2014年

7月

01日

経営者:編集長インタビュー 三浦善司 リコー社長 2014年7月1日号

 ◇光学技術で新たなビジネスを起こす

 

── 複合機の事業環境と製品開発のトレンドは?

三浦 タブレット型端末やスマートフォンが普及しましたが、コピーやプリント全体の需要はそれほど大きく落ち込んでいません。とはいえ、コピーやプリントの量が今後、大きく増えることはないでしょう。また、韓国などのメーカーも複合機の分野に進出し、競合が激しくなっています。そのため、複合機そのものだけでなく、システムとしての使いやすさなどさまざまなサービスを提供し、付加価値をいかに高めていくかに力を入れています。

 複合機の差別化では、画質や信頼性などの基本性能の向上のほか、使いやすさやクラウドサービスとの連携強化、環境性能を追求しています。タブレットのような操作パネルを開発したり、以前は十数秒かかっていたスリープモード(休止状態)からの復帰時間を5秒あまりに短縮化したりもしました。消費電力の少なさでも断トツで優れています。

── 足元の販売動向は?

三浦 日本はアベノミクスによる景気回復で拡大傾向です。欧州は国ごとにまだら模様で、全体としては売り上げを落としていますが利益は増えています。米国も売り上げは横ばいですが、利益は伸びています。

 先進国は、機器の販売だけではもはや大きな拡大は望めません。一方、新興国では、機器を売るという従来型のビジネスモデルで売り上げを伸ばせる地域がまだまだあります。一方で、インドが典型ですが、機器とサービス化のニーズが同時に起きている新興国もあります。

 

 複合機を中心に、商用印刷機や産業向けの電子デバイス、光学デバイス、「ペンタックス」ブランドで知られるカメラなどを手がけるリコー。2014年3月期決算は、売上高2兆2369億円と前期比16%増。営業利益は1203億円と90%増の増収増益を達成した。今年4月に発表した中期経営計画(14年4月~17年3月)では、17年3月期に売上高2兆5000億円以上、営業利益2000億円以上を目標に掲げる。

 

── どのような事業を伸ばしていきますか。

三浦 先進国市場では、オフィス向け文書管理やITサービスの「ネットワークシステムソリューション分野」を強化していきます。リコーの複合機を使っていない顧客にもITサービスの提供を始めていますが、一度信頼を得られると徐々にリコーの製品に替わっていくという効果もあります。この分野では17年3月期、現在(3080億円)の1・3倍の4000億円超を目指します。

── ただ、これまで歩合の発想で複合機を売ってきた営業マンに、頭を切り替えてもらうのは大変では。

三浦 そうですね。「サービス化」への転換は、言うのは簡単ですが実はすごく難しい。息の長い営業が必要で、なかなか顧客を説得できないからです。日本で複合機を買ってもらうには総務の部署へ行きますが、システムならITの部署。ITの担当者に納得してもらえるような提案をするのは簡単ではありません。そこで、米国では今年2月、独立系のITサービス会社を買収しました。この会社を核に、営業の成功事例を会社全体で共有し、営業部員に考え方の切り替えを促しています。

── 新興国市場はどうですか。

三浦 現在の事業規模を2倍にしたいと考えています。南米、中近東・アフリカなどは、市場規模は小さくても大きな伸びしろがあります。一方で中国は顧客の要求が厳しく、利益を出しにくい市場です。日本人ではなく中国人を現地のトップに据えるなどマネジメントを変え、規模ではなく利益を重視した結果、現在では黒字化するようになりました。

 

 ◇「全天球」カメラ発売

 

── 新規事業への取り組みは?

三浦 産業向けの領域を伸ばしたいと考え、電子デバイス事業を今年10月1日付で別会社化します。また、光学デバイスや電装ユニットの事業でも新会社を設立します。リコーの光学技術と画像処理技術を融合させ、セキュリティー機器や自動車などに用いるセンシング(センサーを利用して周辺環境を判別すること)など、新たな分野にどんどん出て行きます。

 さらに、100億円規模の事業を三つ以上、立ち上げることも目指しています。環境に優しい街づくり「スマートシティー」もその一つになるでしょう。今年6月に神奈川県海老名市で新たな街づくりへの参画を発表し、LED街灯など安全と環境に配慮したインフラ整備を中心に新事業の創出に取り組みます。

── 一眼レフカメラは市場が大きく落ち込みました。

三浦 ペンタックスは固定ファンも多く、もともと事業規模も小さいので、それほど落ち込んではいません。新興国ではまだまだカメラの需要はあり、もっと頑張りたいと思っています。昨年秋には、まったく新しいカメラとして、一度シャッターを切るだけで「全天球イメージ」(上下や左右、前後の周囲すべて)を映すことができる「THETA」(シータ)を発売しました。テーブルの真ん中に置いて乾杯シーンを撮影したりと、面白い使い方ができますよ。究極まで小さくすれば胃カメラにもなるんじゃないかと、いろんなアイデアが浮かんでいるところです。(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 34歳までオランダに赴任し、帰国後は財務などの仕事をしていました。38歳からは再び海外。自分の信念でガンガン仕事を進めていたので、和気あいあいではなく、かなりとがっていたと思います。

Q 最近買ったもの

A 米国出張の際に薄手のセーターを買いました。自分ではほとんど買い物はせず、ゴルフクラブもほとんど替えていません。

Q 休日の過ごし方

A 母を見舞いに行ったり、たまにゴルフもしますが、結局は自宅でも仕事をしてしまいます。最近はご無沙汰ですが、趣味で能面も打っています。

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 ■人物略歴

 ◇みうら・ぜんじ

 1976年上智大学大学院経済学研究科修士課程修了、リコー入社。専務、副社長、ペンタックスリコーイメージング会長などを経て、2013年4月から現職。64歳。