2014年

6月

17日

ワシントンDC 2014年6月17日号

 ◇米国も悩む道路老朽化問題 補修財源確保は待ったなし

 

堂ノ脇伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)

 

 米国を車で長距離移動すると、「インターステート」と呼ばれる州をまたぐ幹線道路など、大半の高速道路が無料であることに驚かされる。ところが、道路・橋梁(きょうりょう)等の交通インフラの老朽化が進んだことで、維持・補修の財源のあり方を巡って、さまざまな議論が沸き起こっている。

 米国の道路総延長は650万キロ超と日本の5倍以上に及ぶ。近年でこそ都市部周辺や橋梁、トンネルなどで一部有料化が進んでいるが、全米の道路に占める有料化の割合はわずかに過ぎない。650万キロのうち、約160万キロは「連邦補助道路」と呼ばれ、インターステートや都市部における幹線道路などが含まれる。

 この連邦補助道路の維持・管理自体は州などの地方政府によって行われるが、その費用には一定規模の補助金が連邦政府から充てられている。補助金の財源は1956年に創設された「道路信託基金(Federal Highway Trust Fund)」。この基金は現行、ガソリンなら1ガロン(約3・78リットル)当たり18・4セント、ディーゼルでは同24・4セントといった自動車燃料税によって賄われる。いわゆる道路利用者による「受益者負担」の原則が貫かれる仕組みだ。

 ところが道路の維持・補修にかかる費用は当初想定された税収をはるかに上回っている。結果的に連邦政府や地方政府が費用の一部を、一般財源から捻出せざるを得ない状況を招いてしまった。

 税収の伸び悩みは、燃料税率が20年以上の長期にわたり据え置かれてきたことや、近年の自動車の燃費性能向上などによるものだ。特にハイブリッド車や電気自動車などの普及は大きい。同じ道路を利用する受益者でありながら、ガソリン消費が少ないために費用負担の割合が低いのは不公平であるという議論すら起きている。

 

 ◇道路信託基金は枯渇寸前

 

 連邦議会予算局が5月に公表した試算によれば、「道路信託基金」の残高は早ければ今年8月に枯渇するという。フォックス運輸長官からも、地方政府への補助金の分配に遅れが生じる懸念が示唆されている。

 老朽化や昨冬の寒波の影響によって補修を必要とする道路や橋梁は数多い。利用者の安全性確保のためにも一刻も早い対応が求められている。また、補助金分配の遅れは新規の道路敷設等にも影響が出ることから、工事関連事業者を中心として70万人近い雇用にも影響を及ぼすとホワイトハウスは警告し、議会に対して早期の対応を求めている。

 まさに待ったなしの状況と言えるが、中長期の道路財源を定めた「陸上交通援助法」も、この9月末で失効する。議会では党派を超えて新たな法案策定の必要性が認識されているものの、道路財源確保の手段を巡っては意見が折り合わずに合意が見いだせない状況だ。

 自動車燃料税率を改定する案(連邦ガソリン税の増税案)に対しては、秋の中間選挙を控えて主に共和党内に反対意見が多い。一方、オバマ政権は税制改正によって企業が海外で得た収益への課税強化を通じて、向こう4年間で3000億ドル以上の財源を確保する提案をしている。ただ、今後長期にわたって交通インフラの質を維持するには、さらにその10倍以上の支出が必要との一部研究報告もある。抜本的な財源の見直しを求める声も大きい状況だ。

 全体的な流れとしては、走行距離に応じた通行料金制度のさらなる普及など、道路財源のあり方が大きく変わっていく可能性が高い。安全確保・維持のための道路補修は喫緊の課題であり、早期の対応が望まれるところだ。