2014年

6月

17日

経営者:編集長インタビュー 前田東一 荏原社長 2014年6月17日号

 ◇高い技術で石油化学プラント支える

 

 荏原は1912年にポンプメーカーとして創業、BtoBのビジネスを展開する。風水力事業、精密電子事業、環境エンジニアリング事業の三つの柱がある。

 

── 売上高の7割を占める風水力事業の事業環境は。

前田 ポンプ、コンプレッサー・タービン、冷凍機・冷却塔の三つの分野があります。足元はポンプとコンプレッサーの事業環境がいいです。

 なかでも勢いがあるのは、石油やエチレンのプラントに使われる気体圧縮装置のコンプレッサーで、売り上げの大部分を海外で稼いでいます。新興国向けが好調だったところに、北米でのシェールガスの生産開始が追い風になりました。

 シェールガスの産出によって米国の天然ガス価格は非常に安くなり、石油化学企業が大規模なエチレンプラントを次々と建設しています。コンプレッサーはプラントの主要部分です。5年前には想定していなかった巨大な市場の出現で、前期は受注の10~15%がシェールガス関連でした。今期は20~30%になると予想しています。

── 逆にポンプは、売り上げの7割が国内です。

前田 建築・設備向けの小型ポンプから石油・化学プラントや農業・河川の水インフラで使われるポンプまでさまざまなポンプを供給しています。国内市場は、建築市場の回復や公共事業予算の復活などで受注が増えているほか、原発の代わりに稼働が増えた火力発電所向けが今後期待できます。一方、海外は石油化学企業向けの需要が膨らんでいます。

 シェールガス関連でも、液化天然ガス(LNG)をタンカーに積み下ろしするときに使う「クライオジェニック」という特殊なポンプを製造しています。このポンプは荏原の強みで、世界シェアは6割を超えています。

 

 ◇競争力高いコンプレッサー

 

── コンプレッサー・タービンは、製品販売とアフターサービスを連携させることで売り上げ・利益ともに伸ばしています。一方でポンプはアフターサービス網の整備が遅れています。なぜですか。

前田 コンプレッサーは、最初から全世界を相手にビジネスを展開してきたことと、コンプレッサーが故障するとプラント全体が停止するほどの基幹部品であることが大きな特徴です。そのため製品の納入とアフターサービスを常にセットで手掛けてきました。世界各地に「サービス&サポート」拠点を作って、顧客をカバーしています。顧客側も、まずは製造元にアフターサービスを依頼する傾向があり、利益率も高い事業です。

 一方、ポンプ事業は国内で圧倒的なシェアを誇り、当初はほとんど国内向けでした。何かあっても、すぐに顧客のもとへ飛んで行けたので、アフターサービスの体制を作るという発想がなく、海外でもサービス拠点の展開が遅れました。メンテナンスの要請があれば、日本から技術者を派遣していたのです。

 ところが最近は、海外の地元企業や競合メーカーがポンプの修理やメンテナンスを受注するケースが増えてきました。そこで、利益率の高いサービス分野を他社に取られないようにと対応を急いでいます。例えば淡水化設備が多い中東には5000台以上のポンプを納入しているので、2カ所に拠点を作りました。バーレーンに技術者3人と営業マン2人を置いたところ、問い合わせが殺到しました。これまで相当の機会損失をしていたとも言えます。

── 精密電子事業はどうですか。

前田 半導体と非半導体の2分野に分かれます。半導体では主に二つの製品があります。一つは、半導体製造装置に使われる真空ポンプを中心とした「コンポーネント」、もう一つはシリコンウエハーを磨き上げる「CMP」です。一方、非半導体は太陽光パネルやLED(発光ダイオード)です。非半導体は参入企業が多く、事業環境が厳しくなっているため、半導体の方に注力しています。なお半導体事業は、市場環境が悪化しても、そこそこの利益が出せる筋肉質の体質になっています。

── 環境エンジニアリング事業の最近の傾向は?

前田 もともとごみ焼却施設の建設を行っていましたが、現在は約70の自治体が運営する既存施設の運用・管理も引き受けています。自治体は財政難から施設の運営を委託し始めています。新設と長期間のメンテナンスを含めた「長期包括契約」がトレンドになっており、そうした需要に応えていきたいです。

── 事業のグローバル化に伴う社員の育成は?

前田 5年前に新卒採用では外国人を最低2割は採るようにしました。事業フィールドが世界に広がるのに合わせて人材の国際化、多様化も必要と考えたからです。すべて本社採用で、国内の拠点に配属します。給与や勤務地、昇進など条件も全く同じです。入社後の新人研修では、まず日本語を覚えてもらいます。面白いのは、新人だけで議論をさせると、最初は英語で話しているのが、半年ほどたつと日本語になっていることです。外国人の方がハングリー精神が旺盛です。

── 今後の目標は。

前田 ポンプ事業は、かつては世界トップ3の一角でしたが、欧米メーカーの再編で現在は6~7位です。これを2020年までにトップを狙える位置に戻すことを目指しています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 入社後はポンプの設計をしていましたが、30歳ごろセールスエンジニアになりました。30代半ばからポンプの輸出のため月1~2回、海外出張していました。当時はパソコンやメールもなく、大きなオーバーヘッドプロジェクターを担いでセールスをしていました。

Q 最近買ったもの

A 妻が使うアップルのスマホとタブレットを買いました。使い方に苦労しているようです(笑)。

Q 休日の過ごし方

A 走ったり山に行ったりするのが好きで、奥多摩や丹沢などによくハイキングに行きます。

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 ■人物略歴

 ◇まえだ・とういち

 1981年東京都立大学(現首都大学東京)大学院修了後、荏原製作所入社。2007年執行役員風水力機械カンパニーカスタムポンプ事業統括副統括。11年4月取締役。13年4月から現職。58歳。