2014年

6月

24日

経営者:編集長インタビュー 堀田直人 ニチバン社長 2014年6月24日特大号

 ◇高品質で使い勝手の良い絆創膏を追求

 1918年に絆創膏(ばんそうこう)や軟膏・硬膏などの製造から始まったニチバン。セロハンテープの代表的ブランド「セロテープ」の開発など「粘着」のメーカーとして事業を拡大してきた。絆創膏やスポーツ向けテーピング用品などのメディカル事業と、セロテープや包装材などのテープ事業が2本柱だ。絆創膏市場では「バンドエイド」のジョンソン・エンド・ジョンソンの存在が大きいが、シェア2位で猛追している。

── 救急絆創膏の現状は?

堀田 わが社は「オーキューバン」(現在はオーキューバンエコ)というブランドで展開していましたが、厳しい価格競争の中で「一歩進化したものを」と、通気性などに優れた「ケアリーヴ」を開発し、1997年から販売しています。また2012年には傷口から出た体液を保持して治すモイストヒーリング(湿潤療法)の「ケアリーヴ 治す力」を発売しました。
 昨年から、全国ネットで二十数年ぶりにテレビCMを始めました。品質の評価とCM効果もあり、かなりユーザーから評価してもらっています。トップブランドを目指して今後もさらに手を打っていきます。
── 絆創膏はどこで他社製品と差別化していますか。
堀田 全ての製品について言えますが、長い間ユーザーに支持してもらうには、きちんと作られているということが絶対に必要です。それに加え、水仕事をしていても取れないとか、はがした後の肌が白くふやけない、などの使い勝手の良さです。ヘビーユーザーである主婦層を中心に、どんな救急絆が好まれるか、どうしたら繰り返し購入してもらえるかを調査して、開発したのがケアリーヴです。従来は塩化ビニールを使っていたテープ部分に、繊維が高密度で細く通気性の良いウレタンを使用しています。使いやすく、かぶれがほとんどないなど、良い評価をいただいています。
 さらに、指先に合わせた形にしたものや、子供向けのサイズ、膝用などさまざまなサイズを作りました。また、傷口の血が固まりやすい特殊な素材を使ったものなど、品ぞろえの拡充でシェアアップにつながっています。

 ◇経皮吸収剤開発に注力

── メディカル事業で今後力を入れていきたいのは。
堀田 絆創膏と、鎮痛消炎の「ロイヒつぼ膏」、スポーツ向けのテーピング用品「バトルウィン」の三つを柱にしています。
 市場が大きく、伸ばしていきたいのはロイヒつぼ膏です。市場の中心はクールタイプですが、ロイヒつぼ膏は温感タイプです。今年4月にはクールタイプも出し、順調な滑り出しです。またバトルウィンは東京オリンピックを控えスポーツ熱も高まる状況なので、テコ入れを図っていくつもりです。
 この3年ほど、既存製品の短中期的なリニューアル開発と、中長期スパンの製品開発を明確に分けて研究しています。中長期では、(肌に貼ったテープから血中に薬剤が移行して全身に作用する)経皮吸収製剤に注力しています。年月も研究投資もかかりますが、会社の柱にしていくつもりです。
── 資本提携先の大鵬薬品工業との連携は?
堀田 医科向けの消炎鎮痛剤のロキソプロフェンナトリウムテープを開発しました。大鵬薬品さんは医科向けに強いので、今後も力添えをいただいて開発していきたい。最近のわが社の実績の一つです。

 ◇ヒット文具を狙う

── テープ事業はセロテープが圧倒的なブランドです。
堀田 毎年、何か工夫した新製品を出すようにしています。例えば、テープの切り口はぎざぎざのイメージがあると思いますが、まっすぐな切り口のものも出しました。こういう工夫をすると、お店で扱っていただけます。
 文房具分野では、両面テープを使いやすくした「ナイスタック」以降、当社発のヒット商品が出ていません。他社が、工業用のマスキングテープにプリント柄をつけて雑貨として売り出しヒットさせました。本来、こういう商品は、わが社が開発しなければいけなかったものです。知恵を絞れば新製品開発の余地はまだまだあると思います。
 一方、食品を束ねたりする農産用テープや建築用テープなどは、薄利多売で競争が厳しいうえに、円安による輸入原材料のコストアップで利益面では苦戦しています。売り上げに利益がついていく構造を目指します。
── 海外展開の現状は?
堀田 海外売り上げは、まだ全体の5%くらいで、テープ事業の製品がほとんどです。ただ、ここ4、5年で人員を倍くらいに増やし、絆創膏類に力を入れています。韓国やシンガポール、タイなどに進出しており、とくに韓国では、昨年はかなりの実績を出せました。
── 18年に創立100年を迎えますね。
堀田 14年3月期に6期ぶりに売り上げが400億円台に乗りました。数字だけを追いかける気はありませんが、悲願の500億円台を目指したい。お客様からの信頼感、企業としてのブランドを大切にしながら、次に向けての基盤づくりをしています。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=小林多美子・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 購買セクションにいましたが、独自に商品開発もしていました。上司が理解のある人で、就業時間以外はそちらに時間を費やしていました。
Q 最近買ったもの
A 中止になったポール・マッカートニーの来日コンサート入場券です。払い戻しをしようか、記念に残そうか悩んでいます。
Q 休日の過ごし方
A ラグビーかアメリカンフットボールかサッカーの試合を見に行きます。その予定がない時はゴルフで、家にいることはほとんどないです。
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 ■人物略歴
 ◇ほった・なおと
 1972年慶応義塾大学工学部卒業、ニチバン入社。製品開発グループ統括マネジャー、安城工場長などを経て、2004年7月取締役経営管理部長。05年6月から現職。64歳。