却し、その賃貸住宅の一部を借り上げて社宅にするようなケースが増えてます。借り上げだと敷金の精算やオーナーとの交渉など、大量の業務があります。企業の人事総務にとって雑務なわけです。それを我々が一括で代行します、と。現在、約9万件を管理しています。
── 福利厚生事業のアウトソーシングもしていますが、どのようなメニューがあるのですか。
中村 この事業は、中小企業の社員にも大手企業並みの福利厚生を、という理念で始めました。ホテルやレジャー施設の割引利用から、育児や介護サービスなど、福利厚生関係のメニューはほぼ網羅しています。ガイドブックは当初10ページ程度の冊子でしたが、現在は約2センチの厚みがあり、メニューの充実が強みです。会員数は約434万人で、約8270社と契約しています。

 ◇第二の創業

── 海外赴任の支援も始めました。
中村 3年前から「第二の創業」として取り組んでいます。日本企業の世界展開の支援をさせていただこうという使命感から出たビジネスです。航空機のチケットやビザの手配、引っ越しなど赴任サポートは、国内でもたくさんあります。
 対応できる赴任国は60カ国あり、昨年は約2700世帯の赴任をサポートしました。
 そのうえで、アメリカなど一部の国では、我々が買収した現地の住宅斡旋会社やサポート会社が、住宅の斡旋や引っ越しの手配、家族が事故や生活トラブルに見舞われたときの通訳サポートなど細かい業務を請け負っています。まだ立ち上げ段階ですが、前々期に利益1億円を超えました。
── 企業の困りごとで新たに取り組もうとしている事業はありますか。
中村 企業の海外展開に伴い、外国人社員が年々増えていますし、海外から研修生を受け入れる企業も増えています。こうした外国人社員・研修生の日本での住宅や生活サポートのニーズが高まっています。これまでハイクラス層向けのサービスはありましたが、一般社員・研修生向けはなかった。これをいま我が社が一手にやっています。
── 業績好調ですが、社内の人材育成はどうしていますか。
中村 20代の若いうちからどんどん大きな舞台を与えています。創業者自ら約10年前に社長を退任し、「若いうちから鍛えないと事業は広がらない」という考えを実践しています。
 若いうちから事業会社の社長や取締役に就任させますので、自分で責任を持って計画を立て、事業に取り組まなくてはいけない。私も30代で事業会社の社長になりました。
 前期まで14期連続増収、5期連続最高益更新を達成していて、「2桁成長」は我が社の憲法です。高い目標を持たないと、よい発想は生まれません。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 20代後半で事業部の部長になりましたが、成長性が低いと、その事業は1、2年で解体されました。その後、30代後半になってリゾート事業を立ち上げ、2桁成長どころじゃすませない、倍々ゲームにするぞ、という気持ちで事業を伸ばしていきました。
Q 最近買ったもの
A 毎年5月にグループ会社の社員も集めた大会があり、それに合わせてスーツを新調しています。
Q 休日の過ごし方
A 我が社の「福利厚生倶楽部」のメニューを家族で楽しんだり、読書やゴルフをしたりしています。
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 ■人物略歴
 ◇なかむら・けんいち
 東京都出身。1989年明治大学経営学部卒業後、日本リロケーション(現リロ・ホールディング)入社。2004年10月リロバケーションズ社長。09年にリロ・ホールディング取締役に就任。10年10月から現職。48歳。